君ヲ見ルモノ15


 飛来物は、地面に仰向けで倒れる男性傭兵の近くに有る機動隊ロボへ狙いを定めた猛禽類の様にに急降下行く。そして、機動隊ロボの胴体を頂点から押し潰し脚と胴体を繋げる関節を切り離した。
 急降下して来たのは、エッセキュヴァイスである。最大出力で駆け付けたが、結局間に合わず凶弾に倒れた被害者が運動場の所々に生命反応を失い倒れていた。

 其の場に有る機動隊ロボ二機が、突然現れたエッセキュヴァイスを敵対目標と認識する。各々が胴体の頂上に備え付けられた機関銃を攻撃目標に向けるよりも早くエッセキュヴァイスは踏み潰した機動隊ロボの部品を踏み躙り動いていた。
 エッセキュヴァイスは、二機目に向かって飛び掛かると、頭上を擦れ違い様に爪先で掬い取る様に蹴り上げ胴体を二つに引き千切る。そして、飛び越えて着地すると透かさず右拳を翳して三機目に向かって行った。三機目が、エッセキュヴァイスに向かって機関銃の弾を発射する。たが、エッセキュヴァイスは避ける事をせず敢えて弾丸に向かって行くのであった。しかし、エッセキュヴァイスの装甲は弾丸を弾き飛ばして勢いは衰える事が無い。そして、攻撃対象に目前に迫ると振り翳したエネルギーを纏い白熱する拳を三機目に突き付けるのであった。拳は、三機目に触れると衝撃により堰が崩壊したかの様に強烈なエネルギーが衝撃波を伴い破裂する。其の威力は、運動場の地表を軽く削り取り塵として舞い上がらせ機動隊ロボの装甲を破り部品を撒き散らしながら吹き飛ばした。ボロボロになった三機目は、地面を弾む毎に脚を其の場に残していく。そして、最後は宙で爆散して未だに胴体にくっ付いていた脚と精密部品等を撒き散らすのであった。

「よぉ、キュキュ」仰向けの男性傭兵は、力を振り絞り頭を持ち上げる。「……の旦那、そんなに…強いなら、早く…駆け付けてくれりゃあ、……こんな事に、……成らなかったのによぉ」一度口を噤んだが息も絶え絶えの状態で付け加えた。
「済まない。此れデモ、四百二十七キロメートルの地点カラ急いで駆け付けて来たノダ」エッセキュヴァイスは、男性傭兵の文句に片言を混ぜて淡々と答えるのであった。
「まっ、…マジ…かよ」男性傭兵は、エッセキュヴァイスの言葉を聞いて頭を下ろして疑う様子で驚愕するのであった。「しかし、他の…奴はやられてしまった…し、俺自身も…助かり…そうじゃねぇ」空を仰ぎ見ながら残念そうに言うのであった。
「済まない。私ニハ、危機的ナ人命ヲ助ける様ナ機能ハ搭載されてイナイレ」エッセキュヴァイスは、申し訳なさそうに男性傭兵の言葉に答えるのであった。
「仕方…ねぇ。俺達は、もう…終わりだ。……アンタから…託されたガキは、…他のガキを連れて…逃げた。上手く……逃げて…いれば良いが」男性傭兵は、空を仰ぎ見たままユルヅのその後を伝えて来るのであった。

 男性傭兵が言う様に、付近を移動する生命反応が存在している。しかし、其の生命反応はもう一つしか存在していなかった。其れが、ユルヅなのかユルヅが連れ出した子供なのかわからない。だが、何かから逃げているのは分かった。

「どう…やら、長く…喋り過ぎた。眠たく…成って来やがった」男性傭兵は、そう言うとこ此れ以上喋らなくなる。其れと同時に、生命反応が消滅するのであった。

     ※              ※

 エッセキュヴァイスは、運動場から別行動していた生命反応が進んでいた経路を地上から辿る。それは、生命反応が誰なのかを確認する為であった。障害物が転がり狭くなった脇道を、水面を跳ねる水切り石の様に跳ねて進む。そして、別の大通りに出た。此処等が、生命反応一つが消滅した地点である。そして、未だに複数の機動隊ロボが辺りを彷徨っていた。

 エッセキュヴァイスは、アスファルトの上に倒れる有機物を検知する。近寄ろうとすると、敵性目標に迫る機動隊員が邪魔する様に迫って来るのであった。
 機動隊ロボは、先程よりも明らかにエッセキュヴァイスに対して敵意みたいな物を持っている。もしかすると、お互いに通信共有する機能が有りそうだ。路上の有機物を確認するには、先ず此のロボット達を片付ける必要が有る。此の惑星の技術で作られたロボット程度なら脅威にならないが、此の闘いに有機物を巻き込む訳には行かなかった。

機動隊ロボ達は、サイレンアンプからの警告音を鳴らして狙いを定めて機関銃から残された弾丸を打ち込む。しかし、エッセキュヴァイスは、機関銃の撃鉄が薬莢の雷管を叩く前に宙に浮き上がるので弾丸は、虚を通り過ぎた。
 宙に浮き上がったエッセキュヴァイスは、頭から降下して行き機動隊ロボに向かって行く。そして、接近してロボの胴体を抱き抱えるのであった。すると、このまま建造物の屋上の高さ迄上昇する。その後、力任せに抱き抱えた機動隊ロボを適当な方角に放り投げるのであった。次に別の機動隊ロボに向かって急降下して行く。そして、途中で肘を曲げた右腕の指を伸ばした手を振り被った。すると、エッセキュヴァイスの指を伸ばした右手からエネルギーの刃が伸びると其の機動隊ロボの胴体の頂点に有る機関銃を備えた砲塔に叩き付けた。エネルギーの刃で胴体を斬り、手刀で切り口を押し広げる。そして、両断された機動隊ロボはエッセキュヴァイスを巻き込んで爆発するのであった。
 最後の機動隊ロボが迫って来る。其の経路だと有機物を乗り越えて迫って来てしまうのだ。エッセキュヴァイスは、両手を突き出し迫って来る機動隊ロボへ弾丸の様に飛び掛かる。胴体に掴み掛かると、押し返すが直ぐにアスファルトに機動隊ロボを押し倒し胴体を押し付ける形になった。そして、そのまま機動隊ロボの胴体をアスファルトの表面に擦り付けながら飛行する。機動隊ロボは、胴体をアスファルトに擦られ花火を撒き散らしながら砲塔や地表に接する脚部が捥ぎ取れて行った。すると、機動隊ロボの胴体とアスファルトの接触部分から黒い煙が上がり始める。エッセキュヴァイスは機動隊ロボから手を離し宙に昇って行くと、機動隊ロボは炎に包まれ突然火柱を立て爆発するのであった。

 エッセキュヴァイスは、アスファルト上に横たわる有機物の傍に降り立つ。そして、直様其れを念入りにソナーによりスキャンするのであった。その結果、横たわる有機物はユルヅではない事が判明する。此れは、ボスに暴言を吐いてお仕置きを受けていたクソガキと呼ばれた子供であった。

 では、今移動している生命反応はユルヅの可能性が高い。しかし、其の動きは不可解で何かに誘導されているか逃げている様に移動していた。其の動きはあれに似ている。それは、初めて此の惑星で出会い悪魔の存在を示唆して亡くなった男性の動きに類似していた。




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