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素晴らしい経験の先に待っていた地獄の話。(汚い話になったので可愛い猫の写真で中和してください)(エッセイ)

先日、保育園の運動会の撮影に行った。

写真スタジオの業務委託として何人かのカメラマンさんと一緒に撮影へ。

 初めての経験であったので色々と教えてもらいながら、でも保育士をしているので保育園で子どもをどう撮るかは熟知している。自分のこれまでの経験とこれまで撮影してきた方々の助言を上手いこと組み合わせて初回にしてはちゃんとしたものを撮れたと実感した。(業務でのことなので写真は掲載することができません)

 それはいいのです。自分の中でも「多分、撮れるよな・・・」と漠然とした自信のようなものがあっただから。

 そこからが地獄の始まりだった。

保育園の運動会は午前中で終わり、午後からはみなさんと軽く打ち上げで食事に行く。そこでカメラの話をしたり、仕事の話をしたりして大いに勉強になった。これまで1人で写真と向き合ってきた人間には同じ分量の知識を持っている方と意見交換できるのはとても楽しかった。

 違和感を感じたのはその時。

「ドリンクバーで飲み物とってきます」
と言って席を立とうとした時、両太ももに激しい痛みを覚えた。

そうか、筋肉痛。

 確かに運動会は3時間程度、子どもは小さい。身長が低い被写体を撮ろうとすると必然的にしゃがみ片膝を地面につける必要がある。

保育士をしている身にとっては『子どもと目線を合わせる』と言うのは基本中の基本。写真を撮る時もそう。

 運動会は3時間程度。その中で子どもたちは運動場で様々な活動をする。踊ることもあれば走ることもある。玉入れもすれば、サーキット遊びの延長の競技もある。

 僕は意識外でその様々な競技において移動するために立ち、撮影するためにしゃがみ、また移動するために立ち、撮影するためにしゃがみ、立ち、しゃがみ・・・

と想像を絶するほどのスクワット運動をしていたのだ。

 運動会中はアドレナリンが出ていたのか意識は無かったが、食事に場面を移すことで太ももの悲鳴を聞いた。

 打ち上げが終わり帰宅。悲鳴を上げ続けている太ももで車外に出るのは辛い。

一度足を完全に外に出し、掴まれるところを探し、一呼吸で覚悟を決めて立ち上がる。

激痛が走る。

 僕の部屋は3階にあるそう階段だ。引っ越すために部屋を選んでいた際はエレベーターは付いていないが眺めが良い3階は素敵だなと思い選択した。その選択が今恨めしく思う。

足が上がらない。上げるたびに両太ももから悲鳴が聞こえる。

普段手すりを使うことはなかった。
定期的に掃除はしていてくれるが野晒しの手すりはすぐに埃だらけになる。それを触ることに抵抗があるのでこれまで使用してこなかったがもう四の五の言ってられない。

「痛い、汚い、痛い、汚い」

3階までたどり着く。

家に帰る。

洗濯物が乾いていた。
取り込もうとベランダに出ようとする。

「・・・」

 ベランダ手前で立ち止まる。段差だ。これまで全く気にも留めなかった10cm程の段差が今は恐怖なのだ。

 えいや!と出てみるがとてつもなく痛みが走る。

1人ベランダで「うぅ・・」と声を押し殺して呻く。

戻ることも大変だ。10cm程の段差を登るのだ。
試行錯誤しながらベランダの前の壁に手を置き体重を逃しながら両足を部屋の中に入れ、壁を思いきり押すことで反動を利用して部屋の中に入る方法を編み出した。


1番きついのがトイレである。

男の子なら小便は立ってできるのだが大便になると座らなければならない。

 トイレなんて手すりは一つもなく便器がが小さいスペースの真ん中に鎮座しているだけ。
その光景を見ると
「トイレ、オメェ。ふざけんなよ」
と思う。
が、しかし肛門は限界を迎える数分前なのだ、
が、しかしトイレに座るためには太ももの筋肉をフルに使わなければならないのだ。

 肛門の限界と太ももの激痛。両陣営への解決への落とし所をコンマ数秒で思考する。

「ここはもう、痛みを分散させる場所がないから太ももには激痛を走らせてとりあえず大便を出すか?いや、待て、何かまだ上手い方法があるはずだ。どうだ?たとえば立ったままお尻を便器の上に突き出し、空中から投下すると言うのは?・・・いや、リスクが大きすぎる。大便がどういう風に出てくるかわからない以上、狙った場所に落ちるとは限らない。足や、ズボンについたらどうしてくれるんだ!?それこそ致命傷だろう」

「・・・よし、わかった。覚悟を決めよう」

「太もも、我慢してくれ!」

そうして太ももの激痛に耐えながら僕は便座に座るのだった。

もちろん立ち上がるのも激痛が走るので覚悟ができるまで小一時間便座に座っていた。

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