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九州雲海撮影の旅 Vol.1

 福岡をお昼の2時半に出発し、霧島方面へと向かった。
今月は雲海とススキの風景を撮るために九州を巡っている。カレンダー撮影のお仕事なので、晴れて明るい写真が好ましい。自分の作品撮影なら曇ったり雨でも風の日でもいいんだけど(むしろそのほうが良かったりも)、カレンダーの仕事となると僕だってやっぱり明るい写真のほうがいい。その月の写真が雨だと心もちょっと湿りがちになり、あんまりいいことないかもな今月は、なんてこと思うかもしれない。ということでカレンダー撮影の時は撮る僕も、そして見てくれる人も気分が上向くような写真を目指している。

2024年10月 西鉄カレンダーは久住高原の朝

 雲海はやはり出会った時の感動は大きい。撮影場所に着いて眼下に雲が広がっていたらそりゃ気分は上がる。上がりすぎて手があたふたして三脚になかなかカメラを取り付けられないなんてこともしばしば。「すごいなあ」と何度もつぶやく。シンプルな言葉だけど他になかなか出てこない。ただこれは狙って撮れるというものでもないので運次第。これまで何度も行って出なかった事も多い。すると当然気分はとても下がる。気分の激しい上下作用がこの瞬間に決まるので到着時はかなり緊張する。ただ天気予報ではこの先一週間ほど天気が良く、朝はそれなりに冷え込むという予報だったので、これは絶好の機会だと出かけることにしたのだ。

道中もなかなか見応えが

 撮影場所はいくつか候補がある。鹿児島県湧水町にある魚野テイクオフ場から望む霧島連山とえびの市の雲海、もしくは道の駅霧島付近から雲海の向こうに望む桜島という雄大な風景などなど、いくつか行きたいけれど、いつものように朝起きた気分で決める。どちらも鹿児島県になる。この仕事は九州各県のうち半分の県を毎月巡るというノルマがあるので、とりあえず鹿児島県から、そして次の日はできるなら宮崎県からの雲海を撮れればとても効率がいい。
 この付近には定宿にしているロッジがある。
「森のやかた 湯ったり館」という湧水町にある温泉館で、ロッジには小さい湯船だけれど温泉も付いている。

鹿児島県湧水町ではここを定宿にしている

 もちろん車中泊ということもあるけれど、ちゃんと撮影経費として請求できるので、ありがたく宿泊させていただいている。車は車中泊仕様にはしているけれど、やはり体の負担は年々増してくる。できるだけ長くこの仕事を続けられるように、50歳を過ぎてからは無理はしないように心がけている。根性が足りないなんて言われようとどうしようと知ったこっちゃない。高速道路なんて使うな、下道で行ってこそ苦労が1枚に染み出るのだ、なんて人もかつていたけれどアホかいなと無視するが一番。
 夕方6時半頃に宿に到着すると、「あー久しぶりですねー」と女将さんが笑顔で迎えてくれた。何度も宿泊しているうちに軽くお話するようになったのだ。戻ってきたなあとうれしくなってくる。この仕事では定宿の確保も大切なのだ。
 今回は2泊予定。ここからは鹿児島県のテイクオフ場までは車で10分ほど。「道の駅霧島」までは40分ほどかかるけれど、どちらも早起きして行ける距離。宮崎県へもすぐ行ける。温泉に浸かってゆったり過ごし、早めに寝て4時半起床。
 夜明け前の空は満天の星空。えびの方面を見ると白く霞んでいる。えびの市に雲海が発生しているようなので、すぐ近くのテイクオフ場へと向かった。
到着すると東の空が明るみ始めていた。その上に飛行機雲

霧島連山のシルエット

 雲海は一面ではないものの出現している。すでに3人ほどが来ている。ここはこの季節になると大勢やってくる場所なので、正直いうとあんまり好きな場所というわけではないけれど、霧島連山が見渡せる風景はとても魅力的なのでどうしても外せない。
カメラはFUJIFILM  GFX50sⅡとX-T5の2台。レンズはGF35-70  GF100-200  XF16-80の3本。
 夜明け前の空のグラデーションはやはりGFXでの撮影となる。X-T5もすごく綺麗に写るけれど、Velvia設定で撮影する際の暗部から明るくなる部分の滑らかさはやはりGFXにはかなわない。暗部のノイズも2台使っていると違いがよく分かる。
 ひとまず到着して3分後ほどの風景を撮影。これが最も心があたふたしている最中。ブレは禁物とはいえ、この最中にブレていると何だか気分をリアルに表しているようで自分としては何だか好ましい。いつかこのあたふたブレ写真だけを集めてみたい、なんて思っている余裕はなく、しっかりブレずに仕事優先!
 夜明け前は薄い紫色の雲海が広がる。次第に朝焼けと共にピンク色を帯び、山々にも光が届き始める。

えびの市方面


山々に光が届き始める

 太陽が顔を出し始めると黄金色に輝き始め、木々を通過する太陽光は光芒となって高原に降り注ぐ。これがこの場所の大きな特徴でとても見応えがある。

雲海も輝き始める
光が山々を通り過ぎてゆく


 シャッターチャンスが絶えず続くので、シャッターを押すときにブレを気にして息を止めていると窒息しそうになる。なので我に返って深呼吸することもこういった場面では大切なこと。芝生広場の前の方へと向かった。前の方にはススキがあるのでこれを風景にからめることもできそう。太陽が高くなると雲海は次第に散らばってゆき、全体はモノトーン調となる。この時間になるとほとんどの人が帰って行くけれど、僕はこの時間もとても好きだ。撮影できた満足感もあり、とてもゆったりした気持ちで眺めることができる時間。

次第にモノトーンに

 なのでこの日は2時間ほどこの場所にいた。これだけ撮影してもカレンダーに採用されるのは1枚なので、あとは自分の作品としてこういったブログで発表したり、いずれ写真集に採用できればと思っている。もちろんその日一番の撮影画像は提出画像となるので、こちらで発表できないというちょっともどかしさはあるけれど、それでもそれ以外の写真にこそ僕らしさがあるのかもしれない。
それはモチベーションを保つためにとても大切なことだろうと思っている。

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