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いつか【短編小説】【ショートショート】
こうして歩いているのはどうしてだろうか。
そう思案してみて私は困ってしまった。
そうだ、佳代が迷子になったうちのタマを探していたから、私も手伝っているんだ。
「タマどこにいる?」
猫に何を言っても無駄か。
全く、佳代はどこをほっつき歩いてるんだ?
「佳代、どこに行ったんだ」
こうして歩いているのはどうしてだろうか
こんな暗がりだったかな、初めて佳代と帰った日は。
お見合いの席でそりゃもう一目惚れというやつで、この人は立派な家内になってくれると思った。
動物園に行って、遅くなって、暗い夜道を2人で歩いたんだ。
この電灯の先が家だと言うので電灯の下で再び会う約束をして別れた。
「佳代、どこに行ったんだ?」
所帯を持ち3人の子どもに恵まれて、3人とも立派に巣立ってくれた。5人だったのが2人になったことで寂しさを感じていた私と佳代の元に居着いた野良猫がタマだった。
「タマ、どこに行ったんだ?」
猫に呼びかけても仕方がない。
佳代は見当たらない。
「佳代。どこに行ったんだ?」
寝たきりの佳代がいた。
「佳代、どこに行ったんだ?」
「なんです?そんな大きな声で」
「あぁそこにいたのか。そんな所に突っ立てないでこっちにおいで」
「すっとんきょうな顔」
「笑わないでおくれよ、心配してたんだぞ」
佳代は口角を上げて丸い顔を更に丸くした。
「大変な日々でしたね。いつも朝から晩までお仕事で」
「あぁそうだったな、あの頃はいつも仕事だった。でもお前が家にいてくれたから安心して働くことができたんだよ」
「そうなんですか?私はちょっと寂しかったですよ、子ども達がいてくれたから紛らわせることができてましたけど」
「そうだったのか。それならそうと言ってくれれば・・・」
「言ったところで何かしてくださいました?」
「う、それを言われると何も言い返せないじゃないか」
「でしょうね。あなたって本当に口下手なんだから」
そう言って佳代は口角を上げて丸い顔を更に丸くした。
「私はずっとお前を探して歩いてたんだ、もうちょっと近くに来てくれないか?」
「・・・そうしたいのですけど」
「なんだ?」
「できないんです」
「なぜだ?」
「私はもう」
佳代、お前の足元にタマがいるじゃないか。お前が探してたタマは見つかったんだなぁ。
佳代はベッドに寝たきりになっている。なんでだろうかさっきよりもはっきりと見える。
「佳代、どうしたんだ?佳代」
「もう、貴方静かにしてください。ようやく会えたんじゃないですか」
「そうかそうか。ようやく会えたなぁ。なぁ佳代。私もそっちに言ってもいいか?」
「それを決めるのは私じゃないわ。貴方の役目よ」
「そうだな」
「もう、行くよ佳代。タマお前は佳代を寂しがらせないために先に逝ったんだな」
「今から逝くよ佳代」