進化し続けている反ワクチン~ワクチンは百害あって一利なし!?~
今回解説するのは、これまた根深い反科学陰謀論を展開している反ワクチンで、歴史上では天然痘患者の膿や瘡蓋を健康な人に摂取させて免疫を付ける人痘法に対して1722年にイギリスの神学者マッセイが「接種という危険で罪深い行為」なる説教にて「病気は罪を罰する為神が送ったので天然痘を予防するのは悪魔の所業!」と論じている。
他にもジュンナーが行った世界初の近代的予防接種でも反対派から「牛痘を接種すると牛になる(ジュンナーも牛痘だと思っていたが、実際はウマ由来のウイルスだった)」というデマが広がった。
それは21世紀になっても変わらないどころか寧ろ悪化しており、中には「ウイルスは存在しない」と言う現代医療を真っ向から否定する一派がでた程だ。
ここからはそんな反ワクチン陰謀論者の奇妙な主張を見てみよう。
反ワクチン陰謀論① ~ワクチンは自閉症を発生させる!?~
世界中で代表的な反ワクチン陰謀論と言えば「自閉症になる」というデマで、この陰謀論の起源はイギリス出身の元医師アンドリュー・ウェイクフィールドなる人物が1998年に麻疹・風疹・おたふく風邪に効果がある三種混合ワクチンであるMMR(マガジンミステリー調査班の略称ではない)が自閉症と関係性があると指摘する論文をランセットに発表した事だ。
だが、この論文は証拠の捏造や改竄がなされており、依頼人のワクチン訴訟弁護士から約43.5万ポンドの金銭を受託及び自らの単独型麻疹ワクチンの特許の出願が目的で、更には自閉症の原因とされた腸炎に罹った12人の子どもの患者のうち数人は依頼人の子どもだった。
2004年にはサンデー・タイムズによって上記の他、倫理的な承認を得ることなく必要の無い腰椎穿刺や大腸内視鏡検査などの侵襲的検査(1人の子供を3人で押さえつけることもあった)を児童に行った事、息子の誕生日会に参加した児童に現金を渡し血液サンプルを受け取った事等で医師という立場を乱用し信頼を損ね、責任ある顧問医師としての責務を果たさなかったこと等が違反行為と認定した。
そして、翌月ランセットが論文を撤回、医事委員会はイギリスでの医師免許も剥奪した。
ウェイクフィールド氏は2001年からアメリカに移住し、同志から「医学と政府に立ち向かい圧力に潰された殉教者」として英雄視されている。2016年にはプロパガンダ映画である「MMRワクチン告発」を監修し、トライベッカ映画祭で放映予定だったが、放映中止になった。
日本でも2018年に公開予定だったが、劇中の日本でも飛躍的に自閉症が増えている証拠として使われていた研究の結論が「1993年からMMRワクチンの接種が中止されているが、接種の中止後も自閉症の発症率が増加しているため、自閉症とMMRワクチンは関係がない」と真逆だった事、反対運動の写真の一部に「すべての子どもが等しくワクチン接種を受けられるように求めるパレード」のものが使われていたことから公開中止となった。
反ワクチン陰謀論② ~HPVワクチンを接種してはいけない!?~
日本の反ワクチン陰謀論者と言えばHPVワクチン陰謀論で、HPVは性行為や皮膚接触で感染を行い、低リスク群だと疣を発生させる程度だが、高リスク群になると尖圭コンジローマ・子宮頸癌・肛門癌・喉頭癌・陰茎癌等の重篤な性病を発生させる。
残念ながら日本では子宮頸癌に罹患及び死亡する確率が先進国の中で非常に高く、唯一の増産国となり、その結果ロンドンの博物館ウェルカムコレクションにて「なぜ日本ではHPVワクチンが接種ができなくなったのか」を解説するコーナーができた程だった。
元々日本では他の国と同じようにHPVワクチン接種が行われいた。しかし、全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会会長の池田敏恵日野市議員と朝日新聞記者の斎藤智子氏を始めとした薬害記者が「HPVワクチン接種の激痛や失神や記憶障害等の副反応で女子中学生が苦しんでいる!」という言説を拡散したことで世論が変化する。
