「妻はサバイバー」永田豊隆
朝日新聞記者が、奥様の精神障害とどのように寄り添ってきたか記したエッセイ。
概要や装丁の雰囲気から、重苦しくて読み進められないことを心配していましたが杞憂でした。さすがは記者さんと言うべきか、文章は読みやすく、また、1ページに収まる文字数も少なめで、スイスイ読めてしまいました。
では、内容が予想よりも軽かったのかというと全くの逆で、まさに「壮絶」のひとこと。
摂食障害→幼少期の虐待判明→治療中に知人男性から性加害→解離性障害→アルコール依存症→旦那さんの適応障害→水中毒→アルコールの影響による認知症…
次から次へと押し寄せる難題の嵐に、読んでいるだけでめまいがするよう。奥様から暴言を投げられる、深夜にベランダから飛び降りようとしないよう抱き抱える、受け入れ拒否と言われた病院に頭を下げ続ける、預金残高を確認したらゼロだった……何度も出てくるし、読みやすくさらりと書かれていますが、これを出口の見えない中で何年間もやり続けるとは、想像を絶する。
奥様から何度も離婚を切り出されたようですが、離婚せず、そして会社員として仕事を続けて家計を支えてきた筆者は本当にすごい。私なら投げ出してると思います。
「イネイブリング」(=アルコール依存症患者が身の回りの整理・掃除ができなくて家族等が支援すること。患者には無茶苦茶になった生活環境を直視させて回復を促すべきで、家族が掃除等を肩代わりすることは御法度とされる。)などの知識も勉強になった。当事者になる前に知れて良かった。この知識を使わない方が幸せだろうけれど汗
そして、筆者自身も本書で謝辞を述べているけれど、ここまで壮絶な状況にある筆者を励まし、時に休暇をとらせ、時に配置転換しながらも働かせ続けた朝日新聞社すごい。朝日に限らず新聞社、新聞記者の労働環境はあまりイメージ良くないけれど、こういう人事措置も可能なんだな。
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