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プリセールスの役割

 プリセールスは、技術的な側面で営業フェーズをサポートし、案件の成約に貢献することが主たる業務となります。また、プリセールスは決して営業の従属的な位置付けでは無く、営業と対等な立場で成約の為に活動をするので、リスクや見込みのない案件への工数の投下などを避けるために調整をします。つまり、チームとして最大限の成果を得るために営業と共に調整しながら活動をするのです。
 このプリセールスの活動にはその仕事の範囲によって幾つかの役割が考えられます。此処では、役割を細分化して記載していますが、実際の組織の中では複数の役割を兼務することが普通であり、適切な規模になった場合に分割するメリットが出てくると思います。組織の規模は、営業組織、プロダクトの数などによって負荷が異なるので、一概に人数だけで判断することは難しいのです。

インダストリースペシャリスト

 文字通り業種に特化したエンジニアで、業種別のソリューションを持つ場合や、特定業種に特化したプロダクトがある場合などにアサインします。そのソリューションの内容や、業界・業種の知識を持つメンバーで、業種固有の適用業務ソリューションやその業種に特化した利用方法についての提案を行います。業種別のソリューションを持たない場合でも、特定業種での利用方法や法的規制などを理解して提案することが望まれる場合は限定的に担当業種をアサインして必要な知識を集約する場合もあるでしょう。
 主な業務として、担当する業種での販売計画、パイロットプロジェクトの支援、導入事例の作成、販売支援資料の作成などがあります。また、その業種でのトップ20社くらいで導入がどのように進んでいるか、コンペの占有率やコンペ対策についてもまとめます。プリセールスとしては、自分の担当するソリューションの案件支援も行い、作成した資料へのフィードバックをして最新版への改訂を行います。

エンゲージメントマネージャー

 エンゲージメントマネージャーは営業部門に対する窓口として、プリセールスのエンジニアと営業との橋渡しをします。担当の営業部門の数字責任を負い、その達成のためのプランニングや注力すべきプロダクトや販売方法などを営業と調整して必要な営業資料なども提供します。また、キーアカウント向けのアカウントプランにも参画して案件開拓や重要な案件受注のための協力をします。プリセールス組織としては全社の売上で評価されることが多いと思いますが、エンゲージメントマネージャーは、各営業部門の数字目標にリンクし、営業の相談役としての役割を担うのです。小規模なチームの場合は、専任のチームではなく、エンジニアの中から各営業組織の「担当」を設けて数字達成のプランニングに参画する場合もあります。
 主な業務としては、営業からの案件の精査(スクリーニング)を行い、提案可能な案件か、提案に必要な情報が揃っているかを確認して、案件クローズのシナリオ策定とそれに必要なプロダクトエンジニアやデモエンジンニアをアサインします。案件規模に対して適切なコストで支援出来ているかもモニタリングして必要なら提案案件に入ってレビューします。
 通常は営業がインサイドセールスからの商談をQualifyして商談として認識した以降でのアサインとなりますが、必要な場合はQualifyした段階で商談の方向性などの相談に乗って、確実なアプローチが出来るようにアドバイスをする場合もあります。プリセールスのマネージャーが単一の営業部を見ている場合には、この役割を兼務していることが多く見られます。

プロダクトスペシャリスト

 複数のプロダクトを扱う場合など、各々のプロダクト毎に担当あるいはチ ームをアサインしてプロダクト知識を深め、新機能のキャッチアップを適切に行なって提案に織り込める様にします。またプロダクトマーケティングや製品開発のチームと連携して市場への製品の訴求の仕方、販売の為のデモキットの開発、販売目標達成のためのプラン策定に協力をする場合もあります。インダストリースペシャリストが業種の軸で提案を捉えるのに対して、プロダクトの軸で顧客の開拓や、製品の訴求を行います。新製品の場合には、営業と連携してパイロット顧客の獲得と導入の支援を行う場合もあります。多くの場合新製品の導入体制が社内、社外共にないことも多く、その場合にスキル移転のプロジェクトを設定してスムーズに市場展開できるようにサポートする場合もあります。
 プロダクトのスペシャリストとは言え、顧客のビジネスを理解してプロダクトの効果を訴求するための知識は重要で、シニアなメンバーについては、顧客のステークホルダーやシニアマネージメントに対して、価値を訴求するためのビジネスコミュニケーションのスキルも求められます。

デモエンジニア

 エンゲージメントマネージャーやプロダクトスペシャリストが提案内容を詰める中で、デモ開発の部分を効率化するためにデモの作成やデータの準備を専任で行うチームを設ける場合があります。デモの作成を効率化するためのデータ生成ツールや各種キットの開発、典型的なデモシナリオに基づいたデモ環境の整備なども行い、営業へのトレーニングも担当します。例えば、モバイル系のデモの際、モバイルアプリのモックアップを作成したり、パートナーソリューションとの接続などもデモで使えるよう整備する場合もあるでしょう。いくつかの企業では、このデモエンジニアの部分を海外(インドやベトナムなど)に共通センターとして持って、各国の対応を一括して高い生産性で提供している例もあります。

セキュリティエンジニア

 クラウドのソリューションの場合は、特にセキュリティーに関して顧客からの自社のセキュリティレベルに合わせた要望に応える為に専門性を持ったメンバーが必要になる場合が多くあります。セキュリティー関連の質問の回答の用意、FISCなどの要請に適合しているかの検証、外部監査の認定状況なども把握もして、提案時に説明可能な資料を作成します。また、日本にデータセンターがある場合には顧客のデータセンター見学の要望に応えるための同行をして解説する場合もあるでしょう。

バリューエンジニア

 呼称はさまざまだと思いますが、プリセールスの中にバリューセリングを主体として支援するメンバーを持つ場合があります。主に大手の顧客でリターンが大きく期待できる場合に活動して案件のマキシマイズを図ります。顧客に顕在化したニーズがない場合でもベンダーとしてどのような価値を提供出来るかを数週間の分析し、ビジョンデモを作成して顧客の将来像を提案します。相当な工数をかけての提案となるので、案件を営業と絞る必要があります。

 これらの役割は、多くの場合チームの中で兼務してカバーすることになると思いますし、マネージャーの裁量でアサインを決めて担当を置く場合もあると思います。組織が拡大する過程で、効率性を見ながら決めて行く形で良いと思います。

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