子供の頃

子どもの頃は、よく空を見上げていた気がする。

時間に追われることがなかったからか、何か自分のしたいことに我儘になって疲れたら、ぼうっと窓の向こうに視線を向けていた。

青色を見ていたのは、まだ幼稚園に行く前の何も知らない自分。

茜がかった空を見ているのは、夏祭りに行く前の自分。

日差しがちょっと鬱陶しい空の青さは、下校時の高校時代。

大人になった今、あまり空を見上げなくなった気がする。
目の前の課題、やらなきゃいけないことを常に見つめていて、視線は空を向けていながら、本当に見ているのは自分の世界だけ。

もっと昔のような時間が欲しいな、とふと思う。電車の時間に間に合おうと、次のホームにせかせか乗り換えようとする早足から、「なんとなく今日はいいや」と一度踏切り、ゆっくり歩いてみる。
時計の針がゆっくりになる音がする。

その音をきくと、忙しさって、実際の仕事量というよりは、その時の心の持ちようなんだと言うことに気付く。

ゆっくり歩いてみると、いかに時の流れが静かであるかを知る。

周りのスピードと反比例して、自分だけ止まったみたいで、なんだか不思議な気持ちだ。

たまには、こう言う日があってもいいんだと思う。

自分の世界だけに生きてると、憂鬱なことはたくさんあるし、やらなければいけないことはきっと一生無くならない。

だから、常に急がなければいけない、というわけではなくて、意外と時間はあるから落ち着いてゆっくり進もう。

そんな時に見上げる空は、振り返った時に心の支えになるだろう。

改札から出ると、先ほど降った雨がコンクリートの匂いを蒸し返す。

今日はどんな1日になるだろうと空を見上げ、ゆっくりとバスに乗った。

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