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ひとり夜咄6 「逝った友」
あの日から十年の歳月が過ぎたのですね。ワタシもいつ来るかわからないが間も無くであろうその日を待つ身で当時の君に贈った弔辞を読み返しています。
秋なかばなのに、夏の息苦しさが居座る日でした。
突然鳴り出す携帯電話で、君の訃報に接っしました。
「馬鹿な、信じられない?」
驚きと喪失感が抑えられずに心のやり場が見つかりませんでした。
今年の五月の連休で、偶然に浅草のフェリー乗り場で遊覧船のチケットを求める列でお会いしましたね。
まだ、友は再婚したばかりで、可愛いお子様とご一緒でした。さりげない会話を交わしたのが、今生のお別れになるとはつゆほどにも思いませんでした。友とはまだ、田舎でデザイン界が黎明期であった時代の中で私の右腕となり悪戦苦闘を共に支え合って過ごしましたね。戦った戦友でもあり、自分がリタイアした後の懸命に活躍する姿に接し、物静かな友が一国一城の主として挑戦する静かなる闘志を拝見して、頼もしさと羨望の狭間で、大いなる期待を確信しておりました。
人生の別れとは何気なく思いも依らずに不意に訪れますね。ふと、思い返した時の既視感の様な、あの時が道しるべのように、通り過ぎてゆく友の挨拶であったとは後悔と慚愧の念に、映画のワンシーンの様に思い起こされます。
遺ってしまった戦友を讃え敬意とご冥福をを捧げます。
「世の中の 人は何とも云わばいへ わがなすことは われのみぞ知る」竜馬 辞世
2014年10月5日