君ヲ見ルモノ14
「なんだ、機動隊ロボかよ」男性傭兵は、つい緊張が解れ安堵の息を吐くのであった。
機動隊ロボとは、此の地域の治安と安全を維持する為のロボットである。仮想敵は、反社会組織から他地域の侵略者や未知の存在迄と多岐に渡った。治安と安全を守る為の重要なロボットで有る。他地域から無断で侵略した者にとっては脅威であった。しかし、其れは以前の事で、定期的な整備がされていない現在は間合いを取りながらけたたましい警告音と機関銃を鳴らす機械に成り果ている。そして、電気を溜めたバッテリーと予備として使える精密部品を持つカモでもあった。
「丁度良い。バッテリーや精密部品は幾ら有っても困らないからねぇ」ボスは、そう言うと汚れた機動隊ロボに銃火器の先を向けた。
機動隊ロボは、数と機関銃が脅威である。しかし、全く整備されていない現在は人間でも十分に対処出来る程大した脅威には成らなかった。
「ボス、無駄弾には気を付けてくだいよ?銃の弾丸も貴重ですが、ロボの動力原に当たってしまったら全てパァになります」二人の男性傭兵の内の片方がボスに念を押すのであった。
「分かっているよ」ボスは、機動隊ロボに狙いを定めてながら男性傭兵の言葉に煩しそうな様子で返事すると、手に持った銃火器の引き金に指を掛けるのであった。
一般人から見て、薄汚れたロボットが途切れ途切れの雑音を鳴らし迫って来るのには異様さと威圧感を受けるだろう。しかし、常に最適な状態の武器を扱う者にとって薄汚れて整備されていない物は十分に軽蔑の対処に成り得た。
バンッ‼︎バンッ‼︎辺りに火薬が破裂する音が鳴り響いた。ボスの銃火器が弾丸を発射したのではない。機動隊ロボに備え付けられた機関銃が、弾丸を発射したのだ。
「うぅ…かっ」ボスは言い掛けた言葉を最後迄言う事無く二人の男性傭兵の前で両膝を地面に突く。そして、そのまま俯せに倒れるのであった。
目の前の機動隊ロボの機関銃には、未だに弾丸が残っていたのである。整備されていない機動隊ロボの機関銃が弾切れを起こしているとは限らなかったのだ。
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エッセキュヴァイスは、上空を蛇行して念入りと言える程生存者を探している。しかし、どれだけ時間を掛け広範囲を調べても生存者を確認する事が出来なかった。
すると、エッセキュヴァイスは先程迄確認出来た生命反応一つの消滅を確認する。そして、立て続けに消滅した生命反応の側に存在していた二つの生命反応も消滅するのであった。
其れらの生命反応は、ユルヅを託した傭兵達の物である。おそらく、何かが有った様だ。其れに、生命反応とは別にロボットの反応も複数機確認している。見つからない生存者よりも確認出来る生存者を守る事が第一だ。
此処から目的地迄は、この惑星の言葉で表すなら約四百キロメートル離れている。だが、エッセキュヴァイスが最大出力で向かえば、短時間で向かえる事が可能だ。エッセキュヴァイスは、そのまま縦に旋回して方向転換する。そして、目的地の方角に向かって行くのであった。
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運動場にて待機していた男性傭兵の内の一人が、迫って来た機動隊ロボの機関銃から放たれた凶弾に撃たれてその場に仰向けに倒れる。他の者も、とっくに凶弾に撃たれて地に伏せていた。
残っている男性傭兵は、「ヒィッ⁉︎」と、蒼ざめた表情で短く悲鳴を上げると戦車を駆け上がり砲塔に有るハッチに飛び込む。暫くして、戦車のエンジンか轟音を響かせて急発進するのであった。しかし、暫くして蛇行運転をし始める。荒ぶる戦車は、側面で焼け焦げた車を押し除けて急カーブを描くと正面で機動隊ロボ一機を突き飛ばした。そして、そのまま枯れた生垣と溝を乗り越えて大通りに出て横切ると正面の建造物に衝突する。暫くすると、建造物の戦車から上の一部が崩落して押し潰すのであった。
運動場の上空に、甲高い風切り音を鳴らしながら輝く火球が飛来する。風切り音が止むと、上空から宇宙からの飛来物よりも速いと思える何が急降下して来た。