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【読書感想】風景は記憶の順にできていく
2013年刊行 254p 著者:椎名誠 ジャンル:エッセイ、旅行
作家、エッセイストとして有名な著者の紀行エッセイ。
以前、旅行に行ったことで旅の良さを再確認し、旅に関する本を読んでみたくなりました。
読むと著者が様々な場所に足を延ばしていることが分かり、どこかへ行ってみたくなるそんな一冊。
あらすじ
著者は、自身の原点となった様々な“街”に再会する旅に出る。浦安、銀座、熱海、浅草、四万十川、石垣島の白保、銚子……。日本各地を巡る旅は、これまでの人生に堆積してきた記憶の断層を掘るかのようで、なつかしい風景に心震わせ、感無量となることもあれば、思いがけず困惑し落胆することもあった。作家の原点となった街やいまだ昭和の空気をまとう町など、現在の風景を入り口に記憶をたどる。
感想
著者の思い出の地を再び取材する形で巡り、自身の記憶と現在の街の移り変わりを記しているのが面白かった。
著者が1944年生まれで、20~30代を過ごした思い出をそれぞれの地で振り返る形式。大体1960~1970年なので、この頃はちょうど高度経済成長期。
日本がすさまじい勢いで発展して変化していった、エネルギーに満ちていた時代である。
そんな時代に若者だった時のエピソードは今の時代では考えられないものが多く、時代の大らかさを感じさせる。
東京から四万十川~石垣島まで幅広いエリアを訪れ、時代の変化により変わっていったもの、変わらないもの、それぞれの良さを確認できる。
この本を読んでいると「変わらないこと」も進化の一つとして肯定的にとらえている。
たしかに流行を取り入れると言えば聞こえはいいが、コロコロと変わってばかりだと安定感が無いし、愛着もわかない。そう考えると昔から変わらないものも絶え間ない努力の上に成り立っているんだと気づかされる。
日本の風景が十年後、二十年後も変わらないでいたらいいな。そんな風にも感じた。