2024年から終了も課題山積!?一時代を築いた統合型の通信ネットワーク:ISDN
「そういえば、2000年代に入る前に使ってたいISDNってどうなったのかしら?」
はい、こんにちは!松井真也です。新シリーズ「1分でわかる!ネットワーク用語」第6回でございます。
前回は、BLE(Bluetooth Low Energy)をご紹介しましたね。スマホやパソコンに搭載される一方、ZigBeeと同様に、低消費電力、近距離通信、低速という特性を利用して、センサーとしても使われるのでした。意外でしたね!
さて、今回は、近距離通信、パーソナルエリアネットワーク(PAN)の世界から離れて、ISDN (Integrated Services Digital Network)という技術をご紹介します。
懐かしい?え、聞いたことがない?世代差ですね…w。私が10代のころ盛んにTVCMされておりました。一時代を築いたこのサービス、実は2024年1月で段階的に終了していきます。
果たしてどんなサービスだったのでしょうか?早速見てみましょう!
ISDNとは何か?
ISDN(Integrated Services Digital Network)は、音声、ファクシミリ、データ通信などをデジタル化し、一つのネットワークで統合的に取り扱う通信システムです。その名のとおり、「統合サービスデジタルネットワーク」ですね。
なるほど、一つのネットワークにして「デジタル化」すると。でも、それの何がありがたいのでしょう?
日本中に広く普及していた電話網は、もともとアナログ回線です。ただ伝送路は、デジタル方式に変更されていました。しかし、加入者と電話局の間だけ、アナログ通信だったわけです。この部分をDSU(Digital Service Unit)を加入者側に置いたり何とかデジタル化して、すべてデジタル通信にしたわけです。
デジタル化すれば、音声やデータの品質が向上します。デジタル信号はノイズに強く、信号の劣化が少ないためです。端末間で送受信される全ての信号がデジタルデータ化され、一つの回線内で効率的にデータを送受信できるので、回線の利用効率が高まります。
これで、だいたい技術的なメリットは分かりました!
ISDNの始まりから終わりへ
歴史的な背景も少しだけ紐解きましょう。
ISDNは、1972年から構想され、1988年には国際電信電話諮問委員会(CCITT、現ITU-T)によって国際的な通信規格として策定されました。
1990年代後半には、インターネットの普及期に大きな人気を博し、多くのユーザーに利用されました。ISDN♪というNTTのCMが懐かしい!
ところが、2000年代に入ると、ADSLやFTTH(家庭向け光ファイバー)サービスの登場により、徐々にその役割を終えていきました。
そしていよいよ、NTT東と西は、2024年1月で段階的にISDNを終了していきます。
なお、私は2000年代に入ったころ、電話回線からISDNを使わずADSLに乗り換えました。実際、ISDNはビジネス用途が多いのです。
ここまで読んで、役割を終えたならそれでいいのでは?と思うかもしれません。が、そうは問屋が卸さなかった!インフラは急に置き換わらないのです…。
2024年問題!?ISDNに伴う困難とは
2024年1月の終了が決定している「INSネット」は、NTTが長年提供してきたISDN回線サービスです。これが終了していきます。
終わらせる理由は何でしょうか?
一つは老朽化です。交換機などISDNに使用されている設備の老朽化により、機能の維持が困難になりました。
加えて、利用者の減少です。光回線などISDNよりも高速で安いサービスの登場したことが原因でしょう。
このような背景があり、NTT東西は既存の設備をIP網へ切り替える作業を進めており、ISDNサービスは終了していきます。
これの何が問題でしょうか?
ビジネスのインフラの一部だった!
実は、ISDNは企業間取引に使われるEDI(Electronic Data Interchange、電子データ交換)に利用されていることが多かったのです。
EDIは、企業間で注文書、請求書などの商取引関連文書を電子形式でやり取りするシステムです。EDIには安定した通信が求められ、多くの企業がこれを確保するためにISDN回線を利用してきました。ISDNは安定した通信速度と信頼性の高さから、EDIにおけるデータ転送の基盤として広く使われてきました。
しかし、ISDNサービスの終了に伴い、これらの企業は新しい通信手段への移行を余儀なくされています。
この移行には、新しいハードウェアやソフトウェアの導入、システムの再構築とテスト、取引先との調整、そして何よりコストと時間が必要です。
撤退戦は大いに困難を伴うのですね…。
はい、本日はここまで!本日は、懐かしの通信サービスISDNについてご紹介しました。現代では新たに加入することはないとはいえ、現代でもインフラの一部となっている一時代を築いた技術を知っておいて損はないでしょう。
次回は、ISDNから置き換わった技術の一つADSLについてお話ししましょう!
では!