繊乃月(せんのつき)
日々の感じた事を朝のひと時に挨拶かわりに綴ってみました。
月々に湧き出てくる想いを流してみました
文披31題2024 投稿作品
「呪文」 雨が降る朝です。 水を跳ねる車の音が距離と方向を知らせてくれるのみです。過ぎてしまへば、静寂に戻る朝、目覚めの香りを珈琲が届けてくれる頃に、呼ばれるかのように旅立って行く。 キミを探して果てしのない旅 をして、見知らぬ宿にたどり着く頃には夜明け前の欠けた月が薄灯りを漂わせている。 その先に無限の雲海の波が聴き取れないリフレインを繰り返して、誘い込む不思議な呪文を唱えてる。 呪文は出逢った時にキミが 呟いていた言葉のようなのだ。 「誘惑」 再び季節がめぐり、その
1.「サマータイム」 朝が突然に早送りして一時間ズレました。目覚めがいつの間にかそのようになってしまいました。早い話しが朝寝坊が続いていただけなのです。ややこしい言い方して、また嫌われてしまうのだろう。 「同じ一本の樹に生きて同じ時を過ごす」 「それぞれの葉が秋になり落ち葉となる」 「偶然とは言え同じ場所に舞い落ちて来た」 「そんな爽やかな気持ちを運んでくれた」 そんな想い月さんのショートストーリーを読みながら感じた印象を詩に書き始めていた。一昨日の夜明け前でした。きっとサマ
「宿木やどりぎ」 今朝からはいつも驚かされて、然も刺激と感動のダブルパンチを喰らう作家の「風花さん」の詩を読んでました。ワタシは宿木の様に昨日から呼び止められた詩や短歌からイメージをいただき、勝手にストーリーを作り返詩を書いている。やどりぎ、寄生木、宿木を検索すれば悪いイメージが返ってくると想像してましたが、真反対の解が返って来ました。これは何かに使えると思い懐に入れて暖めておく事にしていたら返詩ができ上がりました。発表は時間を少し過ごしてからとして、どうせ推敲が必要なのはい
プロローグ「午前二時」 夜になれば 迷子の狂気も眠りに着く 何気なく捨てた 言葉の叫びも遠ざかる 1.「ラストワルツ」 サヨナラが 言えない 涙が合図と 知っていたから 冬を迎える 暖かい秋の日の 誰も知らない 別れの儀式 ラストダンスは ワルツがお好み ブルースでは哀しい 想いは北風に乗せ 秋は別れの涙が よく似合う さよなら告げて 遠ざかる 2.「独り言」 時が移れば消えていく 悲しみの出逢う湖に 私だけの君は消え 忘れたぬくもりを残して 独り言だけが流れ
「思いやり」 人が良いばかりではないよ。 掲示板(或いはスペース)を立て訪問者と交流する。その過程は茶道にも通じるものがあります。 主人と客人が茶道を通して心を開き、互いに敬い合う、そして清らかで動じない心を持つという茶道において不可欠の精神を意味します。 多くの茶人はこの言葉を大切にし、常にこのような気持ちでもてなしたいと考えています。 教えのひとつに「相客に心せよ」相客とは同席した客を指し、「心せよ」とは気を配りなさいということです。 これは読んで字の如く、 同じ場所に
「朝のつぶやき」 ⑴朝を待っている 今朝は未明に起こされて、暗い夜明け前の窓を見ていた。 不幸だと思うと不幸が集まって来ると、幸せを感じることで幸せが訪れると誰かが言っていた。そんな想いを忘れたらいけないのですね。生きるとはそんなものでしょうね。と、偉そうにひとり呟いてみました。 今は落ち着いてひと時の癒しの朝を一杯の暖かい珈琲でくつろぐ幸せの時を過ごせている。 ⑵朝はいいなぁ。 朝は辛かった夜や、悲しかった時を思い出にしてくれる。一歩を踏み出せとエールを投げてくれる。辛か
「いつかの月」 今年も中秋の名月が近付きました。昨夜も、未だ未練の帰らぬ夏のペルソナ・ノングラータ雷雨の訪れに辟易している夜なのです。 さて、今宵を照らすあの月はやがて旅人になる。それは〈いつかの月〉となり、思い付きで気ままに瞬き(まばたき)をするように数しれぬ艱難辛苦(かんなんしんく)を道連れにした旅人でもある。 数多の憎愛劇の遍歴が心身を蝕み削り息も耐え絶へに生きて耐えて行く。いつしか、血を吐く想いや泪も尽きて身体を覆っていた鎖の嵯峨も溶けていくのだ。 それはひたすら夢
1.「渦の中で」 自転車を停めて森へ入る 振り返らずに奥へと歩く 三度目の鳥居をくぐると そこは樹海の入り口に着く 佇めば森が回転を始め 蜉蝣が浮遊して道案内する 踏み出す度に身体が浮かぶ やがて渦に囚われて行く 車輪が突然に回りだす もう帰らないと知らせる 2.「むくげとふよう」 白い花が 咲きました 木槿ですか 違います ワタシを 捨てた 湖ですよ 芙蓉です 3.「乙女」 帰りゆく 咲き誇れし 乙女らを ひとり見送り 佇みて 道標となりし 凛と
