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日常(ショートショート)(超ショート)
「大きいなぁ」
橋を見上げながら僕が感嘆の声を上げた。
「うん・・・」
そう頷く貴方がいる。
「向こう岸までどれくらいあるのかな?」
僕は貴方に尋ねてみる。
「わからないね」
そう貴方は言った。
「渡ってみる?」
「遠いよ」
貴方は文句を言う。
「そんなこと言わないで、行ってみよう」
僕は負けずにそう言った。
「・・・わかった」
僕たちは橋の歩道を歩いた。川に架かった橋だけれどすぐ向こうは海につながっている。海からの横風に煽られながら大きなものに挑戦しようとしている風な状況が僕の冒険心を堪らなく刺激する。
「うわー!凄いね!」
「うん、凄い」
貴方も同意してくれた。貴方はあまり表情を変えることをしない。いつもそうで嬉しさも悲しさも怒りも喜びもあまり表情の変化がない。そんな所が僕は好きだし僕だけは貴方の心をわかっている。
「ねぇ、もしさ」
「え?」
珍しい向こうから話しかけてくるなんて
「もしね、この橋が落ちて使えなくなったらどうするのかな?」
「・・・困るよね、こっちの人も向こうの人も」
「そう、困るんだよ。でも今はこうして渡れている」
「それは・・・国土交通省とかにお礼を言ったほうがいいってこと?」
「ん?それは知らないけど、この橋があることに感謝したい」
「そうだねぇ」
なんて事のない日常がある。
別にドラマチックでもなんでもない日常がある。
でも貴方は色々喋ってくれた。
それだけで僕は嬉しい。