腸管アメーバ症（アメーバ赤痢）の現状と未来：国内増加の背景と新たな治療アプローチ

要旨

腸管アメーバ症は、かつて主に熱帯・亜熱帯地域に限定された輸入感染症と認識されていましたが、近年日本国内においても症例が増加し、特に高齢者や免疫抑制状態の患者において重症化のリスクが高まっています。本稿では、腸管アメーバ症の疫学的変化を概観し、病態生理や臨床像について詳細に解説します。また、診断方法としての最新の内視鏡技術や画像検査の役割、そして治療における従来の薬剤に加え、シンバイオティクスやSaccharomyces boulardiiの併用といった新しい治療戦略についても触れます。特に、腎機能低下を伴う患者への治療設計の工夫や、腸内環境改善の重要性についても論じ、今後の治療方針や公衆衛生対策の方向性を示唆します。さらに、治療効果の判定における線維性大腸内視鏡検査の意義を探り、腸管外合併症への対応策についても考察します。本稿を通じて、腸管アメーバ症の包括的な理解と、今後の研究および臨床対応に向けた示唆を提供します。