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【おとなりさんちの話】ひまわり食堂@鹿島市

学校の授業が終わった後の放課後の時間。その時間は、こどもたちにとって、もしかすると唯一の自由な時間かもしれない。学校であれば大勢の人とと一緒に過ごすために「生徒」としてのルールが必要だろうし、家では家族が近くにいるからこそ、その親のもとで育つ「こども」として過ごしている感覚になると思うからだ。一人の「自分」を解放できる、貴重な時間が放課後だ。

そんな放課後の時間のまっただ中、学校から目と鼻の先くらいの距離にある駅前の広場をこどもの居場所として開いているのが「ひまわり食堂」だ。

佐賀県鹿島市の「肥前浜駅」は約5年前にリニューアルされた新しい駅舎


付近には酒蔵が多くある地域で、蔵開きの時には、沢山の観光客が訪れるようだが、普段の利用客のほとんどは学生だ。代表の今田羊一さん(以下、今田さん)が、こども食堂をするために場所を探していたところ、快く貸してくれることになったのだそう。こうして毎月1回、駅の前で机と椅子を広げ、カレーの鍋を用意することになった。

「こどもたちのおとなりさん」になろうと、ひまわり食堂を始めた今田さんは隣の町の出身。しかし、駅舎のある鹿島市で飲食店の板前をしていたことから「料理の腕を活かして自分にも地域のために、なにかできないか。これまで、色々な苦労もしてきたけれど、その度に人に助けられてきたからお返しをしていきたい。」と思いを地域の人に伝えたところ、「こども食堂はどうか」と提案を受けたことがきっかけとなり、実施することになったらしい。

代表の今田さん。Tシャツに「羊」のイラストが印刷されているのは、今田さんの名前が「羊一」だから。地域の人に応援され、作ってもらったんだとか。

この日も既に近くの小学生や中学生が学校終わりにやってきていた。早いこどもは、カレーができる前から駅にやってきて待っているようだ。

放課後の時間、制服姿のままでやってくるこどもたち。

この近くの小学校はだいたい1クラスで小規模なんだとか。だから、全校生徒がそれぞれを知っている。遠くから歩いてくる姿を見て「あ、⚪︎ちゃんが来た〜!一緒に食べよ〜!」と誘ったりできてしまう。みんな知っている人だから、居心地が良いのかもしれない。

「みんな、よくきんしゃったね〜ジュースあるよ」とこどもたちに声掛けする今田さん

こどもたちは嬉しそうに受け取りながら、今田さんのことを時折、「先生!」なんて呼んだりしていた。「先生!今日もおいしい!」「先生!デザート(お菓子)はある?」と。ほとんどが毎回来るこどもたちだから顔を知られていて、声をかけられていた。決して、口数の多いわけではない今田さんだが、「今日もよく来てくれたね〜」とこどもたち以上に嬉しそうに声をかけていく。

中には「おかわりください!」とお願いをしているこどもも。「みんな、今日は夜ご飯食べるの?」と聞くと「今日は、食べないよ〜お母さんに要らないって言ってあるの」と教えてくれるこどもたち。さすがにね…

友だちとご飯を食べて、各々が自分たちの世界で話をしている。それは、まるで休み時間の光景のようだ。地域の「おとなりさん」たちは、そこに入る隙間が無いほど、こどもたちは周りの存在を気にしていない。食べ終わって元気になると、そのまま広場に駆け出していって、本当に自由に遊んでいる。なにも遊具があるわけではないが鬼ごっこをしてみたり、持っていたボールで遊んでみたり。その場が、校庭に様変わりしているといっても過言ではない。

どこの場所でもそうだが、誰も見ていない場所も時には居心地がいいんだろう。駅の奥に人が吸い込まれている、と見に行くと「たまり場」となって遊びが繰り広げられている様子。また、駅舎の中にある待合室では、中学生くらいのこどもたちがひっそりと話をしていたり、スマホを眺めていたりしていた。こそっと隠れる場所も、自分の安全安心な空間なのだと感じる。

駅舎の一角にあるスペース。ピアノが置いてあり、自由に弾くことができる。

あまりにも、こどもたちの数が多いので、学校の先生もこどもたちの様子を見にきて「ありがとうござます」と挨拶をしていた。学校の先生でも地域の大人でも、こどもを見守りたい、こどもに幸せになってほしい、という思いは共通する。だから「なにかあったらどうするのか」ではなく「お互いに見守っていきましょう」と、それぞれの大人が自分のことのように考えて繋がっていけることが、こどもにも「ここに居ていいんだ」と安心感を与えるように思う。こどもたちは「自分」として居られる時間によってだろうか、どことなく、来た時よりも元気な表情になっていくような気がした。

「これから部活に行ってきます!」と元気に帰っていくこどもたち。

実は、こどもたちは時に、あまりにも元気にはしゃぎ過ぎて、駅を利用する他の利用者にぶつかりそうになることもあった。そんな様子を見て、地域の人は「今田さん、こどもたちにしっかり気づいたことは伝えていかんと」と声をかける。今田さんは「そうだね」と笑いながら「こどもたちと一緒に成長していきたい」と話す。おとなも、こどもも、共に過ごしていくために、これからどう関わっていくかを模索するのでしょう。きっと、そうやって模索をしていくことが「共に暮らす」ということなのだと思います。

ひまわり食堂の今田さん(中央)と地域の皆さん

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ひまわり食堂
おとなりさん:今田羊一さん、地域のみなさん
おとなりさんち:佐賀県鹿島市浜町(肥前浜駅前)
月1回月曜日 16:00-19:00 高校生以上300円
▶︎ひまわり食堂のinstagramアカウントはこちら
・instagram
 https://www.instagram.com/sunflower_yoichi/

Instagramでは写真を、noteでは文字を中心とした読みもので「こどもたちのおとなりさん」を発信していきます。
▶︎アカウントはこちら https://www.instagram.com/kodomo.otonarisan/
こどもをまんなかに、ほっとできる瞬間がそばにある社会を皆んなで緩やかにつくっていきませんか。
編集・書き手・写真 : 草田彩夏(佐賀県こども家庭課 地域おこし協力隊)

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