あふれる涙、涙、涙
お母さんにだっこされて電車に乗ってきた男の子。
「じいじ~!じいじぃぃぃ~~~!!……うっうっ」
と、号泣している。
ホームでは、優しそうなおじいちゃんが困ったような笑顔を浮かべて手を振っている。大好きなおじいちゃんとバイバイするのが悲しいんだね。男の子は、まるでこの世の終わりのような勢いで泣きじゃくっている。お母さんは、そんな彼の頭を優しくなで続ける。
しかし、その数分後。男の子は、ケロッとした様子で
「あっ!〇×△※◆◎▼◇!」
と、窓の外を指差して何か言っている。どうやら、もうおじいちゃんのことはすっかり忘れてしまったようだ。
子どもって、清々しいくらいに気持ちの切り替えが早いよね。
それで思い出したことがある。ピコ(娘)がまだ小さかった頃、SNSで仲良くなった仲間たちと、2泊3日の北海道合宿に参加した。北海道の通称「ぱぱ」が出迎えてくれて、子どもたちも交えて楽しい時間を過ごした。
ピコは人見知りで、ほかの子たちとはなかなか打ち解けられずにいた。しかし、ぱぱがピコをうんとかわいがってくれたので、寂しい思いをせずに済んだようだ。
そして合宿最終日。
またね~!
みんなとお別れをして飛行機に乗ると、ピコの様子がおかしい。
「どうしたと?」
「…かえりたくない…。もっと…ぱぱと…あそびたかった…うわあああああん!!」
誰かに嫌なことを言われたとか、転んで怪我したとか以外でピコが泣くのは初めて。あまりにも悲しそうに泣くので、私も思わず涙があふれてしまった。
「また来ようね。ぱぱに会いに来ようね」
「うわああああああん!!」
離陸し始めた飛行機の中で、抱き合ってしゃくりあげながら号泣する親子。まるで永遠の別れのようだ。周りの乗客たちは、何事かと思っただろうな。
しばらくして、泣きはらした顔で、しかし晴れやかな笑顔を浮かべてピコが言った。
「ねえねえ、ピコがないたこと、ぱぱにメールしたら?」
そう、ピコも「人との別れが悲しくて泣いた」自分に新鮮な驚きを感じ、それをぱぱに伝えたくてしょうがなかったらしい。
子どもって案外、冷静なんだなあ。