テレビ局のクリエイターは非番なら出勤不要
お雑煮の出汁はもちろんカシミール
FRIDAYさん、文春ほどの大ネタは無いですが、色々ニュースを探してきて飽きさせないですね。
ただ、この記事ですが、別に驚くことではないです。
僕が現役だったころにも、在京キー局のローカル深夜枠は30分200万とかありました。そこで、担当の編成マンやプロデューサーが知恵を出してやりたい番組を作っていましたね
1980年代後半、営業マンか電通かが頑張って、深夜でもいいからというスポンサーを集め、また、東京タワーからの送信機が真空管からトランジスタに変わり深夜のメンテナンスが不要になり、さらには、優秀な若手に自由に企画をさせてあげようというこれまた優秀な管理職が存在して、一時期深夜枠は若いテレビマンの千本ノック道場となり、そこから才能豊かな若手が育っていきました。その結果、年末年始でないと夜通し放送していなかったのが、朝まで再放送ではない番組が放送されるようになりました。
たとえば、当時ソニーのベータに比べ、録画時間が長かったVHSの特性を訴えるため、録画チャンネル4.5(4時間半の番組)が登場したり、JOCX-TV2として、深夜枠はフジテレビとは別物の30分番組を連発したりしました。
主な番組としては
●『インタビューズ』~スタッズ・ターケルの名著『仕事!』をモチーフにしたインタビュー番組。毎回テーマが変わり、街角で「あなたは月にいくら欲しいですか?」とか「あなたはどこに住みたいですか?」などを1000人めどに聞いていく。ある夜中、友達たちとこの番組を見ていて「月にいくら欲しいですか?」と聞かれた真面目そうな女子高生が「え~?そうですね5000円くらいかな」と答えていて、そこにいた全員が「出します!」と叫んだのを思い出します。
●『カルトQ』~3本撮りとかで1回30分200万以下でできそうなクイズ番組。とにかくテーマを絞り込んで、超難問を出題するがそれにこたえる解答者がこれまたオタクの権化という構造でした。今なら「ドーミーイン」とか「コストコ」とかをお題にして、細かいネタを競う感じですね
●『カノッサの屈辱』~偏差値高い系の企画。NHK教育の歴史番組の体をとりながら、デパートと大航海時代やインスタントラーメンと帝国主義を解説する番組。この番組の編成担当は後にフジテレビ・ホールディングの社長となり、構成作家や監督は『料理の鉄人』を生み出します
●『完全人体張本』~深夜枠で医学番組。「献血」「排便」とか「世界の奇病」、そして「ゴールドフィンガー」という超一流風俗嬢の指先手先のテクニック披露コーナーなどで構成されていた。実際の健康にはあまり役立たない番組。「張本」は卓球ではなく、「喝!」でもお馴染みの野球人=本人の出演は無し
など数多くの@200万以下/30分がありました。
僕の記憶が曖昧で申し訳ないですが『私の葬送行進曲』という自分の葬式の時にこの曲を流して欲しいという番組もあったと思います。
これも、たぶん業界的なよくあるネタとしての話だと思いますが、そのプロデューサーが記念すべき第1回で勝新太郎さんに出演依頼したところ、OKが出て、インタビューなどが予想以上に盛り上がり結構な量を収録できたそうでした。
初めに事務所には、深夜枠でありお金はないので、ギャラは安くとお願いしたら、本人が面白がっているので「片手でいい」となり、50万か、1回当たりの制作費が250万だから、他の話数でも調整してなんとかなるとそのギャラでGOになっていました。で、収録後ギャラ支払いの話になったら勝さんの片手でいいは、500万でした。
そこでプロデューサー何とかお願いしてギャラ400万にしてもらい、編成担当に相談し、第1回「勝新太郎 前編」第2回「勝新太郎 後編」で対応したとか。いい時代です。
さて、令和6年でも、深夜枠30分200万。僕は特に安すぎるとは思いません。ただし1980年代から90年代の深夜低予算番組は、あくまでもフジテレビの担当が企画内容や企画のテーマ(音楽で、とか文学でなど)を決めて、局員だと結果製作費が高くつくので、懇意の制作会社のプロデューサーや監督と相談して企画を進めていました。現在はどうなんでしょう?
制作会社に、予算と締め切りと、良かったらGP枠へみたいな空手形だけ切ってあとはマルナゲドンということはないでしょうか?
僕が初めに入社した会社とかは、現場が無い時に本社のデスクでのんびり交通費の精算とかしていると、直属でもない先輩たちに、会社に来る暇があったら映画館で映画見てこい!とか、テーマを絞って大宅文庫で調べものしてこい!とか、神保町の漫画専門書店で立ち読みしてこれぞと思うものは買って読め!とか、渋谷や竹下通りを2~3往復して何かを感じてこい!とか言われてました。
今のエリートのテレビマンが、現場が無い日にサラリーマンとしてお台場や赤坂に通っているとしたらヤバいですね。そこには多分発見は無いと思います。
またwebでネタを探していたりしたら、テレビは遅れたメディアになると思います。
僕の知り合いのハリウッド・プロデューサーは20年近く前に「メインストリームに興味はない。私は、フリンジにこそ可能性があると思う」と語っていました。彼の言うフリンジとは端っこの方にいる連中。当時の彼のフリンジの代表が「日本のコミックやアニメ」でした。当時はまだそういう時代です。しかも当時のハリウッドでは「ドラゴンボール」「スピードレーサー(マッハGoGoGo)」の失敗で、日本のIPはその程度と思われていました。
しかし、フリンジと思われようとそれは面白い、と信じて付き合い続けた彼は、今やハリウッドのトップランナーとなっています。
30分200万、大いに結構。その中でやりたいものを見つけ、それを一緒に作ってくれる仲間を見つけ、精いっぱい作る。GP枠への進化とは結果なので考えなくていいと思います。まずは貴方が作りたいものを作り、それを多くの観客(視聴者)に届けることへ邁進すべきです。