FP&Aと税理士の共通点 (1/2)
私は、2015年7月~現在まで外資系企業の財務部門に属して、FP&A (Financial Planning Analyst) という職業に携わっています。一般的に日本国内市場で事業を行っている外資系企業であれば設置している職種であり、企業トップと密接に連携する重要な職種であります。
今回は、2回に分けてFP&Aと税理士を比較していきます。
まず、FP&Aの仕事を一言でいうと、数値のマジシャンです。
二言で言うならば、決裁者 (Decision maker) にとって判断材料となる数値を提供するアシスト役が近いかなと思います。
企業内で求められるFP&Aの役割をチャートで纏めました。
"実績の分析" から始まり、"未来の予測" につなげて、決裁者に "提案" し、"決断の依頼" により決断してアクションしてもらうという一連の流れになるかなと思います。
更に、私が体験したFP&Aの典型的な役割を3つに集約してみました。
FP&Aの主な仕事
・ 企業の事業毎の予算策定
もし私が外資系コスメブランド企業の財務部に勤務していて、メンズ化粧品事業のFP&Aであれば、月次売上高と原価、輸送費、粗利益、広告宣伝費、営業利益、EBITDA (≒キャッシュフロー) 等の数値をそれぞれ過去の実績や今後のトレンドを予測して、予算数値を組み立てます。
・ 企業の事業毎の損益の分析と予測
予算を策定した後に新年度が始まりますので、毎月のルーティンワークとして予算金額と集計した実績との乖離を分析します。
ある月において、今月の売上予算に対して進捗率90%だったのは、他社ブランドが化粧水をディスカウントした影響だとします。
年間予算達成に向けた改善プランとして、翌月以降販売員向けのセールスインセンティブを増加して挽回を図り、更に工場からデパートへの配送回数を3から2回に減らして輸送コストを削減して、利益確保する計画を立案します。
期首から前月までの実績と今月から年末までの数値を見直して、年間予算額を達成するための提案していきます。そして、営業部門にこの計画案を伝えて了承を取り付けたり、購買部門と連携して輸送スケジュールの見直しを検討してアクションを取ってもらうまでが役割となります。
・ 投資に対する利益効果の予測
実績と予算を追いかける作業の他、新規市場に参入する時や大規模な投資が発生する際には、その投資対効果を予測する役割も期待されます。
昨今男性用薄毛対策グッズの市場が伸びているので、この市場に新規参入すればどうなるかシュミレーションしてほしいと上司から指示を受けたとします。
育毛剤の国内市場は現在XXXX億円あり、ここでシェア5%を取れれば新たに売上100億円の獲得ができると予想します。
それから、自社工場で育毛剤を製造する場合、製造コストや販売費用等で60億円発生すると仮定すれば、年間キャッシュフローは40億円となります。また、製造する工場を建築するために、投資額300億円かかるので、40億円÷300億円で7.5年間で投資額を回収できます。
もしくは、自社製造せずに海外工場から仕入れると原価が高くつき、年間キャッシュフローは20億円になると想定します。この場合は、初期投資額が発生しないので、現金に余裕がない状況では自社工場で製造するよりもベターかと提案することもFP&Aに求められる仕事です。
次に、FP&Aにはどの様なスキル・能力が求められるか簡単に述べてみます。
FP&Aの能力
① エクセルを駆使
関数を使って集計したり、シュミレーションするスキルは必須です。
② 客観的ロジカル思考
実績データや市場トレンドの事実を冷静に分析する力、成長率やリスク要素を洗い出して数値化し組み立てていくロジカル思考が求められます。
③ 表現力
これが一番難しいとおもいますが、様々な要素を織り込んで作ったシナリオを簡潔に伝える表現力を備えていることが大切です。理想的な数値が出来上がっても、それをどういう条件設定で算出したのか、なぜシナリオの方が優れているのか、決裁者に分かりやすく伝える力が必要です。
次回は、税理士とFP&Aの共通点や相違点を中心に述べていきます。