大学生。レポート書けなくて詰んだ。いったん「戦場」から離れて根本的なところからできるようになりませんか?
はじめに
新生活が始まりましたね。
大学に入学した方も多いでしょう。
大学生に早速やってくる壁。それは
「レポート作成」
ではないでしょうか?
「レポートなんて書いたことないから何をすればいいかわからない」
「~を論ぜよ。……は?」
「~を調べよ。……検索しても出てこないよ?」
こうなることが多いのではないでしょうか。
今回はそうなってしまった大学生向けに、理系大学院で投稿論文の作成まで関わった筆者が、なんとか大学の学部レベルのレポートが書ける根本的なスキルが身に付くくらいまでの道筋を書いていきます。
ちなみに私は理系出身なので、理系のレポートの話をしますが、根本的なところは文系と変わらないと思いますので、文系の方も参考にしていただければ幸いです。
できなくて当然
なぜレポートが書けないのでしょう?
それは
「書いたことがないから」
です。
じゃあたくさん書けばいいのか、となりますが、半分正解で半分誤りです。
半分正解というのは「量をこなさないとできるようにならない」からです。
半分誤りなのは「適切な手順を教えられて」「適切な方法で調査する」という経験をたくさんしないと、身に付かないからです。
つぎはぎで学習してはいる
レポート作成。これはそもそも高校までの学校教育のどの部分で扱っているのかというところからお話しします。
文章を書いているのだから「国語」と「小論文」です。
調べているので「課題探求型学習」です。今は総合学習という名前かどうかはわかりませんが、昔は総合学習と言われていました。
小学校の「読書感想文」「自由研究」もこれに連なる学習です。
一応これだけ聞けば
「やってはいるんじゃないか?」
と感じるかもしれません。
レポートとは
「課題を見つけて」
「調べてまとめて」
「考えて」
「結論を書く」
という行動です。
これを上で挙げた学習に当てはめてみます。
1に対しては「課題探求型学習」でのアイディア出しが相当します。
2に関しては「国語」ですかね。資料を読んで理解する必要があるので。「課題探求型学習」もあるかもしれません。
3に関しては「課題探求型学習」ですかね。
4に関しては「課題探求型学習」ですかね。
そして1から4を「国語」の文章を書く力と「小論文」の型と「読書感想文」の思考訓練でまとめる、みたいなことをすればレポートの形になるのではないでしょうか。
でもそもそも真面目にやりましたか?
こう書くと「課題探求型学習」を「国語力」で文章にまとめればよさそうです。
ところで「課題探求型学習」って真面目にやりましたか?
調べる人と、実験する人、何かを調達する人、新聞みたいな紙にまとめる人に分かれますよね。自分は実験か調達に回れるようにじゃんけんで勝つ。みたいなことしてませんでしたか?
そもそも何を課題にする?って時に班の中で誰かが手を上げて意見を言ってもらうのを待っていませんでしたか?
これだと、上の1の段階でレポート作成が崩壊します。
仮に課題探求学習が得意だったとしましょう。
次はそれを
「論理的な文章で表現する」
という段階になります。
ところで「国語」と「小論文」と「読書感想文」って真面目にやりましたか?