(ポエとりNo.2) 1. 「今宵は輝け乙女。自分らしく」 そのバーのネーミングは店の雰囲気とはかけ離れていた。俺は拳銃を胸に仕舞いドアを開けた。 マスター久しぶり長いセリフの看板だな 愛でこの世を変えるのか 欲望であの娘を救うのか 笑わせるね それは傲慢な嘘で 詭弁の誘い文句だよな 昔マスターが使ってた 手の内だったな また不器用な愛に 嘘と欲望で誘うのか この世は何も変わらんな 傷ついて知る刹那の錯覚 己も知らずに他人を騙す 偽善だけは知りながらね 客は誰も居
(ポエとりNo.1) 1. 全てがまやかしの空へと 寄せ波と引き波の交差点で 絡み合う愛と憎しみが静かに燃える からまる表と裏と、真と偽、光と影が 別れ話しや闘いでなかったから 2. 流れ星だけ流れていった 君だけを置き去りにして 裏切られて待ち続けた君と 裏切った俺も傷ついていた あの下弦の月が俺の夜を撃つ 流れ星を追い越して 3. 真っ白な気持ちを消せば 俺の償いの針が動き出す あの時に戻れたらなんて 身勝手な話ではなかった 裏切りの夜を引き摺り
あの日から十年の歳月が過ぎたのですね。ワタシもいつ来るかわからないが間も無くであろうその日を待つ身で当時の君に贈った弔辞を読み返しています。 秋なかばなのに、夏の息苦しさが居座る日でした。 突然鳴り出す携帯電話で、君の訃報に接っしました。 「馬鹿な、信じられない?」 驚きと喪失感が抑えられずに心のやり場が見つかりませんでした。 今年の五月の連休で、偶然に浅草のフェリー乗り場で遊覧船のチケットを求める列でお会いしましたね。 まだ、友は再婚したばかりで、可愛いお子様とご一緒でし
新月が明けて、なぜだか寂しい朝です。夏がサヨナラを言いそびれて夕方には大きな涙を流して帰って行きます。 キミにサヨナラを言って欲しかった。言えないことは誰でもあるけれどね。あれ以来、想い出して泣くことはもう止めようと誓っていたはずでした。涸れたはずの涙がまだ残っていました。 あの日キミはすぐに戻って来るからと瞳で言ったきり、四年も森(病院) に行ったり来たり長い病いの生活を重ねましたね。次第に動けなくなっても、キミは涙を見せずに耐えていました。 ひとりの時は涙で泣き崩れてい
「新宿物語⑴/永遠」 気狂いピエロの最終場面の映像に映る詩の一節です。ひょっとした事から、ピエロ役の彼は、昔の恋人との一夜を過ごす。翌朝、部屋に死体が転がっている。 彼と彼女は殺人事件に巻き込まれ巴里から南仏、そしてイタリア地中海への逃避行の物語。逃亡の末に、すべての絡繰(からくり)を知り絶望感から、ダイナマイトを頭に巻いてピエロとして自ら爆死する最終シーン。地中海の海の水平線とともに ランボーの詩集『地獄の季節』から、「永遠」の詩がナレーションで流れるラストシーンに現れて終
病から回復して、残された日々を如何に過ごすか思案中の拓郎に 「拓郎を演じる事は卒業しよう」と言う愛妻。 「最後まで拓郎であり続けろ」と励ますみゆき。 拓郎は以前、みゆきの「ファイト」の歌を聞いた時の衝撃を思い出していた。 もう俺の時代は終わったのかと拓郎は思い詰めていた。 「俺にはもう、こんな歌は創れない」思い悩んだ拓郎はその曲をカバーして歌った。流石に、拓郎節は健在であった。 見事に自分の歌にした。拓郎は音楽活動を続けた、戸惑いと焦りの中で。とは言へ、拓郎も団塊の世代の申し
生きてよも明日まで人もつらからじこの夕暮をとはばとへかし 今、なぜこの話しを書き直す気になったのか。たぶん、それは彼女がこの世から神隠しに遭ったかのように、姿を消したのがこの神無月だったからなのです。 四月一日が彼女の誕生日で、一年前の四月に一度書き上げて発表したのですが、何故か今も、拭いきれない疑問は残ったままだったからです。四月は言いようのないザラっとした感触なのでした。尚、ここに載せる和歌はすべて「式子(しょくし)内親王」の和歌です。 それは三年前の九月の末に起きた
久しぶりにドジを踏んだ。久しぶりと言うより初めてだろう。俺は妻と愛人の約束をダブルブッキングしていたのだ。この場合は妻を最優先しなくては筋が通らない。俺は愛人への言い訳を考えながら彼女のマンションに向かう。この場面でのお土産は気張ってケーキや花束なんては愚の骨頂で、深読みされてしまう。 そんな訳でいつものシャルドネを持参なのだ。 摩天楼の夜景を眺めながらシャルドネのグラスをテーブルに置いて、俺はゆっくり話し出した。 「時計が時を刻むだろう。それって、普段はいつものように正確