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垂水文弥「The bird crossed the twilight moon」 角川俳句賞2024

The bird crossed twilight moon ゆふぐれの手毬にひとびとに唄が 神見えてゐるなる父の寒さかな 狸らがこまかく見えて雨の中 機械に思想水仙に雪がふる ずつとゐるまんさくに貧相な犬 寄居虫は夜のさびしさを昼も負ふ 電柱へ死者が歩いてゆきやなぎ 中年や流れつきたる蝌蚪の国 春はきさらぎ鳩もつどへば話し込み あちらから見えてこちらの椿かな 月に水ありてふてふに死が近い 雛飾る日本に軍人の時代 目まぐるしい昼だ蜂来て鳥が食ふ あはうみの色の衣よ春の鹿 巫

    • 垂水文弥「Dear my planet」 角川俳句賞2020

      Dear my planet 久女忌の橋は飛び立ちたいのです 彗星の色の特急なれば凍つ 潮騒の染みついてゐる父の布団 春浅しチキンカレーの山吹色 多喜二忌の雪が市街を沈めてゆく 千客万来石鹸玉石鹸玉 客なくて客間もなくてヒヤシンス 風光るホルンの管の大彎曲 大試験美食のごとく紙置かれ 花影に入る遷化とはこんなもの 落第を姉に知られぬやうにする 野遊の子は太陽を父として 月光や溺るるごとく蝶まぐはふ ふかぶかと蜂を宿して伯父の花 その中にせせらぎを