521: Elvis Costello and The Attractions / Shipbuilding

エルヴィス・コステロの書いた歌詞で、一番印象的なのは、この曲でしょうか。
1982年3月、フォークランド戦争が勃発した頃、彼はこの歌詞を書いたと言われています。
サッチャー政権下の大不況で、製造業は大きなダメージを受け、特に造船業で栄えた港町は壊滅的な状況となっていました。
そんな時に始まった戦争は、また「造船」の仕事をもたらしてくれるかもしれない、そんな生活への望みを意味していました。
しかし一方で、その「船」に乗って戦地に行くことは、死と隣り合わせというのも、まぎれもない事実。
そんな複雑な現実に翻弄される人々の姿を、感情を排して淡々と描写した、見事な歌詞だと思います。
最初にリリースされたのは、1982年8月の、ロバート・ワイアットのシングルでした(UK35位)。これがベスト・ヴァージョンという声が多いですし、同感です。
ただ、個人的には、1983年8月のアルバム『パンチ・ザ・クロック』に収録された、コステロのヴァージョンも、甲乙つけがたいと思います。
こちらの聴きどころは、間奏のトランペット。チェット・ベイカーが見事に吹き上げています。

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