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直美について、その①。否定的立場からの見解。
このコラム筆者は、初期研修修了直後に美容医療へ転身する若い医師たちの増加傾向に対して批判的・懸念的な立場をとっている。単にその選択肢を「けしからん」と断じるというよりは、医師が本来持つべき医療者としての在り方や誇りが、十分に形成されないまま「手軽な高収入」と「ワークライフバランス」を理由に「美容医療(直美)」へ流れてしまう風潮を問題視している。その背景には以下のような考え方や問題提起が読み取れる。
1. 「未熟なままの独立」を危惧:
著者は、わずか2年間の初期研修のみで本格的な臨床経験や熟練した技術を身につけずに美容医療へ進むことにより、結果的に施術後の合併症を自院で十分に対処できないケースが増え、一般医療機関がその尻拭いを迫られる現状に疑問を呈している。
2. 社会的責任・公共性の希薄化への懸念:
美容医療が高収入・自由度の高さから若手にとって魅力的である一方、もともと公的資金も投入されて育てられた医師が即座に保険診療領域を離れ、(ときに必要なところで必要とされる医師数を確保できない)従来医療現場に穴を開けることへの問題意識がある。また、そうした流れが“当然”と見る世間の理解や同情も、この傾向を助長しているとみている。
3. 師弟関係と「医師としての本質」教育の欠如:
筆者が特に強調するのは「師弟関係」の重要性である。尊敬できる先輩医師に直接師事し、臨床技術のみならず、「医師としての在り方」「人として患者に向き合う意味」を肌で学ぶ過程が、医師のアイデンティティと誇りを醸成する。そうした関係性がないまま、研修終了直後に美容医療へ飛び込む風潮を、筆者は「医師としての魂の涵養不在」として問題視している。
4. 批判にとどまらず改善策を模索:
筆者はただ現状を嘆くのではなく、過酷な労働環境の是正や、医局制度(旧来的な上下関係がある組織)を単なる古い制度ではなく人材育成の核と捉え直し、「人を通じてしか学べないこと」を再評価する必要性を示している。また、若手が美容医療へ流れる前に、真に指導力ある恩師との出会いや成長の機会があれば、その選択が変わる可能性をも示唆している。
総じて、筆者は「直美」への若手医師の大量流入そのものを嘆くというより、「医師としての倫理観、臨床力、人間性が未成熟なまま商業化された医療分野へ移ること」への危惧、そして「真に価値ある医療を伝える場(師弟関係)」の喪失を問題視するスタンスをとっている。
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