池田敏江議員は筋金入りの反ワクチン陰謀論者として知られており、過去Xにて「(HPVワクチンの接種に対して)公衆衛生の名に恥じる!子宮頸癌に罹ったほうがまだ人間らしい暮らしが送れる!」なるトンデモ発言をポストしたことで知られている。
結果、日本ではHPVワクチンは希望者のみ接種可能となってしまい、子宮頸癌に羅患する確率及び死者の数が跳ね上がった。しかし、2015年1月に被害者連絡会愛知支部が名古屋市に対して調査を要望し、それを受けて俗に言う名古屋スタディが行われた。
1994年4月2日~2001年4月1日生まれの7学年全員に患者会から提示された24症状全てが載ったアンケート調査票を郵送して、それをハガキで回答してもらう形で行い、約3万人のデータを解析した結果、24症状はワクチンを接種した人と接種していない人で差は見られないという結論が得られた。
しかし、それに対して薬害関係の組織は「そんなもの認めない!厚労省や製薬会社等ワクチン接種側に都合の良い情報だ!」と頑なに態度を改めなかった。
そしてワクチンを副作用を受けたと訴える15~22歳の女性63人が国と製薬会社2社に対して損害賠償を求め、東京・名古屋・大阪・福岡の4地裁に一斉提訴する事態となってしまった。
こうして冬の時代が続いたHPVワクチン接種だが、最近になって政府による積極的な推奨が再開した。理由としては欧米やオーストラリア等でHPVワクチン接種によって減っていること、それまで薬害と思われていた事例が偽発作ではないかと疑われるようになったことも大きいだろう。
例えばデンマークではHPVワクチンによって被害を受けた少女を取り上げた番組が切っ掛けで接種量が減少したが、政府が専門家団体や民間と組んだり、SNSで前向きな対話を行う等をした結果、摂取量が無事回復することができた。
反ワクチン陰謀論③ ~mRNAワクチンは危険!?~
さて、お次は現在世界中でトレンドとなったのは新型コロナワクチンに対する陰謀論だ。
例えばワクチンを接種すると人間の免疫機能が破壊されターボ癌になるという陰謀論がXにてトレンドとなったが、アメリカ国立がん研究所によると「コロナワクチンが癌の原因となったり再発や進行につながることを示唆するデータはない」と否定されている。
元々はマウス14匹にmRNAワクチンを投与し、1匹が悪性リンパ腫で死亡したという症例報告を反ワクチン陰謀論者が都合よく解釈したのがオチだったようだ。
他にもmrnaワクチンの開発者であるペンシルベニア大学のカタリン・カリコ特任教授とドリュー・ワイスマン教授がノーベル生理学・医学賞に受賞した際に反ワクチン陰謀論者が徹底的にSNSや動画サイト内で各々が受賞者やワクチンに対してネガティブキャンペーンを行った。
だが、一部の反ワクチン陰謀論者はノーベル生理学・医学賞受賞者を自らの陰謀論を正しいとする為の権威付けに利用しており、HIVウイルスを発見したリック・モンタニエ氏という学者がmRNAワクチンに対する警鐘を鳴らしていたが、この人物は水の記憶やホメオパシーと言った疑似科学に傾倒していた人物だった。
更には新型コロナウイルスワクチンに反対するデモを行う事例が何度も出ている。
最近だと横浜ベイスターズの親会社DeNAが球場施設を利用して希望者にワクチン接種を実施しようとしたら、「死のスタジアム」「集団安楽死だ」と主張する海外反ワクチンのポストを立憲民主党の原口議員がリポストしたことが切っ掛けで抗議デモを行なわれた。
ピーク時は14人程で、通行の邪魔になっていたこともあってか来場者に旗を払いのけられた事に対して旗を何本も抱えていた大柄な中年男が激怒し、接種会場内に入ろうとして警備員と仲間に止められた。
反ワクチン陰謀論④ ~狂犬病ワクチンは必要ない!?~
4つめは狂犬病ワクチンに関してで、2024年2月7日に群馬県伊勢崎市にて児童を含めて12人及びトイプードルが四国犬に噛まれる事件が発生した。しかもその犬は本来義務である筈の狂犬病ワクチンを受けていなかったのだ。
狂犬病は犬や猫等の家畜は勿論、チスイコウモリやアライグマ等の野生動物も保菌するウイルスで、発症するとほぼ100%の確立で死亡する。
