見出し画像

【おとなりさんちの話】循誘(じゅんゆう)の遊び場ゆうゆう@佐賀市

佐賀市の循誘(じゅんゆう)地区。昔ながらの街並みが残っている地区であり、周辺には住宅街が広がっている。しかし、こどもの数が多いわけではなく、地域の大人とつながるきっかけは少ない。また、近くに繁華街があることから、そこで働く県外からの転入者や、中には複雑な状況にある家庭もいると聞く。そんな背景もあってだろうか、佐賀市は2017年より3年間「モデル事業」として地域の協力を得ながら居場所づくりの取り組みをスタートしてきた。月に1回、地域の民家(後にお寺となった)をご好意で使わせていただき、誰もが来て遊ぶことのできる場所としたのだ。お昼ご飯も提供し、こどもは土曜の日中をそこで自由に過ごすことができる。

3年間にわたる佐賀市の事業が終わった後も、毎月来るこどもたちの拠り所が必要であると考え、地域の人たちで協力し合いながら続けることとなった。

これまでに集めてきた、こどもたちが楽しめるおもちゃも様々。

これまでに長くこどもたちの「おとなりさん」でいようとしてきたからこそ、さまざまな課題を地域の人たちは感じてきた。

・途中でコロナの感染拡大があり、こどもが密集して遊ぶことが禁止された時期もあったこと。
・居場所でこどもを見守るために、継続して協力できる大人が集まらなくてはいけなかったこと。
・居場所を続けるために、資金が必要であること。
・悩みを抱えるこどもへの寄り添い方。

こういった点があったようだ。それでも、これまで7年以上に渡り、地域を見守ってきたのは「おとなりさん」の思いがあったからこそなのだろう。今日はそんな皆さんを紹介したいと思います。

とある土曜日の11時前、こどもたちが友だち同士でやってきた。クラスが分かれてしまい、中々遊ぶ機会が減ってしまうのだという。それでも、こうやって学校以外の時間に集まって遊ぶことができると嬉しそう。

「この子は絵を描くのが得意なの!」と教えてくれる

「おとなりさん」は、その時間、これから来るこどもたちを迎える支度をしていた。この日は初夏の季節に入っていたことから冷やし中華やおにぎりの準備。「料理は慣れているからね」と皆さんで楽しそうに台所に立っている姿が印象的だ。

玄関では、「こどもの居場所」であることに気づいてもらえるよう旗を用意する。代表の本堀(もとほり)さんは、こどもたちに「今日は何をする予定なの?」と話を聞いていた。「そうなんだね」「楽しそうだね」と優しい眼差しで耳を傾ける。あまり近すぎず、遠すぎず、そんなかかわりを意識しているように感じる。以前は、地域の主任児童委員としてこどもたちを見守っていて、様々な家庭とも話す機会があったのだとか、今でも相談支援の仕事を続けているそう。「地域で暮らしをしている中で、自分を知っている大人がいることって、こどもの安心につながると思うのよね。私もよく、”ゆうゆうのおばさんだ〜”と近所で会った時にこどもから言われると、たまらなく嬉しい気持ちになるの」と思いを伝えてくれた。

こどもの話を聴く、代表の本堀(もとほり)さん

この場所の必要性については、同じく居場所づくりを進めてきた中で欠かせない「おとなりさん」の橋本(はしもと)さんもこう話す。「今はこどもたちが、習い事で忙しくしていて遊ぶことや体験することが少なくなってきているように思うんだよね。色々な人やモノに出会って、世界を広げてほしいと感じるよ」

近くで贈答品店(ギフトショップ)を営む橋本(はしもと)さんは
こどもたちの様子を見にきて笑顔で関わる

お昼ごろになると「小学校のチラシでみました」とか「友だちから誘われて来てました」と、こどもたちが続々と集まってきた。何をしていようが、誰にも何も言われない自由さがあるし、自分でやりたいことを決めて良い。きっと、初めて会う人もいたかもしれないけれど、一緒に遊んでいれば距離はぐっと近くなるものだ。

