塞王の楯 電動ハンマー 2024夏ドラマ
ブロック塀の破砕や庭石の撤去など、個人のお客様のご依頼の中では電動ハンマー等のはつり機・削岩機が圧倒的に多いかもしれません。小型の100Vタイプなら女性の方でも時間を掛ければ安全に作業出来るかと思います。
削岩機の話で始めたわけは今回紹介する小説「塞王の楯」に絡めてです。
戦国時代の石垣職人の話で今村翔吾氏が直木賞を獲った長編歴史小説です。
もうこの紹介文だけで普段小説を読まない人は死ぬまで手にしないであろう雰囲気をかもし出しています。かく言う私も約2年前にさわりだけ読んで寝かしていました。その間他の現代小説も彼の歴史小説も読んでいましたが、この作品は手に取りませんでした。どうしても読みたい欲求が最高潮の状態で読みたかったのです。
何を言ってるのか分からないかと思います。私のまわりには3人ほど呼吸をするかの如く小説を読む人がいます。
私の読書能力では彼らのようにはいかないのが現実です。
先日書店で角田光代現代語訳の「源氏物語」文庫版が並んでいました。
彼女の小説はトップクラスに好きなのでこれを機会にと思い冒頭の数ページをめくりましたが全くダメでした。やはり歴史ものは読む意気込みが必要ですし、戦国以外はその気持ちに着火させることがなかなか難しいです。
塞王の楯は実はハードカバーで持っているのにもかかわらず事情がいくつかありましてなかなか読書欲に火が付きませんでした。
物語が始まるエピソードゼロの序章がまたまた強烈なのでここを引きずると離脱しかねません。
「だまされたと思って第一章終わりまで読んでほしいです。」
これは面白くなるかもというスイッチが入るはずです。
今回文庫化のタイミングで素晴らしい着火剤を目にすることになりました。それがこちらです。
私は彼女とは逆で将来再読しようと思うくらい良かった作品は文庫で残す派です。私が小説を紹介するのはもちろん他の人にも感動を共有してほしいからなのですが、それでも読むか読まないかの境界線は超えられないと考えています。そのハードルの石垣を壊す最強の矛は強烈な読書体験しかないと思っています。誰かのその壁を崩すきっかけになれればと考えています。
[ 歴史小説に抵抗がある人 ]
かなり読みやすくエンタメ寄りです。史実に基づいてはいますが、主人公もライバルも架空の人物です。石垣職人や鉄砲職人の力が戦の勝敗や歴史に大きく影響していたことがよく分かります。
◇主人公は石垣(楯)を強化し誰も落とせない城による平和を目指します。
対するライバルはいわゆる核の傘理論。
◇お互いに簡単に殺せる武器(矛)を持てば逆に抑止力になり平和が訪れると信じています。
しかし現代を生きる我々はそれが叶っていないことを知っています。
そうなると主人公の理屈を応援したいところですが結局は城主や使い手次第。関ヶ原の戦いの前哨戦。天下分け目の戦いの勝敗に大きく影響した大津城の戦い。楯と矛の力のバランスが異なっていれば豊臣の天下が続いていたかもしれません。
[ 戦国時代が好きな人 ]
主人公が穴太(アノウ)衆の石垣職人で、対峙する敵も国友衆や甲賀衆など近江の職人集団の話がメインです。
しかし切れ者の蒲生氏郷、立花宗茂は登場します。
そして話の主戦場になる大津城城主の京極高次。戦国の話になると凡庸なキャラとして描かれがちで、信長の野望でもいつも数値は低いです(笑)。
関ヶ原前の状況では弟を徳川につかせたので、高次が西軍につけばどちらに転んでも真田家の犬伏の別れと同じく京極家は安泰な状況でした。
しかし彼は大谷吉継の後を追い北陸から関ヶ原に向かう途中で、塩津港から琵琶湖を使い大津城に戻り籠城を宣言します。
単なるお人よしに思われた凡将が、東軍についた真の理由に家臣や穴太衆もそして領民も涙し奮起します。
高次とその正室である初、この夫婦に心を撃ち抜かれますのでご覚悟を。
何よりこの小説の面白さの核になっているのは石垣の奥深さです。
◇自然石だけで組み上げた昔ながらの野面(ノズラ)積みがなぜ最も強いのか。
◇城の場所と石垣の関係。
◇穴太衆が石を切り出す、運ぶ、積むの3チームに分かれているが、積み上げる積方だけはすべての職人が3年修行しなければならないのはなぜか。
戦国時代が終わる直前の極限まで進化した石垣と鉄砲の最終決戦
・・・そしてその矛盾。
現代を生きる我々が目にしている、核兵器を持ってもなくならない戦争。
その理由が分かるかもしれません。
個人的に行き来の多かった大津市とのつながりも来年以降は少なくなる予定です。それは娘が大津にいたからです。実はハードカバー版は今村翔吾氏のサイン会で直々に娘の名前とメッセージを書いて頂いたものです。
近くにある城の戦いの話なら読むだろうと思っていたのがあまかったです。
まだ私の手元で飾られています。ハードカバーで、ましてや思い入れのある作家のサイン本をぞんざいには扱えない性分なので私はそれを読めず、図書館で借りてくる始末。
しかしなかなか気持ちが高ぶらなかったので今回文庫版でやっと読めたという流れです。でももっと早く読めば良かったです。今の映像技術ならとんでもない映画が作れそうな気がします。
余談ですが、呼吸をするかの如く小説を読む3人の親戚の内、唯一私と血のつながった今は亡き母方の祖父は福井県小浜市のお寺で眠っています。
この場所は元々京極高次の牌所として建立されましたが高次と初が晩年を過ごした場所でもあります。調べてみますと若狭へ転封後小浜城を築いた場所の地名が祖父の苗字と同じでした。祖父の故郷へと結びつくこの傑作小説の感動を共有できなかったのが悔しいところです。生きてたら今年でちょうど100歳でした。
それにしても塞王も成瀬も大津にいたら他の地域の人よりも感動できるはずなのに、拒み続ける娘にはなんとか読ませたいところです。ひいじいちゃんの墓参りの場所に住んでた城主が登場するといっても絶対読まないのは目に見えていますが・・・。社会人になる前に彼女の城壁は崩せるでしょうか。
2024春ドラマ終わりました。「アンメット」は抒情的に締めくくられました。「アンチヒーロー」と比べてしまうと少しもの足りなかった印象ですが面白かったです。
問題作、いや問題定義作「燕は戻ってこない」はまだ録画した残り3話ほどを見ていません。これも気持ちを整えてからまとめて観ます。
夏ドラマは3つ。初回「海のはじまり」はsilentと同じく悲しみの目黒蓮に持っていかれました。「新宿野戦病院」は現行の朝ドラ俳優出過ぎです。クドカンのギリギリつっこめない脚本の妙・・・塚地は女性ですよね。
「ブラックペアン」はシーズン1で目立った趣里が続投で期待大なところ。初回は一瞬だけしか出ませんでした。