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くじゅうの霧氷が見えてきた

 高千穂での日の出撮影からの帰り、とりあえずくじゅうへ向かってみようと田舎道を北上していった。交通量はとても少なく、畑と雑木林が続く気持ちのいいドライブコースだ。この道の途中に「阿蘇望橋」という屋根付きの珍しい橋があり、手前に広い駐車スペースがあるので時々休憩している。田舎の道に突然現れる木造の橋で、かつて阿蘇の「マディソン郡の橋」なんて呼ばれていた事もあったようだ。今はもうマディソン郡の橋自体知らない方が多いだろうけれど、周囲を歩きながら不思議な屋根付き橋を眺めてただボーっとしながらの休憩はとてもいい時間だ。阿蘇山もちょこっと見えている。

阿蘇望橋

 さらにこの道をしばらく走ると、くじゅう連山が見えてくる。先日の寒波で頂上付近がやや白くなっているけれど、もう雪山の雰囲気ではなさそうだ。
 ということでくじゅう白丹の仲間のところでゆっくりしようと思っていたのだが、山々が近づくにつれ白が目立ち始めた。まだまだ雪山なのだ。特に日陰になっているところは真っ白で霧氷に覆われている。天気もいいし、登ってみようかなあと迷い始めた。

くじゅう白丹から望むくじゅう連山

 今日は高千穂の朝日を撮影できたし、あとはのんびりモードでぐうたら過ごそうと決めていたのだけれど、目の前に青空に映えるくじゅうの霧氷が見えてきたものだから気持ちは高ぶり、これはもう撮影しないわけにはいかないではないか。カレンダー撮影という面でも雪山は貴重な候補写真になるので、これは絶好の仕事日和ということにもなる。ぐうたらの決心は一気に揺らぐのだった。ここらへんがあいまいなところで、この状態の僕は単に写真好きのプライベートな気持ちで喜んでいるのか、それとも絶好の仕事日和ということで高ぶっているのか、西鉄カレンダーの仕事を始めてからはその境目がほとんど分からなくなってきた。これはいいことなのかどうか、それさえも分からなくなっているけれど、もうそんなの分からなくていいかなと。シャッターを押す喜びに変わりはないのだから。 
 ということで、くじゅう牧ノ戸峠登山口へ。先日タイヤをスタッドレスに替えたばかりでさっそく役に立った。標高1500mの牧ノ戸付近の道は真っ白で駐車場もところどころ凍っている。車を停めてスライドドアを開け、久しぶりのアイゼンをつけ、モンベルの手袋をしてカイロを冬用ダウンジャケットのポケットに入れ、念のため電熱ジャケットも下に着て準備完了。先ほどまでの高千穂の早朝撮影でそれなりの防寒対策はしていたので準備は結構早い。 
 時刻は11時過ぎだったので、ここから2時間近くかかる久住山までは行かず、その手前の星生埼あたりまで行ければという感じだろうか。牧ノ戸峠売店のミキちゃんからおにぎりといきなり団子をいただいて出発。 

 そして4時間ほどかけて霧氷のくじゅうをめぐってきた。

星生山斜面あたりの霧氷が特にきれい


扇が鼻分岐手前は日陰になるので雪はそのまま


西千里ヶ浜から久住山が目の前に現れる

 西千里ヶ浜を過ぎると星生埼があり、そこで久住山をじっくり眺めていた。僕はかつて5年ほど坊がつるの山小屋に勤めていた時期があり、その時は犬の散歩でよくここを訪れていた。撮影に毎回お供をお願いしていたアシスタント犬のポリ君だ。この周辺はポリ君と駆け回っていた思い出の場所でもある。ここで雪の久住山を見るのは24年ぶり。冬山で寒いときはポリ君のお腹で温めてもらっていた。となりにポリ君がいないのがちょっと寂しい。

アシスタント犬であったポリ君 2001年くらいかな

くじゅうはいろんな思い出が交錯する場所。まだまだアマチュアで先の見えない20代後半だった僕は、とりあえず写真だけは撮り続けていた。そして50代になった今も撮り続けている。当時とはかなり違った立場での撮影ではあるけれど、そう思うとなんだか不思議な感覚になる。懐かしいのでもないし、見えない力に感謝というかなんというか。

この溶け始めのコントラストがとても好きだ
帰りに見た雪形が印象的。久住山の頂がちょこっと見える

 夕方4時前に牧ノ戸峠に戻ってきた。
 くじゅうの霧氷が見えてきたから突然決めた今回の冬山登山。とてもいい撮影だった、撮影後に抱くこの快感はあの頃と変わらない。その感覚を忘れないようにとくじゅうの山々は教えてくれてるようにも感じている。
 気温は0度くらいだったと思うけれど、登っているとかなり暑くなって結局シャツ2枚で登山していた。ダウンジャケットとフリース、そして電熱ジャケットが大きな荷物! もちろん帰りは寒かったので再び着たけれど、冬山の服装ってやっぱり難しいなあ。天気良かったのがなにより。

                                                          撮影 FUJIFILM X-T5  XF16-80

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