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夜咄 七夜「紙撚り(こより)」


 細長い小さな桐箱には、和紙に可憐な撫子の花を描いた短冊を紙撚りにした粋な線香花火が詰まっていた。それを私に渡されたのは梅雨の明ける季節だった。君は想いを告げ、ふたりの恋は始まった。秋を知らせる新月の日に、ひと夏の恋は別れを告げた。

「星の降る夜は貴女とふたりで踊ろうか」そんなフレーズが頭の中に流れる七夕の天の川を見ていた。いつ見たのか思い出せないほどの何十年ぶりかのことに昔の流行り歌がスラスラと走るのだ。君はどうしているだろうか。流れ星になってしまったか。思い出す事もなく楽しく暮らしているだろうか。病になって病院で唸っていないか、それとも良き伴侶と好きだったジルバでも踊っているのか。あの織姫、彦星の夜も瞬きをするように過ぎてゆく。なんてセンチメンタルに浸っているのだ。

 なぜこのような昔話をするかと言えば遊びに来た孫娘達と庭で線香花火で楽しんで、独りで想像の浮遊船の旅に出てしまったのだ。

 きっと、娘や天使達はやれやれ「爺さんは花火が散るのと同じくらいのボケの旅」がまた始まった、とニコニコしているのだ。


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