私は学生時代文章を書くという行動を全くせずに、英単語の暗記とか、数学の問題集の解答を暗記することばかりやっていました。その方が点数に直結しますから。
小学校の読書感想文も、一年で一回だけこの機会のみ読書をして、「~はすごいと思った」という内容をひたすら薄めて伸ばして文字数を確保して提出していました。国語のテストも、授業で先生が書いた内容を暗記して、同じ問題が期末テストに出たので暗記したことを書いて点数を確保していました。
根本的に「文字を読む」「文字を書く」という訓練をしていなかったですね。だから小論文が不要な大学の試験を受けて合格しました。今は小論文が入試で必須の大学が増えて、ルートは潰されつつありますが。
できなくても高校を卒業できてしまうのです
でも私みたいな高校生って結構いるような気がします。
これがなぜ許されているのかというと、「厳密にやろうとするとできない人が続出するから」です。
文章はたくさん本を読んで、たくさん書かないと書ける力が身につきません。
やり始めて2、3年くらいかかります。
それを中学1年生で進級の条件にしてしまうと、中学3年生まで中学1年生は留年し続けることになります。
だから「答えを暗記できれば」「できたことにする」という状況になります。
小学生から進級の条件にするともっと悲惨です。
小学4年生に論理的な文章が書けることを進級の条件にしてしまうと、中学3年生の年齢まで6年間留年してしまいます。
他の理科や社会や数学の勉強もしなければいけません。国語の文章力養成というのは「読書感想文を課題でやらせました」ということで「やったこと」になるわけです。
つまりまともに文章力を身に着けるには中学生くらいの脳の発達段階で3年くらい適切な方法で鍛える必要があるのですが、これをやっていない学生がほとんどでしょう、という話なのです。
中学生から始める文章力の伸ばし方は次の記事も参考にしていただければ幸いです。
要素を学んだから全体ができるとは限らない
また課題探求型学習と国語を融合させなければなりません。
野球を例に考えてみます。
あなたは野球がうまくなりたいので
「素振り」
と
「ランニング」
と
「守備練習」
をすることになりました。
毎日一生懸命そのメニューをこなしました。
そして「試合練習」を一切せずに大会に出ました。
はたして良い成績が残せるでしょうか?
答えは聞くまでもなく「不可能」となります。
高校までに「分野別の練習」はしているでしょう。
しかしながら、それを組み合わせて「本番形式の練習」をしなければ本番力は身に付きません。
大学で初めて「本番のレポート」を書けと言われても、本番の練習をしていないので、できないのは当然なのです。
まずは目先の単位を修得しようともがくことを中断する
卒業したいだけなら、サークルや部活に大量に顔を出して、その中で自分の学科と同じ先輩か、自分が履修する科目を受講した先輩を見つけて、その先輩に答えを聞けば、勉強のハードルは下がるでしょう。これで単位が取れたというのは有益な情報です。まあ毎年課題は微妙に変わるでしょうけど。
ただしこの記事では「根本的にレポートが書けるようになる」ことを目指すので、そのアプローチをとらない前提で話をします。
レポートが書けない。でも書かなければいけない。だからそれらしい言葉で水増ししたレポートを書いて今を乗り切ろう。
こればかりやっていると根本的なことができるようになりません。
まずはちょっと立ち止まってみましょう。目先の単位に固執すると、次の単位が取れないかもしれませんから。ギリギリ単位が取れたら、ちょっと時間を作ってみてください。
レポートはなぜ書くのか
ここからレポート作成についてようやく話を始めます。
そもそもレポートはなぜ書かされるのでしょう?
大きく次の二つの理由があるでしょう。
分野調査
働くため、卒論を書くためにその思考過程が大事
レポートを書くと、その課題で出題された分野について調べることになります。そうすると授業以外の学習を学生に課すことができます。
するとその分野について講義で説明しきれなかったことを学ばせることができます。
大学は教育機関なので、自分の担当する講義についてたくさん学んでもらったほうが教育機関としての目的を達成することができますね。
だから学習を深めるという意味でレポート課題が出題されます。
次がレポート作成で培われる思考過程が大事という話。
レポート作成というのは
「課題を見つけて」
「調べてまとめて」
「考えて」
「結論を書く」
という作業です。これって働くと当たりまえに必要になるスキルです。
顧客の課題を見つけて、調べて、時に試作や検証実験をして、新商品として出せるか考えて、良さそうだったら販売する。
レポート作成とやっていることはかなり似ています。
