君ヲ見ルモノ13
エッセキュヴァイスは、飛行速度を殆ど抑えて飛行している。最大出力で飛んでしまうと、レーダーやセンサー類の結果が処理反映される前に通り過ぎててしまう可能性があるからだ。
エッセキュヴァイスは、上空からレーダーやセンサー類を使い廃墟と瓦礫だらけの地上を調べて行く。しかし、生命反応は一切確認されなかった。此処等一帯にも生命反応は確認されないので、データと照合して次に近い都市に向かう事にする。少しだけ加速すると、軌道上に浮かぶ雲に向かって飛んで行くのであった。
※ ※
戦車は、上にボスと数人の男性傭兵を上に乗せながら現在
荒廃した市街地の本通りを進む。そして、広い運動場が特徴の公園に差し掛かった。
公園の運動場には、横転して焼き尽くされた小型トラックや車体がボコボコに叩かれて凹んだ上エンジンルームの蓋が開いた普通車に、そのまま放置されたテントと焼けた地面を囲む様に置かれた逆様のビール瓶ケース等が放置されている。戦前は賑やかであったであろう場所は、閑散として廃退的な光景がが広がっていた。
ボスは、エンジン音を響かせて移動する戦車の砲塔に直接腰を下ろし肩に銃火器を立て掛けながら、男性傭兵達と共に辺りを警戒する。辺りを見回し、状況を確認するのであった。「方向転換して、運動場に入るよ!」ボスは、砲塔の開け放たれたままのハッチの奥に向かって叫ぶのであった。
戦車は、更にエンジン音を唸らせて方向転換する。そして、本通りと運動場の境目に有る溝と枯れ果てた生垣を乗り越えて中に侵入するのであった。キャタピラで地面を抉り取りながら運動場の中をある程度進む。そして、障害物が少ない運動場の中心よりも大通り寄りの位置に停止するのであった。
戦車の上に乗っているボスと男性傭兵達は、各々が直ぐに降りると両手に銃器を携え改めて辺りを警戒する。すると、戦車のハッチから先ず比較的若い大人が出て来ると、次はユルヅを含む子供達が出て、其の次に高齢者が大人に引き上げられて砲塔の上に、出て来るのであった。
「よぅし、皆っ!」ボスは、周囲に居る者達に聞こえる様に声を張り上げる。「此処等で、一旦休憩にするよ‼︎」其の場から目に見える範囲の者一人一人に目を配りながら伝えるのであった。
高齢者は砲塔に直接腰を下ろしたり、大人は屈伸運動で関節を解しては、子供達はボスの休憩の号令と共に運動場で追い駆けっこを始める。そして、ボスと傭兵達は少し離れた所で集まっていた。
「私達三人は、此れから燃料と食料と水を探して来るわ」ボスは両側にリュックサックと携行タンクを持った男性傭兵を置き、向かい合う二人の男性傭兵に言う。「お前二人は、此処で皆と戦車を守っておくんだよ」と、付け加えた。
「了解しました。ボス気を付けて」この場に残る事に成った二人の傭兵の内一人が返事をするのであった。
「それじゃ、行って来るよ」ボスは、そう言うと肩を揺り改めてリュックサックと銃火器に備え付けられた肩紐を担ぎ直すと踵を返し進み出す。其れに続き、二人の男性傭兵二人も続くのであった。
ボスを含む三人は、建造物の間を通る裏道に放置されている中型トラックの側に来ている。ボスは、腰を屈めて手に持っていた携行タンクを足元に置くと、中型トラックの側面に備え付けられたタンクの底ら辺を手の甲で軽く叩いた。叩かれたタンクは、ゴッゴッと鈍い音を鳴り響かせる。中には、まだ燃料が残っている様だ。
ボスは、傍に置いた携行タンクの蓋を開けて蓋を地面に置く。次に、右手で腰に備え付けたナイフシースに刃を納めたナイフの柄を握ると固定するホルダーに構わず引き抜いた。そして、ナイフを持ち直すと更に強く握る。タンクの側面でも底に近い所に狙いを定めて突きつけた。
ナイフは、タンクを貫くと漏れ出る液体は穴から滲み出て地面に落ちて湿らせる。ボスがナイフを引き抜くと、穴から琥珀色の液体が弧を描き吹き出すのであった。
ボスは、直ぐにナイフを手放し携行タンクを持ち上げると燃料が描く弧に開けられた携行タンクの口を割り込ませる。こうして、トラックのタンクに開けられた穴から吹き出る燃料は、携行タンクに納められるのであった。暫くして、タンクから吹き出る弧の勢いは衰えて行き、滴り落ちるだけに成る。滴る粒であっても、携行タンク内に納められた。そして、携行タンクは地面に置かれた蓋の傍に置かれる。ボスは、蓋を手に取ると携行タンクの口を塞ぎ捻って行くのであった。
ボスは携行タンクの蓋を閉め終わると、手放したナイフを持ち上げナイフシースに刃を納めた後携行タンクを持ち上げ軽く振る。燃料は、携行タンクの内側を軽く叩き、タプタプと打ち鳴らすのであった。「此れだけ有れば、十分だね」ボスは、満足そうな様で言う。「よし、二人共帰るよ」そして、お供の男性傭兵に振り向き指示をするのであった。
※ ※
ボスと二人の男性傭兵は、崩れた建造物の破片や焼き尽くされた車等が点在している大通りを進んで行く。まだ大分距離は有るが、先には先程の公園が有るのだ。
すると、何処からか途切れ途切れのサンドノイズと金属同士が擦れ合う音が響いて来る。すると、ボスと男性傭兵二人は各々が持つ物資を詰めたリュックサックや携行タンクを其の場に構わずに手放し自分が持つ銃火器を持ち上げるとお互いに背を向け合いながら辺りを警戒するのであった。
物陰からノイズを鳴らし潤滑油切れの関節を擦らせながらボス達の前に姿を現したのは、頭部に機関銃を搭載した砲塔を載せた縦長の円柱を車輪を内蔵した四脚で支えているロボット達で有る。其の機体は、表面に水垢の様な縦の染みと所々に傷により塗装が剥がれ下地が見えていたりと見窄らしい物であった。
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