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行動分析学の記録で「みんな」から「個」の保育へ ~園児からのボトムアップ保育~その3

その子の育ちがある

前にも書きましたが、例えば「(子ども)大声で泣いて要求する」→「(保育士)応じない」→「(子ども)もっと大声で泣く」→「(保育士)もう、しかたないね。と応じる」
とすると、も子どもは「もっと大声で泣けば要求が通る」と学習してしまいます。
この大声で泣くという行動を減らし、「貸して」とか「ちょうだい」のように違う好ましい行動に変えていくには、子どもがそれを習得する時間が必要です。なんならもっともっと大声で泣くようになります。
大人の都合のいいように子どもはすぐには変わりません。
初めはなかなか効果が感じられませんが、これには時間がかかることと、どのようなプロセスを経て子どもの成長が見られてくるのかを保育士が理解していましたし、何より以前とは保育士のメンタルが違いますから、子どもの育ちを信じて、時間をかけることができました。これは本当に素晴らしいことでした。
すると、ちゃんと子どもは学習してくるのです。「待つことは最大の支援」と言われますが、その子の学び方、習得するスピードがあるのです。
これも、日ごろの記録が証明してくれるのです。

ちょっと行動分析学とは違いますが、学びを習得する時間や方法はそれぞれ違うことがわかる動画があるので、リンクを貼っておきます。
ここでは教師(支援者)が個々の現状を把握して、まだ習得できていないところを置いてきぼりにすることなく、時間をかけて習得していくことにより、初め伸び悩んでいた子が、最後は他の子より成績が上になったことが示されます。
その子にあった学び方、時間のかけ方、強み、弱みを支援者が把握し、「みんな一緒」ではなくその子からのボトムアップ式で、オーダーメイドで支援を行えば、ちゃんと習得できるということですね。
年齢によって全員が同じクラスで同じ授業を受けて、一斉にテストをして、その時だけの成績で判断することは、実はそれほど正確な評価の付け方ではないのかもしれませんね。

サルマン・カーン「ビデオによる教育の再発明」 (youtube.com)

大人が学ぶことの大事さ

私たちは実践を続けながら、記録をA先生に送り、それを基に、記録の取り方、我々の支援の在り方を評価、アドバイスをいただき、学びを深めていきます。
学びを止めたら忘れていってしまいます。
それは、研修会場で数日間だけの詰め込み型講義では、現場に落とし込むことが難しいことでわかるはずです。
学んだことを実践し、その実践がそのまま学びになることが望ましいですね。学びと実践のサイクルが、日常のルーティンにならないといけないのです。
そうすると、わざわざ何かを勉強しに特別な場所へ行く必要はないですし、毎日の仕事がそのまま学びになり、自分の成長が感じられる職場になるのです。
結局は「成果を出すための記録をつける」ことを目的とした情報収集をすると、目の前の出来事がとても大事になってくるのですね。

マージナルゲインでいろいろと変わり始める


保育士のストレス、子どもの行動、保育士と子どもとの関係性、お友達との関係性、お友達の声かけの仕方、保護者との会話など。

困りを持っている人が、それを解決、あるいは補う方法を習得すれば、見える景色が変わり、感じ方が変わり、行動が変わります。
保育士の困りがどんな形でアウトプットされてくるのかを、管理職にいる者は気にしていなければならないでしょう。
また、課題を課題と認識することも大事です。
「保育士の仕事はこういうものだ」とか、「みんな通る道よ」などの精神論で現状を肯定していくなんて、マジあり得ないのです。
さらに、課題を解決するには「何をするか」より、「誰がするか」の方が大事なのです。
今回の事例では、管理職があれこれ指示するより、第三者のA先生に助言をいただいたことが、とても大事なポイントでした。
適材適所ってやっぱりあるのですよね。
それと、タイミングも大事です。
福祉の現場は感情をもった人の仕事ですから、関係がこじれた後や、働く人の精神がボロボロになってからでは修復不可能です。
マージナルゲイン(小さな改善の積み重ね)がチームとして最高のパフォーマンスを発揮するために大事ですから、課題は小さいうちに発見し、小さな改善を積み重ねていく必要があります。
「ひやりはっと報告書」なんてのは、そういう効果を狙ったものですよね。

おわりに

長々と書きましたが、行動分析学の記録は保育現場にはとても役立つものでした。
現場で取り入れるハードルを下げるためにも、行動分析学の記録のデジタルフォーマットが早くできればいいのになと思います。
結果もグラフで視覚化されたりすると、支援者も効果を実感しやすいでしょうし。

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