607: Big Star / Holocaust

ビッグ・スターの1stが『不遇の名盤』だとするなら、3rdは『奇跡の作品』と呼ぶのが相応しいでしょうか。
全く売れなかった1stに続き、1974年には2ndアルバム『ラジオ・シティ』をリリースするも、同様の理由で全く売れずじまいでした。
デビュー時に4人いたメンバーも、アレックス・チルトンとジョディ・スティーヴンスの2人だけになってしまいますが、それでも彼らは3rdアルバムのレコーディングを完了させます。
アルバムはテストプレスまでされたものの、「売れる見込み無し」と判断され、リリースされることは無く、そのままビッグ・スターは1975年に解散します。
ところが、1978年にUKで1stと2ndをまとめた2枚組が発売され、音楽ファンの関心を集めたことがきっかけで、ついに幻の3rdアルバムがリリースされることになります。
ただ、録音当時、バンドメンバー自身がアルバムへの興味を失っていたため、タイトルもジャケットも収録曲も曲数も曲順も、何1つ決まっていませんでした。
このため、リイシューされるたびに、すべてがバラバラという、珍しい現象が起きています。
このように、リリースされたこと自体が奇跡といえる作品ですが、そういった経緯からか、過去2作と比べると、かなり沈んだトーンの作品となっています。
その代表と言えるのがこの曲。タイトルの通り、聴いていると絶望的な気分になる曲ですが、こんなに心に響く曲も、そう多くはないでしょう。
当時のアレックス・チルトン自身の精神状態を表現していたのかも知れません。

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