卒論も基本的に文量が多い、調査に時間がかかるレポートです。
つまり仕事をするときにも、卒論を書く時にも役立つ、というか前提レベルのスキルがレポート作成ということです。
だから大学でやらせるのです。
書き方わからんから詰んだ
上で書いたようにできなくて当たり前なので、練習しましょう。
卒論前の大学3年生くらいまでに少しずつできるようになればいいのです。
以下ではその書き方を述べていきます。
レポートに出やすい出題方式二つ
厳密にはレポートには色々なバリエーションがあるでしょうけど、ここでは二つの方式を述べていきます。
一つ目が
「~について調べよ」
という方式。
実験結果をまとめるのもこの方式に含めます。
調べればよいので、勉強すればたいてい答えが見つかります。レポートを出題するときに記述形式を説明してもらえる可能性もあるので、よく先生の話を聞きましょう。
勉強の仕方はあとから解説する二つ目の方式のやり方を参考にしてください。
二つ目が
「~について論ぜよ」
という方式。
これが頭を総動員しなければいけない難しい方式。
今回解説するのはこの方式のレポートの書き方です。
論ぜよ系の書き方の流れ
まず「~について論ぜよ」というのはどういうことを期待されているのかというところからお話しします。
これは
「~について、現状の課題は何なのかアイディアを出せ。もちろんその課題が本当に存在することは詳しく解説せよ。そしてそれを解決するにはどうすればよいか考えよ、または実験や調査をして結果を示せ。結果が出た場合は、それがどういう意味を持つか考えて書け」
ということです。
時間がない時は、実験や調査なしに(と言っても統計データくらいは調べましょう)、「こうしたらいいんじゃないか」というアイディアを出すところまでで許される可能性もあります。もちろんそのアイディアが通用するという根拠は調べて書かなければいけませんが。時間が無いならそこまでで打ち切りですね。
課題の見つけ方
色々な方法があるでしょうけど、使うのは主にインターネット検索と図書館です。
Googleなどで出題テーマについて調べると関連するニュースが出てきます。解説サイトなんかも出てくるでしょう。
そういうものを読みます。
だいたい出題テーマが何を言っているのかわかったら、次は大学図書館へ行きます。そして関連する本を借りて読んでみます。
すると出題テーマの基礎知識がわかります。
もし大学に所蔵する本で足りないなら、「本のお取り寄せサービス」を利用してみましょう。他の大学で所蔵する本を借りられるかもしれません。
「Webcat Plus」とかで調べてもいいですね。関連する本がズラッと出てきます。
それだけで課題が見つかればよいのですが、たぶん見つからないので論文を検索します。
論文検索サイトは
「Google Scholar」か「CiNii」が良いでしょう。
「Google Scholar」は全世界の論文が検索できるので、英語の論文も英語で検索すれば出てきます。
「CiNii」は日本の論文が出てきます。「Google Scholar」にも日本語の論文が出てくるので、「Google Scholar」メインでもいいでしょう。
検索するとズラッと論文が出てくるので、アクセスできる論文を閲覧します。
私は大学から離れたので無料論文しか読めませんけど、大学生なら図書館の端末を使えば大学が契約した論文掲載サイトに無料アクセスできたりするので活用しましょう。
学会誌も文献複写サービスとかお取り寄せサービスで読めると思うので、詳しくは大学図書館で聞いてください。
全部理解しようとしない
論文を片っ端から読んでいきます。
そのとき気をつけたいのが
「全部理解しようとしない」
「はじめに」と「結論」を中心に読む。
ということ。
実験方法とかを理解しても結論がレポートに使えなければ時間の無駄です。
「はじめに」にはその研究分野の最近の課題が載っています。
それをたくさん集めれば、たいていの課題は見つかります。
頭の良いその分野の専門家である研究者が知恵を絞って導き出した「課題」です。
素人がブレインストーミングで考える以上の着眼点がたくさんあります。
この辺までやれば課題が見つかるはずです。
また全部理解しようとしないというのも大事。
それについては次の記事で解説しました。
この記事で例としてスマート農業について、その文献がほぼ理解できるのに何年かかるか考えてみましたが、論文一つ理解するのに13年くらいかかるというのが私の考えです。
これでは当然レポートの期限に間に合いません。
必要なところだけ頭に入れれば十分です。
英語論文の調べ方
次に英語論文の調べ方です。
