プロローグ


           時は、まだ神が人の世の理の中にあったころ

 その日その時。見渡す限りの平原で男は炎に囲まれていた。目を覆い隠す程の喪失の狂気、己のすべてを否定された惨劇。それから逃れるためには、何も感じぬ死へと至るほかないと、そう感じていた。

「俺の全てが、今終わる。」

 そうしてその場から動かず。炎に身をゆだねようとした。だが、その程度でこの男の運命が閉ざされる事は無かった。火の鎮まった焼け野原で、男は絶望に包まれ、嘆き、慟哭した。

 そして男に残ったのは、消えることのない悪夢と、この世を燃やし尽くさんとする復讐のみだった。

 その男の名はフォルレジス。これはその暗き鎧を身に纏い、巨大な剣を背負った騎士のお話。


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