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サンドイッチ道場での由美の活躍


   マーゲート道場は新規の道場で、由美もオレンジ帯を締めていたせいもあって新規入門者は由美に気を遣っていたが、サンドイッチ道場で由美を皆に紹介した時は、すでにいろいろな道場生といつも見学に来てくれる保護者たちがいた。夏休みが終わってから、徐々に活気を取り戻し、新規入門者も少しではあるが増えつつあった。そんな中で、自己紹介後には特に小学生や、子供たちの保護者達から熱い視線を向けられて、芸能人のように取り囲まれ質問攻めになっていた。

「How old are you?(歳はいくつなんですか?)」

「How do you spell your name?(名前はどういう綴り?)」

「What do you do in your free time?(趣味は何ですか?)」

など、主に小学生の男の子たちから質問されていた。

僕は少し心配したが、由美は日常生活に関する質問に対しては笑顔で滑らかに答えられていた。僕はそのシーンを見てとても驚いた。由美はどちらかというと英語が苦手だと言っていたからだった。

稽古が終わってからプジョーに乗り込み帰途に就く際に、

「さっきは英語うまかったね!いつの間にそんなに上達したの?」と僕が驚いた表情で聞くと、

「実は、ナオトがイギリスに行くと決めてからすぐに英会話学校に行くのを
 決心して、プライベートレッスンをずっと受けていたの」と由美は笑顔で言った。

「そうだったんだね。凄いいい発音だったよ!」僕はさらに感服して由美に心の底から敬意を払って言った。

「まあ、全く喋れなかったら困るからね」とちょっとはにかみながら由美は言った。

それ以来、由美はサンドイッチ道場で人気者となり、保護者達とは洋裁の話で盛り上がったり、お菓子を沢山もらったりしていた。

また、稽古中に突然9歳の女の子が失禁してしまった際もその母親と共に対応してくれたり、もっと小さい4歳くらいの男の子をトイレに連れて行ってくれたりと大活躍だった。僕は大いに助かった。特に由美とお母さんたちとの和やかな交流のおかげもあって、その中の1人の母親が近所の小学校の副校長で、

「今度、うちの小学校で、空手の準備運動を体育の時間の準備運動に取り入れてもいいかしら?」と言われたらしく、その後、僕も直接彼女と話をして、

「どうぞ、是非利用して下さい!光栄です」と僕は彼女に満面の笑顔で言った。彼女はシャーロットという名前で、金髪のショートヘアで30代後半に見える真面目そうな女性だった。サンドイッチ道場の稽古にはいつも1番で10歳の娘のエマと来ていた。

その後も、僕が日本から持参した空手流派のマークがついたアイロンプリントシートを使ってTシャツにプリントしたものを、娘さんのエマの誕生日にプレゼントしたり、お菓子を渡し合ったりと交流が続いた。

このようにして由美はサンドイッチ道場を盛り上げてくれたのだったが、ある時あるお母さんから、

「由美の方がナオトよりいい発音しているわね」と言われた時は英語教師だった自分が恥ずかしくなり、この時を境に僕は由美に鼓舞された形で、発音の向上を常に意識するようになった。

(続く~)

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