見出し画像

オードリーヘップバーンの6本-アトピーを通じて

そもそも、映画が得意でない。

映画館のスクリーンや、リビングのテレビなどに関わらず、2時間や3時間、ひと所に留まるということが性に合わないと感じる。

小説やら漫画やらの書物は自分のペースで進めることができるので、日常で触れるエンタメのスタンダードの地位に君臨している。

動けないのが嫌だ。
まるで小学生のような理由で、不朽の名作に触れないまま、生きていることに少しの恥ずかしさを感じたりもする。

そのような気質であると、映画は、病気の影響で身体的に動けない時に消費するエンタメとなる。

洋画だと独裁者やモダンタイムズ、街の灯、ゴッドファーザー3作品、セントオブアウーマン、
邦画だとフラガールに彼女が知らない鳥たち、地獄でなぜ悪い、箱入り息子の恋、、、

ああ、チャップリンとアルパチーノ、蒼井優に星野源が好きってことね。しかも中途半端な拾い食い。

けっこう一生懸命思い出してみたところでせいぜいこの程度なので、なんと貧弱な経験値だろうか。

母と私は書物を好み、父と妹は映像を好んだ。

「お兄ちゃん、起承転結を追うためだけに映画観るの?映画観る資格ないね」などと、10代後半の時に揶揄されたことを覚えている。

オードリーヘップバーンにも、例に漏れず病気のときに触れた。

お笑いコンビのオードリーは、「お前らには華が無いから、華のあるコンビ名にした方がいい」という理由で、事務所の社長にコンビ名を命名されたそうだ。

2年前の休職中は、とにかくオードリー(コンビのほう)に支えてもらった。漫才、ラジオ、テレビ、エッセイなどあらゆる作品を消費する日々。

ある冬の深夜にリアルタイムでラジオを聴きつつ1人で街道を歩いていたら、警官に止められたこともある。極寒の中で爆笑している中年は、確かにラリって見えても仕方ないと今なら思う。

2022年の夏はコロナ感染者が最多となっていたと思うが、休職中とはいえ、家族がもらってきた影響から、漏れなく自身も罹患することになった。

そんな中で、芸人のオードリーをきっかけとしながら、ローマの休日とティファニーで朝食を、の2作を視聴してみたのが、オードリーヘップバーンに触れたきっかけだ(ほかの作品は見ていない、例に漏れない拾い食い)

感想は、かわいい、魅力的、女性的。

なんて陳腐な感想、、

ローマの休日では、泥酔して寝こけてしまう、唐突に髪をバッサリショートにする、初めてのタバコ、庶民のワイン(シャンティという種類らしい/藁のカバーが付いてるものをいつか飲んでみたい!)を嗜むシーン

ティファニーで朝食をでは、店の前でデニッシュを食べるシーン、キセルを使ってタバコを吸うシーン、雨の中で自分を保てなくなるシーンなど、、

このようなシーンがどうして印象に残ったのだろうか。自分の趣味趣向において、陰と陽といった、二律背反的な物事に対してグッとくる傾向にあるのだと思う。


光を表現する時に影を描くように。
ロイズのチョコがけポテチのように(これは違う気がするけど)

貞淑なオードリーヘップバーンが、もう一生体験することのないであろう休日で、少しだけ手を染めたワルイコト。しかし、また自身の本懐へ戻っていく姿。

単に、一見吸わなさそうなオードリーヘップバーンがタバコを吸っているシーンを美しく感じたのかもしれない。


オードリーヘップバーンの映画を観て2年後、今度は自分にアトピーの闘病生活が訪れる。

タバコを辞められない。吸うと明らかに悪化するのに。完全に辞めたのは1週間程度だった気がする。なぜ辞められないのか、辞められない自分がどんどん嫌になっていく。

そんな中で、「オードリーヘップバーンの生き方」という本(結局、書物だ)を店で発見してジャケ買いした。


世界中に愛され、ファッションアイコンでもあったオードリーヘップバーンは、明るく前向きなエネルギーを中心に置きながらも、数々のコンプレックスを努力でカバーしていたことを知って衝撃を受けた。

例えば、えらが張っていること。
そのため、カメラを意識して手を顔の近くに添えたり、タートルネックやスカーフを好んだそうだ。

かのオードリーヘップバーンですら、美貌を磨くことに余念がなく、コンプレックスを強みにかえる、そのための努力を惜しまないひとだった。さらには自分に合っているから身に付けていたタートルネックを流行させてしまうところに、とんでもないひとでもあるのだけども。

そのエネルギーを表す言葉も沢山ある中で、たばこにも触れている一言が深く心に残っている。

「私はタバコを我慢しないわ。でも、1日6本までと決めてるの」

悪いものであっても、本当にやりたいことなら受け入れるスタンス。我慢と天秤にかけて、自分を喜ばせ、それでもちゃんと節制し、コントロールすることの大切さに感銘を受けた。


とことん影響を受けやすい私は、その日からタバコを6本までにする!これをオードリーの6本と呼ぼう!などと言いながら真似し始めて、達成できた日はノートに記録を残すことにした。


それから約半年が経つとアトピーはほぼ回復してきた。

仕事と家庭の影響が、食べ物(量)、酒、タバコなど、身体の不調を促進することを学んだ。大切なのは仕事や家庭から受ける影響をどう捉えるか、どう向き合うか次第。その上で摂取量が減っていくものと認識していた。

実際に、少し食べ過ぎた翌日には量を減らす、サウナや運動など排出を促進することで、体重をはじめ体調をコントロールできている実感があった。

そんな中でつい先日の土曜日、東洋医学の治療師からこう言われた。

「オードリーの6本はもうやめたの?」

もちろん忘れてたわけではないけれど、大切なのは仕事や家庭、要は生き方や考え方のスタンスでは?と思っていたので、特にタバコは、無駄に吸うわけでは無いけれど、積極的に減らそうともしていなかった。

「あれ、続けた方がいいよ。完全に辞められなくても、すごく熱意を持って話してたじゃない。辛かった時に支えてくれたオードリーから派生してたどり着いたわけだから、きっとためになるよ」


なるほどそうだったのか?あんまり自覚は無かったけど、、じゃあやってみようかしらん。この文章を書きながら、文字量がどんどん増えていくことからも、重要な話なのだなと今は確信しているけれども。


治療を受けた帰り道に改めてネットを見てみると、自分の認識とは少し違っていたことを知る。

「たばこは1日6本までにすること、って、ママから言われていたわ」

しかし本人はその教えを守らず、ヘビースモーカーであったらしい。かつ、晩年は大腸がんと肺がんを患って永眠している。


おーい、6本じゃないんかーい!
あの感銘はなんだったんだーい。

帰りのバスの中でニヤニヤしてしまった。警官が近くにいなくてよかった。


改めて私は、オードリーヘップバーンのママの教えをもとに、オードリーの6本を続けてみよう。昨日と今日は、成功した。明日もやってみよう。オードリーのエネルギーを信じてみよう。

いいなと思ったら応援しよう!