具体的な症状は、最初のうちは発熱・頭痛・悪寒といった風邪の様な症状だが、次第に興奮・錯乱・幻覚といった症状が出てくる。やがて口から涎がズルズルと出たり、感覚器の刺激が強くなる影響からか水や風や音等を恐れる等の特徴的な症状出てきて、最終的には全身の筋肉が麻痺して死亡する。
これらの症状から吸血鬼や人狼のモデルの1つではないかとも言われている。対策としては、事前にワクチンを接種するか、狂犬病はインフルエンザと同じ潜伏期間のあるウイルスなので発症前にワクチン接種すれば収まる。
しかし、反ワクチン陰謀論者は「狂犬病ワクチンは利権だ!」と言い始め、「#日本は狂犬病清浄国」やら「#狂犬病ウイルスが日本に持ち込まれる確率は36万年に1度」等のプロパガンダ的ハッシュタグを流していた。
また、反対論に対して「だったらてめえは一生その思考で生きていけよ。他人に押し付けてくるな。暇人。」等と罵るポストも確認された。
確かに今のところ犬や猫では確認されていないが、アライグマ等の野生動物は狂犬病ウイルスが体内に存在する可能性があり、それがいつ人や家畜に感染するかは分からない。
また、同じく狂犬病洗浄国であるオーストリアを当てはめる陰謀論者もいるが、オーストリアと日本では違う。それは狂犬病の経験の差で、オーストリアでは一度も狂犬病が発生していないが、日本では明治から昭和にかけて狂犬病に感染した犬に噛まれて多くの人が亡くなったからだ。
それを重く見た政府が1950年に「狂犬病予防法」を施工し、犬の登録・予防接種・野良犬の抑留を徹底する事でどうにか7年で撲滅することができた。
更に、日本と同じ島国である台湾が2013年7月25日に農林水産大臣が指定する狂犬病の清浄国・地域から除外された。それまでは、1961年から52年間にわたって清浄国だったが、2013年6月にイタチアナグマと呼ばれる中国南部から東南アジアに生息しているイタチ科の野生動物が狂犬病に感染している事が発覚した。
しかも、それは次第にジャコウネズミやハクビシンや犬にも感染することがわかった。遺伝子構造を検査した結果、2013年頃に海外から来たのではなく、100年以上前から持っていたようだ。
恐ろしい事に狂犬病に対して「生小豆を食べれば治る」と民間療法を垂れ流すポストを垂れ流している人物がいた。当たり前だが、そんな事では治るわけがない。
どうも実際に生小豆を使った実験を行った人がいて、内容としては赤小豆と白小豆を用いて 培養細胞レベルでの狂犬病ウイルスの複製に及ぼす影響を比較検討したもので、一応抗ウイルス作用のある物質が発見された。
だが、強い活性を示す耐熱性因子の実体については今後の検討課題のようだ。それから研究が続いていない為効果がなかったのだろう。
他にも、「マレーシアで野良犬に噛まれて狂犬病になったが高熱ですんだ」と自称するポストをする人も出たが、恐らく嘘だろう。何故なら世界において僅かな生存例を除けば発症のタイミングしたらほぼ100%の確立で亡くなっている人が大半だからだ。
また、あれだけ自慢げに語っていたポストを突如として消したのと、その後「アメリカで仕事をしているのでこれ以降は返信しない」と言って逃げたらしい。仮にこのポストが本当なら何処かの医療機関に保護されて抗体やワクチンの研究されているに違いない。
僅かな事例に関しても例えば2004年アメリカミルウォーキー州の事例では、麻酔薬ケタミンの静脈注射で昏睡状態にしてから抗ウイルス薬のアマンタジン・鎮静剤を与え、途中からは抗ウイルス剤リバビリンも投与し7日間昏睡状態が続いた後、血液と髄液について狂犬病ウイルス抗体を調べたところ著しい上昇が認められた。
それから麻酔薬の量を徐々に減らしていき、脳波の所見が改善し始め瞳孔が光に反応するようになり、麻酔薬を止めてから3日目には下肢の腱反射が出現し、徐々に回復して1ヶ月後には集中治療室から一般病棟に移り2005年1月1日に車いすで退院した。その為高熱で済むなどあからさまなデマなのだ。
反ワクチン陰謀論⑤ ~ウイルスは存在しない!?~
