元には戻れない
一度被害に遭ってしまうと、もうそれまでの生活にも、それまでの私にも戻れない。
「この人は私に酷いことをしない」と思っていても、いつそれが裏切られるような事態になるかわからない。信用しきれない。距離を詰められるのが怖い。
私は男性が苦手だ。
たまたま、私の周りには「嫌だ」「やめて」といっても聞いてくれない男が複数人いて、その人たちの影響で男性には絶対勝てないのだとわからされた。私がどんなに必死で抵抗したところで力では敵わないし、抵抗しようにも「殴られたらどうしよう」「殺されたらどうしよう」と思うと恐怖に凍りついて動けなくなる。その反応は決して同意や許容ではないのだが、力の強い側に立っている者はそれに気づかない。
痴漢は気持ち悪いし、ナンパも怖い。たとえ道を尋ねられただけだとしても、男性に話しかけられたという時点で警戒レベルが跳ね上がる。男性が怖い。何かあったら勝てない。強い拒否を示せないし、かといって笑ってやり過ごすこともできない。板挟みになる。
世の中の毒気のない男性には本当に申し訳ないのだが、今までの経験から、男性と関わると碌なことがないという方程式が成り立ってしまっている。自分の身を守るには相手にしないこと。関わらないこと。関わってこられても、無難な返答をして立ち去ること。私にできることはこれくらいしかない。選択肢がまずない。
みんながみんな、悪い人じゃなかった。友人の中には私を性的対象とせず対等に接してくれる子もいる。全員がそうじゃないということは、わかっている。頭では。ただ心が反射的に拒否反応を示すのでどうしようもない。私にはどうすることもできない。
もう、身内、友人、仕事関係者以外の男性とは関わりたくない。仕事関係者の男性でさえ、プライベートでは一切関わりたくない。
こうなってしまったことが悲しい。
私はどう頑張っても普通に生きられない。