敵と戦いとTRPG

本稿では、TRPGにシナリオに登場する敵(データを持ち戦闘で倒すことを想定されている存在)の分類と、ストーリー上における戦闘シーンの位置付けについて解説する。
ひいてはそれらが、プレイヤー側のロールプレイを如何に引き出せるか?も考察する。

便宜上、『敵』や『戦い』と書いたが。
推理によって犯人を追い詰めるシナリオや、アイドルがライブでファンを魅了するシナリオも、連続した判定でシナリオクリアに必要な障害を突破するという点では同じ構造である。

敵の分類

おおよそ以下の5つに分けられる。①と②、③と④は似たような性質を持つ。
①悪意は無いが迷惑な存在
②悪いことしか出来ない存在
③自ら進んで悪いことをする存在
④仕方なく悪いことをしてしまう存在
⑤対戦相手

①悪意はないが迷惑な存在

野生動物や、いわゆるモンスターなど、意思疎通が不可能な存在。
悪者というよりは純粋に障害である。

敵とのロールプレイ会話(俗に言うレスバ)は期待できないが、PC同士の掛け合いを存分に堪能してもらうには都合が良い。
またGM側の会話負担が少なくてすむ。
古典的なダンジョン探索シナリオなどでは、敵は全てこのタイプでも問題ない。

②悪いことしか出来ない存在

生まれついての悪人や、邪神の類など。意思疎通は可能だが、説得は出来ない。
多くのTRPGにおいて、パブリックエネミーとして設定されている存在。

プレイヤーが心置きなく攻撃でき、またレスバでも言い負かせることを期待されている。
①とは、プレイヤーとGMとの掛け合いを誘発させられるという点で差別化できるが……実は話しても無駄、という点では①と同列でもある。
必ず悪いことをする存在は、天災みたいなものなのだ。

上記の理由から、プレイヤーからのヘイトは存外稼ぎにくいことにも注意。
(あれですよ、ドラクエで大魔王より中間管理職の方がヘイト稼げちゃうアレ)

③自ら進んで悪いことをする存在

損得勘定、愛憎感情、美学、執着、上司の命令……理由はなんでも良いが『わざわざそんなことをしなくてもよいのに』悪事を成す存在。

理由についての問答で、プレイヤー側とのロールプレイを誘発できる。
説得可能なら④のタイプになるので、悪事を成す理由や悪事の内容は、倫理観を外した方が話が締まる。
(とはいえプレイヤーが本気で嫌悪感を示すような内容は控えるべきだが)

なお余談。特に美学で動くタイプにありがちだが。
『わざわざそんなことをしなくてもよいのに』動いた結果、ハードボイルドでカッコいい行動に見えてしまうことがたまにある。
プレイヤーから妙に気に入られた時は、④のタイプに変更するのも一つの手か。

④仕方なく悪いことをしてしまう存在

洗脳されたヒロイン、買収されたライバル、亡国の防人など……PCと戦いたくはないが戦わざるを得ない存在。
言い換えれば説得可能な敵である。
(あくまで説得も可能であって、説得を強制する必要はない)

説得に関するロールプレイを誘発できる。結果的に説得できなくても会話することに意義がある。

パブリックエネミーを絶対に倒さなければならないゲームでは、このタイプの敵をシナリオボスにするとトラブルになる。
途中のイベントで戦わせるか、ボスの取り巻きとして出すのが良い。

⑤対戦相手

文字通り。敵ではあるかもしれないが、別に悪人ではないタイプ。

あらゆるTRPGに登場するわけではないが……例えばアイドルがライブでファンを魅了するゲームなら、ライバルキャラはパブリックエネミーではなく対戦相手である。

そういうシナリオ、そういうパターンもあるのだと、頭の片隅にでもいれておくと良い。

戦いの分類

TRPGに限らず、いわゆるバトル物のストーリーは2つに大別できる。
A:戦いの中で話に決着をつけるパターン
B:既に話の決着はついたので最後に戦うパターン

(前者は無印なのは、後者はなのはA's、って言えば通じるかな?)

A:戦いの中で話に決着をつけるパターン

敵と主人公(TRPGならPC達)との関係性が重要なストーリーにおいて、最後に会話しながら戦うことで話にオチをつけるパターン。

説得するもよし、レスバで言い負かすもよし。
TRPGなら、敵は上記の③か④のタイプが合う。

難点は、『戦闘用データをやりくりしながらロールプレイを考えるのは思考の負担が大きい』こと。
しばしば、ストーリー性とデータ面の両立が難しい、と言われる所以でもある。
負担が大きいと感じたら、Bのパターンへの移行も検討したい。

B:既に話の決着はついたので最後に戦うパターン

戦闘を始める前に重要な目的が果たされているパターン。
囚われたヒロインを助け出す、宝物を見つける、悪代官の陰謀を暴き切腹を命じる、などなど。
戦闘は、主人公(PC達)に見せ場を作る為であったり、単にゲーム的な都合で行うことも多い。

戦闘中に会話をする必要性が薄くなるので、敵は①か②のタイプが多いか。
戦闘開始直前に会話をするタイミングを設けられるなら、③か④のタイプでもよい。説得したりレスバで言い負かしてから戦闘に入るというパターンである。

変則的だが『戦闘で倒してから会話で決着をつける』ストーリーも、このパターンと同じ運用が出来る。
TRPGなら、例えば『武装少女RPGプリンセスウイング』が該当する。戦闘シーンの後にヒロインを説得するシーンがルール的に用意されている。


ちなみに筆者は、洗脳されたヒロインとミドルフェイズに戦って説得するシナリオばかり書いている。
多分、Zガンダムとかの影響。


終わりだよ〜



(○・▽・○)

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