21日参りを始めた。 21日間続けてお参りをすると、奇跡が起こるという。 期待してしまうなあ。 下心満々。 初日の早朝、まだ辺りが暗いころに家を出て、近所の神社に向かう。 空を見上げると、星がいっぱい出ている。 空気が澄んでいて、気持ちがいい。 パン屋で働いていたころはもっと早く家を出ていて、流れ星の時期になるとぴゅんぴゅん流れる星を目撃したもんだ。 早朝のお参りを続けてたら、そのうちまた見られるかな。 お参りを終えて帰ろうとすると、横道から急ぎ足の若い男性が現れた。
中学生の頃、友だちと「くしゃみをした後にどんな音を発するか」の話をした。彼女のお母さんは「ハクション!…あ~いや」というらしい。へえ~。私の兄は「ヘプシン!…んあ~」だよ、と教えた。いろいろあるねえ、おもしろいねえと笑い合っていたあの頃。くしゃみ自体、いろんな音があるよね。 父・ジュンジは、昔はノーマルに「ウェッホン!」だけで終わらせるくしゃみだった。普段は口数の少ないジュンジだが、くしゃみの音は大きいのでいつもびっくりする。 ところが、ここ数年のこと。「ウェッホン!」の
お母さんにだっこされて電車に乗ってきた男の子。 「じいじ~!じいじぃぃぃ~~~!!……うっうっ」 と、号泣している。 ホームでは、優しそうなおじいちゃんが困ったような笑顔を浮かべて手を振っている。大好きなおじいちゃんとバイバイするのが悲しいんだね。男の子は、まるでこの世の終わりのような勢いで泣きじゃくっている。お母さんは、そんな彼の頭を優しくなで続ける。 しかし、その数分後。男の子は、ケロッとした様子で 「あっ!〇×△※◆◎▼◇!」 と、窓の外を指差して何か言って
歯科検診に行った。診察台には小さなテレビが設置されている。あまりテレビを見ない私にとっては新鮮で、つい見入ってしまう。しかし、 「じゃあ、台を倒しますね~」 の声で、夢の時間は終わりを迎える。もうちょっと見たかったのに。これが最初のストレスだ。 「うがいどうぞ」 と言われて再び起き上がったときには、テレビはすっかり違う話題になっている。これが2つ目のストレス。 普段は寡黙な歯科衛生士さんが多いのに、今日の歯科衛生士さんは違った。磨き残しのチェックをしながら、 「あ
こないだみた夢。 娘がデニッシュ生地のパンを食べている。 中にはカマンベールチーズが入っているらしい。 おいしい?と尋ねると、 「うーん、イマイチ。 こないだ食べたパンの方がおいしかった。 あのお店のパンはね〜、もうパーフェクト」 と、うっとりした表情で言う。 「へえ~、そんなにおいしかったんだ。 お店の名前はなんていうの?」 「コンヴェンツ・ウントトロンポ・コヴェンツォ」。 ……。 目が覚めて、思わず言葉の意味を調べてしまったよ。 ありそうな名前じゃない?
朝のラッシュ時。 争奪戦は、ホームに並ぶときから始まっている。 先頭に立つのはなんとなく嫌なので、誰かが立ったらすぐに2番目に並ぶ。 3番目や4番目では争奪戦に勝てないから、注意しなければならない。 やがて電車が到着する時間になり、ホームに入ってくる。 おっと、見逃すな! あんこの鋭い視線が、車両の向こう側のドア付近を捉える。 座席側の壁とドア側の壁が交差する場所、そこが私の三角地帯。 角に体を預ければ、どんなに揺れても大丈夫。 立ったままでも居眠りできる聖域…。
旅先で、レトロな喫茶店に入った。 柱時計に、アラジンのストーブ。 懐かしい音がして振り向くと、ツヤツヤの黒電話があるではないか。 マスターが受話器を取って、なにやら話している。 おお、黒電話くん。キミは現役で活躍しているんだね。 いましたよ、我が家にも。黒電話くん。 世の中に押しボタン式の電話機が現れても、このみ家では、1990年代前半まで働いてくれていた。 ああ、黒電話くんよ。 誰かからの電話を心待ちにしているとき、「ジリリリリン!!」とけたたましく鳴る前の、かすかな「
私は確か生粋の日本人のはずだが、うまく日本語を話せない。 それなのに、仕事で電話に出る。 接客もする。 それだけではない。 「これからは、もうちょっと人前に出てみようかな」なんて言っている。 おしゃべりは得意ではない。 口数も少ない方だ。 性格は引っ込み思案で内気。 でも、人としゃべりたい。 というか、人の話を聞きたい。 というか、目の前の人が気持ちよさそうにしゃべって、 「あら、あんこちゃんったら聞き上手だから、私ついしゃべりすぎちゃったわ」 と言われるのが嬉しい。