リカバリーを目指す認知療法で大切な「適応モード」と「アスピレーション」
この記事では、「リカバリーを目指す認知療法で大切な考え方」を解説していきます。
通常の認知療法と異なり、リカバリーを目指す認知療法では、治療よりも症状の背景にある「患者さんの思い」に焦点をあてることは前回の記事で解説しました。そのために大切な概念として「適応モード」というものがあります。
「適応モード」になることが重要
日常に〇〇モードという用語を使うことがあるかと思います。仕事モードとか、お休みモードとか。
リカバリーを目指す認知療法では、「適応モード」というものが非常に重要視されます。ここでいう適応モードとは、その人が最高の状態にある時、あるいは最も自分らしく感じている時です。
適応モードに入ると、患者さんは客観的に現実をとらえ、事実にもとづいた考え方をすることができます。そして、合理的に適切に判断し、健康的な行動をとる能力が高まります。自己を適切に評価し、自己肯定感が向上します。
はやい話、「自分や環境に対するネガティブな思い込みをしなくなる状態」になるのです。うつ病や、統合失調症、双極性障害などの心の病気では、ネガティブな思い込みに悩みがちで、冷静で客観的な判断というものができなくなります。この思い込みが修正されれば、行動も修正されます。そして、自己肯定感が高まります。
適応モードになるには
治療を受けるだけではダメ
最高の状態や最も自分らしいと感じることができるのは、1人以上の他者とつながりを持ち、互いにとって実りある活動に参加している時に生じる、とされています。まずは、周囲の人と関わることが前提となるのです。
ただし、ここで気をつける必要があるのは、単純に関わるだけではダメだということです。適応モードになっていない状態の代表が「患者モード」です。患者モードでは、その人は治療を受ける側の受け身の姿勢となります。治療という言葉には、マイナスをゼロに近づけるニュアンスがあります。
しかし、最高の状態や最も自分らしく感じている時というのは、マイナスがゼロになるだけではなく、「プラス」の状態です。患者さんとして受け身で治療されるだけでは、その人らしくはなれません。
真の適応モードになるための条件とは?
1人以上の他者とつながりを持ち、互いにとって実りある活動に参加している
患者さんがプラスの状態になれる
これらを満たすには、その他者(周囲の人やセラピストなど)が患者さんに寄り添って、患者さんのポジティブな状態や時間を共有することから始めます。
個人の価値観、未来への希望
「アスピレーション」
ここで重要なのはその人個人の価値観と、未来への希望です。
その人はどんなことに価値があると思うのか。そして、病気の治療ではなく、病気がよくなったらどうなりたいか。その人の未来にある希望は何なのか。
患者さんの価値観や未来への希望のことを「アスピレーション」と呼びます。アスピレーションは、患者さんがプラスの状態(ポジティブな状態)でこそ、患者さんは思い描いたり、人に伝えることができます。アスピレーションを引き出し、患者さんが自分で気がついたり、周囲に伝えることを、リカバリーを目指す認知療法では非常に重要視しています。
たとえば、「学校や職場に復帰する」はアスピレーションでしょうか?
通常の治療の目標としては重要ではありますが、これはアスピレーションにはなりません。
そうではなく、たとえば「学校で保健室の先生とまた楽しく話す」や「仕事でお客さんにありがとうと言われる」といったことであればアスピレーションといえます。
アスピレーションを具体的に現実にするためのアスピレーションで描いた希望や価値観、目標に近づくための方法として「リカバリーマップ」というものがあります。リカバリーマップについての詳細は、次の記事で!