まず翻訳サイトで検索したい単語を翻訳して、それを「Google Scholar」などの英語の文献調査サイトに入力します。理系なら「ScienceDirect」などがいいでしょう。もちろん大学が契約していて無料で読めるならの話ですが。
Google翻訳かDeepLに論文のpdfファイルをアップロードすれば完全ではないにせよ、大体の意味がわかる翻訳が手に入ります。
それでだいたい言っていることがわかるので、使えそうなら原文のpdfの使えそうなところをメインに自分で翻訳します。最初から原文を翻訳して全部理解しようとすると一つ翻訳するのに一か月とかになってしまうので、機械的に翻訳してハズレがかアタリか判定してから英語を読むかどうか判断したほうがいいでしょう。
基本的に研究は海外の事例の方が情報が豊富です。
まあ人口の母数を考えれば当然ですね。
海外論文も視野に調査すると「詰み」になる確率が下がります。
課題が見つかったら
課題が見つかったら、それを調査します。
「~という現象は起きているのか」
なら統計局や各省庁(農業なら農林水産省など)に日本中の統計データが載っています。そういう情報をまとめれば、自分の論点を裏付けることができます。
あるいは課題として採用した「~という現象」に関する論文や書籍を調べても良いでしょう。過去にその現象について調べた論文が見つかれば、それを引用して、自分の着眼点を裏付けることができます。
本に答えが書いてあることもあります。
文献や統計データに資料が見つからないなら、それはあなたしか考えていない課題の可能性があります。
その時はインタビューやアンケート、実験や何らかの製作が必要かもしれません。
ただし、期末レポートで出題されるような内容は、期間も限られていますので、「自分が考えた課題」そのものを変更して、文献調査や統計データで収まる課題に変更したほうがいいでしょう。
時間がかかる調査などは、自分の中に温めておいて、ゼミや卒業研究の時に少し大規模な調査や実験をすればよいのです。
chatGPT4と自分が調べた結果が一致するという現代は
いきなりchatGPT4の話か、となるかもしれませんが、ちょっと重要なのでこの話もします。
現在chatGPT4が利用できるのはMicrosoftの「bing」という検索サイトです。
これで試しに私が上の方法で文献調査した内容を
「~に関する文献を教えて」と質問したところ、ほぼ同じ文献を出力しました。参照データの文献と私が使えるとピックアップした文献が同じだったのです。
chatGPT4の扱いは大学によっては禁止ですが、禁止されていないなら、答えを丸パクリすると不合格でしょうけど、文献調査でアタリをつけるのにかなり使えます。
使用するツールとして使ってもよいのではないでしょうか。もちろん禁止されているかどうかはアナウンスされるでしょうから、確認してから使ってください。ちゃんと中身を読まないとボロが出るので「当たり」の文献はちゃんと読みましょう。
ただし論文作成で本文を代理執筆させたりすると、論文不採用みたいなことになりかねないので、扱いは慎重に行ってください。
今回の記事で提案しているのはあくまで検索機能の一つとしてのAIの活用にとどまります。
最後に調べたことを論理的な文章でまとめる
レポートとは
「課題を見つけて」
「調べてまとめて」
「考えて」
「結論を書く」
という行動だと書きました。
これをもう少し専門的に書くと
「課題発見(はじめに)」
「実験方法・調査方法と実験結果・調査結果」
「考察」
「結論」
となります。
課題発見のところで、「現代は~というものが登場してきて~という現象が起きている、その問題はこうで、これについて明らかにする必要がある」という内容を書きます。
文献調査で色々な文献を見れば、この文章の型がわかると思うので参考にしましょう。
実験方法で、「~の統計データを調べてみた」とか、「~という実験をしてみた」、その結果「~という結果が出た」ということを書きます。
考察で、この結果の妥当性や、明らかになったこと、要するに考えたことを書きます。
結論でこれまでの話をまとめます。自分のレポートの概要を書けば良いです。
あまり文章を書いてこなかった人だと2、3年かかります
筋の通った文章を書くにはそれなりに練習が必要です。
私の経験では、中学生レベルで書く力が止まっている場合、2、3年はかかると思います。
やり方はこちらもご覧ください。
時間はかかりますが、一歩一歩やっていきましょう。
まとめ
今回は大学の新入生向けにレポート課題をどうすれば書けるようになるのかということをお話ししました。
そもそもできなくて当然という話、レポートを書くための情報の調べ方などの話をしました。
レポート課題で詰み状態というのはつらいです。
この記事がそうしたお悩みを少しでも改善できれば幸いです。