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(13)『邪眼』【おすすめアニメ感想】

今回、アニメ作品『邪眼(MAUVAIS OEILS)』についての感想を記したいと思います。


邪眼(MAUVAIS OEILS)

(1997:フランス) アニメーション制作:LE DERNIER CRI ※1、監督:バキート・ボリノ、キャロリーヌ・シュリー、ルラン、音楽:バキート・ボリノ、フランク・ド・ケンゴ(ドラジュビス)、マルセル・ベラン(Hellogabale)、製作:アクセル・ギヨ(Viridiana Production)



『邪眼(MAUVAIS OEILS)』 DVDジャケット (※引用元:※2)

※1.参加アーティスト(13名):アンリエット・ヴァリアム、アンディイ・ボリュス、バキート・ボリノ、ステファン・ブランケ、ウジェーヌ・ケロセン、フレドリック & レティシャ、ヌヴィッシュ・ミルコヴィッチ、ムリネックス、キャロリーヌ・シュリー、フレドリック・ボワンスレ、アレキシャス・トャイヤ、マーク・ドリュエ

※2.本著での視聴・引用元
『邪眼』(DVD) 30分 アップルリンク発売・販売 (1997) (3,800-)

本作の概要
フランスのアーティストグループである「ル・デルニエ・クリ」(LE DERNIER CRI)が作成した映像作品です(30分間ほど)。
総監督は当グループの主催者バキート・ボリノ。アート作品といいますか、前衛芸術の1種かもしれません。
なお、日本とのかかわりでは、広島国際アニメーションフェスティバル(第7回:1998年)の参加作品とのことです(引用元『邪眼』(DVD) より)。

参加アーティスト(上記※1)13名がそれぞれ1分~数分の短いアニメーションが連続的に導入された映像になっています。
なお、「アーティストたちの共演」と称される全体を通した動画が4分割されたものが断片的に差し込まれています(これは、特に作者名が記載されていないのですが、総監督のバキート・ボリノが中心となって製作しているものと推測します)。

ただし、各短編作品の題名の表示(キャプション)はなく、接続部分に気づかないほど各作品は連続し、オムニバス形式とゆうよりも、全体がひとまとまりの作品として完成しているように見えます。

絵(描いたもの)や写真のコマ撮り撮影によるアニメーションが主なものですが、人形や人間自体を使用した実写のコマ撮りアニメーションもあります。
もしくは、コマ撮りですらなく(つまり、アニメーションでもなく)、実写映像による人形劇であったり、人間が直接演じている(例「アーティストたちの共演」などの一部)部分もあり、様々な技法が取り入れられています。
また、実際に人間が着ているシャツにプリントされた絵がコマ撮りのアニメーションになっている部分もあり、ひとくくりに説明できない作品でした。
いわば映像の作法に制限がなく、その意味で自由度が高いものです。

全体の感想
最初の視聴の印象は「見ていると気がふれそうな映像」でした。
グロテスクな素材、強い彩色、絵の輪郭が強いといいますか、しかも、切り替え回転や展開スピードの速さが大きい映像で、目まぐるしい。
BGMはメロディアスなものはなく、不協和音、雑音・騒音や叫び声のような効果音が多用されたものです。
多分に万人向けではないかもです。

ただ、完全に意味のない無機的な映像(うまくいえませんが)、たんなる幾何学的な画像が流れる、とゆう映像ではありません
(なんとゆうか「モンドリアンの絵画」のようではない)。

むしろ、意味性が強烈に感じられるもので、映像からは訴えかけてくるものの声(叫び)は強く伝わってくるものでした。

でも、わたしは好きですよ、こうゆうのも(常にこういったものだったら困るが)。素直に面白いと思いました。
30分間が気づかないほど早く終わってしまうくらい、見飽きることのない映像作品でした。



『邪眼(MAUVAIS OEILS)』 DVDジャケット (※引用元:※2)