そんな感じでワクチンの自閉症やHPVワクチンや新型コロナウイルスワクチンの「薬害」や狂犬病ウイルスワクチンの必要性を訴え、国会議事堂や公園や厚生労働省で大規模なデモ行進を行っている反ワクチン陰謀論者達。
だが、最後に紹介するのはそれ以上にぶっとんだ存在で、それはウイルスの存在その物すら否定する陰謀論者についだ。曰く「金と暴力と権威を使って未だに利用しているロックフェラー西洋医学の嘘」だそうだ。後述するが、彼らはどうやら西洋医学そのものを否定しているようだ。
その代表例はドーン・レスター氏とデビット・パーカー氏で、彼らは会計と電子工学がバックグラウンドの反ワクチン陰謀論者だ。2019年に彼らは「本当は何があなたを病気にするのか?」と言う書籍を出版した。
この書籍はアンドリュー・カウフマン氏と言う別の反ワクチン陰謀論者が絶賛し多く反ワクチン陰謀論を誕生させた。
内容としては西洋医学の否定と「病気の本当の原因」の解説を中心として、地球温暖化懐疑論やSDGsの否定やグローバル社会の批判も含まれている。
例えば第1章「病気の処方薬」では、インドの伝統医学であるアーユルヴェーダや中国医学と言った薬効効果のある植物を中心に使用する医学、ヒポクラテスの四体液説や瀉血等を称賛する一方で、ルネサンス期の錬金術師にして医師のパラケルススが梅毒に水銀を使用した事に対して批判したり、16世紀~17世紀にかけて医療ルネサンスと科学革命に対して「医療の分野でエリート主義的態度を助長した」と的外れの発言を行った。
それがよりダメな方へ発展するのが第3章「病原菌理論の虚偽」で、感染症は病原体が起こすと言う現代医療の当たり前の行為を真っ向から否定する。
まず彼らはアメリカ国立衛生研究所のHPの発言を自らの思想に都合よく解釈したり、パスツールと同年代の懐疑論を展開する学者の発言を引用する等して病原菌の存在を否定していた。
しかも薬剤耐性黄色ブドウ球菌を「皮膚に常在している細菌だから安全」と日和見菌の存在の無視や電子顕微鏡の否定等頭が痛くなる発言のオンパレードだった。
そして第4章「感染症神話」で悍ましい発言が出てくる。それは「天然痘は存在せず、虐殺、貧困、飢餓、暴力、過酷な労働環境、毒物への曝露だ!」と言う医学どころか歴史すら否定した発言だった。
この様な頓珍漢な発言が出て来たのは、先住民は完全に滅びなかった、天然痘を持ち込んだ船員はなぜ誰も発症しなかったのかを都合よく解釈した結果のようだ。
結論を言えばアメリカ先住民の場合は免疫が出来たかウイルス事態が弱まったかで、船員の場合は長い間天然痘の被害を受けた結果獲得免疫を得たからだろう。
最後に10章「病気の本質と原因」にて代替医療を推しており、特に、19世紀に開発された「ナチュラルハイジーン」を好意的なようだ。
曰く「病気は体を攻撃する現象ではなく、毒と戦っている現象で、体が適切に機能する能力の崩壊を表している。」「症状は有害物質の存在に対する体の反応の現れ。」「体の機能を破壊するものは、全て健康に有害な影響を与える。」「毒素を排出し、損傷を修復することで、体は自然な健康状態に戻る。」ことを掲げているようだ。
また嘔吐と下痢も重要視しており、「ナチュラルハイジーン」という本の著者ハーバート・シェルトン曰く「消化器系に有害物質が存在することに対する体の反応と、それを排出する努力」だそうだ。
本当はもっと取り上げようと思ったが、余り長すぎると作る側も見る側も疲れる為、この書籍に好意的な考えを持つ方のブログ記事のURLを載せた。このブログ主は幼少の頃からカジンダ症に苦しんでおり、その過程で反ワクチン陰謀論やオーガニック信仰にどっぷりはまったようだ。
例えば「健康にいい油と悪い油」や「精製塩が体に悪い」等前回話した様なマクロビオティックのテンプレネタ以外に、ベニテングダケのマイクロドーズなる明らかに一歩間違えたら中毒患者が出るだろう危険行為まで様々な記事が掲載していた。
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