近くにある神社では、鬼ごっこをして楽しんでいた。

あまりにも、楽しそうに遊んでいるこどもたちの声が近所にこだましていたようで、目の前の道を通りかかった中学生の男の子たちがやってきた。「今日やっているって知らなかったんですけど賑やかだから来てみました!やった!」と嬉しそうに話す。どうやら、小学生の時にこの場に来たことがあったようだ。そんな様子に「おとなりさん」たちは「今日は冷やし中華だよ〜たくさん食べていって!おばさんたち、麺から作ったのよ〜」と冗談を入れながら茶目っ気たっぷりに返す。

もうすぐ定期テストなんですよ。だから、これから勉強しなくちゃいけなくて、とおとなりさんたちと話しをするこどもたち。
台所には、遊んでほしいこどももやってくる。おとなりさんは時々、こどもたちと遊びに参加する。

「おとなりさん」は、こんな風にこどもたちが過ごせる空間を見守りながら楽しそうに側に居る存在となっている。

この場を安心した存在と感じていたのは、こどもの周りにいる保護者も同じだった。この日、中には、親子で来ている人たちもいた。「いつも、遊ぶところは家の前なので、今日は初めて親子で来てみたんです。最初は緊張していた様子でしたが、あっという間に楽しんでますね」と自身のこどもを見ながら話す。こどもが幼かったり、遊べる場所が遠かったり、少し大変だな、と思った時に、こどもを一緒に見守ろうとしてくれる存在が地域にいることが、きっと支えになるだろう。

親子で遊んでいる様子

代表の本堀(もとほり)さんは、これまでの長い間こどもたちの様子を見てきて、ここだから来られた人を見てきたという。事情があって、家から中々出ることが難しかったり、学校に行きづらいと感じていたり、悩んでいたり。そんなこどもたちが、この場所を安心して過ごせている様子を見ると「よかった」と胸を撫で下ろしてきた。確かに、この日も20歳くらいの大きい人もいて小さいこどもたちを一緒に見守っているような存在になっていた。きっと、大きい人たちは小さい頃から、ここで「おとなりさん」たちに育てられてきたのだろう。
一方で「ここだけで大丈夫かな」「この先の人生、困らないかな」と不安な気持ちにもなることもあるという。「ここが唯一、誰にも干渉されない場所になってきたと思うの。だから、私たちがどう伝えていくのかについては悩むわね」と、心境を話す。

そんな葛藤を抱えながらも、できることは、先ず側にそっといることだから。色々な気持ちを丸ごと込めて「ひとりじゃないんだよ、元気でいてね」とメッセージを送る。

自分だけで頑張らなくても大丈夫。側に居てくれようとしている「おとなりさん」がここにもいます。

居場所づくりをする地域の人たち、高校生のボランティア

ここでは、毎週水曜日の放課後の時間帯(15時〜17時)も、ゆっくり過ごすことができるよう「放課後ゆうゆう」という名称で、こどもたちのために居場所を開いています。

ーーーーーーーーーーーー

循誘(じゅんゆう)の遊び場ゆうゆう
おとなりさん:地域の人たち、高校生や大学生のボランティアの皆さん
おとなりさんち:佐賀市柳町3-13(専福寺)
放課後ゆうゆう>毎週1回(水曜日)15:00〜17:00      無料
遊び場ゆうゆう>毎月1回(土曜日)12:00~15:00 無料

instagramでは写真を、noteでは文字を中心とした読みもので「こどもたちのおとなりさん」を発信していきます。
▶︎アカウントはこちら https://www.instagram.com/kodomo.otonarisan/

ーーーーーーーーーーーー
佐賀市の循誘校区近くには、他にも素敵な「こどもたちのおとなりさん」がいます。是非のぞいてみてくださいね。

こどもをまんなかに、ほっとできる瞬間がそばにある社会を皆んなで緩やかにつくっていきませんか。

編集・書き手・写真 : 草田彩夏(佐賀県こども家庭課 地域おこし協力隊)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?