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【おとなりさん便り】こどものためのおとなの授業レポート(第2回わたしと心地よいこどもとの関わり方)
「おとな」が「こども」とのかかわりについて学ぶことができる講座『こどものためのおとなの授業』第2回目を開催しました
こどもを育てる、見守る、関わるおとなの皆さんが、こどもとのかかわりについて学ぶことができる講座「こどものためのおとなの授業」。年3回の学びを通じて、こどものために自分ができることを考えていく内容です。
12月15日に実施した第2回は、九州大谷短期大学 准教授 吉栁佳代子(きりゅう かよこ)さん(以下、吉栁さん)を講師に迎え、「わたしと心地よいこどもとの関わり方」をテーマに学びました。
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最初に演劇教育、表現教育を専門とする吉栁さんから、演劇を切り口に見えてきたこどもたちの現状をお話しいただきました。まず、お話をされたのが今を生きるこどもたちの共有体験が少なくなっているということです。介護施設で過ごす高齢者との対比した事例を挙げながら説明されました。「高齢者の前で童謡を歌い出すと、一緒に歌い出してくれたりするんですよね。彼らがこどもだった頃は野山を走り回ったり、さつまいもを食べたりなんかして共有体験があったんです。でも、それが今のこどもにはできなくて。共有体験といったらゲームでしょうか。」
映像で知っているのではなくて、五感を通して得ている情報が少ないと、リアルな世界で様々なハプニングが起こったときに、反応ができなくなってしまうと、その深刻さを吉栁さんは話します。
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地域には、こどもたちだけで遊べる空間が無くなっていて、五感を育む経験や共有体験を通して「ほっ」とできる瞬間ができなくなってきていることを考えると、こどもの居場所づくりは、そういった共有体験を取り戻すことにつながっているのかもしれません。
ここで、吉栁さんから参加者にある問いが渡されました。
それは「表現する」ことを、どう受け止めているか。苦手なのだとしたら、なぜ苦手なのか?ということです。
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「自分の感情をどう表現したらいいのか、言葉が見つからない気がします。」
「迷惑かけてしまうんじゃないか、と思ってしまいます。」
「なにを話せばよいのか分からなくなります。」
などリアルな声が出てきました。
吉栁さんは、こういった声に大人がコミュニケーション教育されていないということを感じるとこのように指摘します。「伝わるまで言えば良い、という思考に私たちがならないのは、なぜなのでしょう。この話題だと広がらないかも、と話せなくなってしまったり、伝わらなかったからこうしてみようという熱意を持たずに諦めてしまったり。それは表現する技術ばかりを求められて”上手じゃない” ”つまらない”など評価されてきたからです。」
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失敗することや評価することを恐れて、つい及び腰になる参加者の皆さん。
評価や意味が無くても雑談したり、心の動きそのものに着目したり。そういった時間や関わりが失われていって「コスパ・タイパ」や「成果物」に焦点を当てられていることに違和感を覚えているという吉栁さん。「大人であっても失敗していいし、完璧じゃなくていい。感情をどんどん出してください。人と人の間とか、距離感は表現してみないと分からないし、逆にぼーっとすることで整理されることもあるんです。」こどもたちと関わる私たち大人も、ありのままでいることが大切であることを感じます。また、こどもに対しても「なんでそんなことしたの?」ではなく「〇〇な気持ちだったんだよね」と感情の動きそのものに着目することが重要です。
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演劇や感情表現の話を辿って、最後に非言語のコミュニケーションについて話されました。「人間のコミュニケーションの9割は非言語だと言われています。例えば、 ”ただいま” と帰ってきたときに耳にする ”おかえり”という言葉の感じで相手がご機嫌かどうかって分かりますよね。だから、こどもを迎える大人がご機嫌でいることが大事なんです。」
こどものために、とばかりやっていると、あんなに手をかけているのにと思ってしまうかもしれません。まずは、自分の感情を大切にした上で相手とも関わることを意識する必要がありそうです。そして「あなたと会えて嬉しかったよ」と無条件に受け入れたり、感情を伝えたりできるとよいのでしょう。
みんなで学びを深め、広げていきませんか。一緒により良い地域をつくりましょう。
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授業の申し込みを受け付けております。是非ご検討ください。
【第3回】「わたしがこどものためにできること」
日時:令和7年2月22日(土曜日)13時30分から15時30分まで
会場:アバンセ 第3研修室(佐賀県佐賀市天神3丁目2-11)
講師:NPO法人ハンズオン埼玉副代表理事 西川正氏
参加者は定員になり次第、締め切ります。オンラインの参加も可能です。
申し込みはこちら>
https://logoform.jp/form/jbBd/672351
編集・書き手・写真 : 草田彩夏(佐賀県こども家庭課 地域おこし協力隊)