これは未来を予言したポンコツ映画
お雑煮の出汁はもちろんカシミール
『不適切にもほどがある』が放送開始されたとき、周りの友達とは、「これって、あれに似てるよね」みたいな話をしました。
一番多かったのが『バックトゥザフューチャー』でしたが、僕は思い出した映画が2本ありました。友達の何人かも、それそれみたいなノリで同調してくれたところもありました。
一つが『タイムトラベラー きのうから来た恋人』。https://filmarks.com/movies/26350
この数年前に公開された『原始のマン』の流れを組むタイムトラベル・コメディです。
冷戦の恐怖から地下に35年(フォールアウト期間?)暮らせる核シェルターを作った発明家夫婦。近所で起きた飛行機事故を核戦争開始と勘違いして核シェルターに籠ってしまいます。
35年間、シェルターで生まれた男の子を1950年代風の好青年に育てて、ついに地上へ戻る時が来ます。まず父親が地上の状況をチェックに行くと、昔は住宅地だったところが、結構なダウンタウンになっていて、ドラッグクィーンみたいな娼婦と出会ったりして、すぐにシェルターに戻り「ダメだ、核戦争の影響で男女が交差したミュータントが地上に!」となります。
それでも地上に出て「空」というものを見てみたいという30歳過ぎの青年は地上へ。そこでジェネレーション・ギャップを味わいながら恋をするというコメディです。タイムマシーンで行ったり来たりではないですが、やはり小ネタ含めて笑えます。アイテムとして秀逸だったのは父親が大事にしていた野球カード。これが35年以上の月日を経てとんでもない価値に。これはいまでも使えるネタですね。
そしてもうひとつ。
『本格未来進化映画 26世紀青年(せいねんではなくバカたちと読む) 』https://filmarks.com/movies/45774
21世紀初め、米軍は兵士の冷凍睡眠実験を開始。軍関係でもっとも平凡な男を冷凍化します。その実験開始後、いろいろあって実験は無かったことに。冷凍化された男のカプセルもいろいろあって燃えないゴミの処理場へ放置されます。
それから500年以上、膨大なゴミの山が崩壊し、例の冷凍カプセルが開封されます。そして目覚めた彼が見た世界は……
あまりにバカでチープで下品でくだらない映画でした。作ったのは、『MTV/ビーバス&バットヘッド』や『キング・オブ・ザ・ヒル』のマイク・ジャッジ。この手のものはお得意です。
500年の間、エリートたち同士が結婚するパワーカップルは自分たちの自由で楽しい生活を邪魔する子供を欲しがりません。一方、貧しい人たちは(この映画ではかなりがラテン系移民とホワイト・トラッシュ)、子供を作ります。時の政府が少子化問題解決法ととして分厚い子供手当を出すもんですから、1人より2人、2人より3人と産みます。その方が得だからですね(例えば1人だと月5万、2人目には+10万、3人目以降も月10万ずつ もう働かなくていい)。しかもそういう層の男女は、夫婦や恋人意外ともうっかり子供を作ります。おかげで人口は維持されます。
その結果どうなるか? 世界はバカで満たされます。全人類全部バカです。どのくらいバカか? まず、水は飲みません。全部アクエリアスみたいなドリンクです。食事もスナック菓子みたいなものばかり。人気のテレビ番組はWWEのRAWやスマックダウンみたいなものばかり。大ヒット映画はストーリーは無く、お尻やおならの連発するものです。やがて当時の政権が、畑にまく水もアクエリアスに変えてしまいます。その方が育つと思ったんですね。しかし、トウモロコシとか小麦が不作となります。そんな折に、500年の冬眠から平凡な男が目覚めます。
男は生誕時のチェック漏れと思われ全国民が受診する知能テストを受け、結果として全人類のトップの知性の持ち主になります。そこからまたドタバタが始まります。
映画は公開時、あまりのバカバカしさからブタごけし、ラズベリー賞にノミネートされるほども無く映画史から消えました。
ところが公開から10年後、トランプ政権が誕生。一部映画ファンからは、これは『26世紀青年』が現実化する予兆?と噂されます。
今改めて見直すと、純粋なサイエンス・フィクションとしてかなり意義のある映画ではないかと思えるようになりました。
『不適切~』はSFではなく、ファンタジーのカテゴリーだと思います。科学的根拠や推測に基づくフィクションとしては無理がありました。『26世紀青年』は『WALL-E』などと同じディストピアSFではないでしょうか?近年だと『メッセージ』などと並ぶ価値のあるSF映画?かもしれません。
この先人類は経済的な格差以上に知性の格差が生まれ、優秀な人材は激減するのではないか? 難しいSFや哲学書よりも、転生したら××になっていた、みたいな本しか読まれなくなるのではないか?
『WALL-E』の宇宙コロニーには優雅に暮らす生き残った人類がいましたが、あそこで描かれなかった貧困層はどこに行ったのか?
『26世紀青年』で違和感があるとしたら大統領含めた政治の在り方でしょうか?人類がまだ知性を維持している2020~2050年の間に政治の形態は劇的に変わるかもしれません。僕が考えたのは、政治家のAI化です。裏金が要らない、賄賂が要らない、嘘をつかない、過去の歴史から学びつつ最適の解決法を平等に見出す、その時その時の感情に左右されない、批判されても打たれ強く忖度しない、など現在求められる政治家の要素はAIにすべて揃っています。行き過ぎると『PLUTO』のDR.ルーズベルトのような存在になるかもしれませんが、設計と管理者さえしっかりしていれば大丈夫でしょう。
ドラマ『不適切~』を見て、春先にいろんな話ができて、過去のSFについてや、近未来のありかたについて盛り上がれる友達がまだ僕にはいるので、これはありがたいことだな、とハーフリタイアした者としては感じた次第です。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?