ストーリー性について
各作品のストーリー性においては、比較的分かり易いもの(あるいは進展に方向性があるもの)もある一方、
明らかにストーリーがないもの、若しくは、どちらとも判別つかないものなどがありました(そこは人によって受け止め方が異なるかもしれません)。

基本は物語性よりも映像効果の方が重視された作品群のように見えます。

印象強い作品
(1) ヌヴィッシュ・ミルコヴィッチ
一番印象に残るのはヌヴィッシュ・ミルコヴィッチ。
たぶん作者の仕事部屋(工房)と思われる場所において、室内中のあらゆるものがだんだんと妖怪(のようなもの)に変化し、しかも変遷は留まることなく継続してゆき、最後は無機物な骨組みになってしまう。しかし、それは、とある男の脳内の妄想であった、などとする作品でした。
妖怪の造形がすばらしく、その動きに見入ってしまうとゆうか。口で説明できないものです。

(2) ブランケ
一番ストーリー性があるし、絵的なわかりやすさがありました。記憶に残るものです。
ストーリーは、とあるおっさんが、変な男に犬をけしかけられ、犬にかまれてズタボロになり、絵(芸術:シルクスクリーン)の力で復讐するとゆう内容。

絵に描かれた犬(的なモンスター?)が実物のモンスターへと変化し、犬をけしかけた男とその犬をバラバラに噛み千切るとゆう…。
なんとゆうか、絵力(えぢから)があるとゆうか、画像で説明できないのがもどかしいです。

(3) フレドリック & レティシャ
写真を素材にしたコラージュ色の強いアニメです。
連想されるこのほかの作品では、『魔法少女まどか☆マギカ』(2011)における、劇団イヌカレーによる魔女のいる異世界の映像が、これよく似ています。
ただ、フレドリック & レティシャの本作の方が、マドカ・マギカよりも、さらにグロテスクで強烈な映像です(効果音もすごい)。
しかし、意外に記憶に残らないのは、やはりストーリー性が薄いためなのではと考えます。

バキート・ボリノについて
  本作のチャプターをみるとバキート・ボリノ自身の名がつく作品がないのですが、4本差し込まれる「アーティストたちの共演」、オープニング、エンディング、そして、全体の監修について、当氏が関わっているものと推測しています。
(そこに出演する「一つ目男」はバキート・ボリノ自身が演じているのではと憶測します)

  「アーティストたちの共演」をみると白黒の画面で実写のコマ撮りの映像は塚本晋也の「鉄男」(1989年)にみられる表現に、とてもよく似ており、多分に影響を受けていたのではないかなと推察します。
(「鉄男」は海外のクリエイターに影響を与えたと聞きます:引用※3)

※3:(引用元)CINEMAS+ 「日本映画の海外進出を促進させた怪作『鉄男』」(2017)
https://cinema.ne.jp/article/detail/39465

なお、DVDの冊子のなかの当氏の解説のなかに「愛読書は『Dr. スランプ』」とありました。

シルクスクリーン
わたしは、本作の各アーティストについては全く知らずにいたのですが、彼らの本来の仕事は主にシルクスクリーンであろうことが、本作の映像でうかがい知れます(実際はわからんのですが)。

シルクスクリーンのアーティストとゆうと、アンディ・ウォーホルや、ロイ・リキテンスタインがよく連想されるものです。

当時、最先端のアートの手法の一つとしてはシルクスクリーンが主流だったのでしょうか? 本作の背景はよくわからないです。

ただ、本作の各短編(「アーティストたちの共演」も含め)、シルクスクリーンが題材になっています。
「アーティストたちの共演」は、まさにバキート・ボリノ自身の日々の作業そのものを題材にされていることが直に示されています。

それで、作中のストーリー展開では、キャラクターが「インク(多分に揮発性の高い溶媒によるもの)のにおいをかいで、超人的な力を発揮したり、幻影や超現実的な映像が見えたり(まんま)、異世界のようなものが出現する、などのような表現がみられたり、ストーリーが展開します。

わたしは、実はこれらの映像は彼らの実体験ではないのだろうかと、密かに推測しています。そうだとしたら、ある意味すごいことだなと。


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