見出し画像

【おとなりさんちの話】高木瀬子どもの居場所@佐賀市

「こどもの居場所づくり」という言葉が広がってきていて、多くの大人が「どんな場所がいいだろう?」と試行錯誤している。その度に、とある方が話していた「こどもの世界に大人はお邪魔しているんです」というフレーズが、頭をよぎる。こどもの居場所は、こどもの世界であることを再認識させられるのだ。

さて、今回紹介をする「おとなりさん」もそんな感覚を大事にされていて、こどもたちが自分たちのやりたいことを、制約なくできるように、地域の公民館を居場所として月に1回開いている。

小学校が終わった後、ランドセルを背負ったまま多くのこどもたちが一斉に押し寄せてきた。「こんにちは〜」と元気よく入ってくるこどもたち。代表の池田さんは元学校の関係者で、本当は寄り道をしてはいけないことになっているけれど、特別にOKをしてもらっているんだとか。

受付で挨拶をする代表の池田さんとこどもたち
学校と協力して、事前に名前を登録する形式にしている。
「名前を教えてください!」

こどもたちは、早速ランドセルを下ろすと部屋に駆け出していって、各々にやりたいことを繰り出していく。その形は本当に様々だけれど、自分たちで決めていく自由さが印象的だ。そこに立っていると、相手の声が聞こえなくなるほどの賑わいようだった。代表の池田さんは「ここでは、敢えてルールを作っていないんです。だけど、怪我をしたりさせることだけは、安全のために守ってもらっています。」と大人の皆さんが大切にしていることを話す。だから、大きく体を動かす場所と、ボードゲームなどをする部屋に場を分ける工夫もしている。

手前のスペースは体を大きく動かせる場所。学年バラバラで取り組むドッジボール。
奥のスペースは落ち着いて遊ぶ場所。真剣な面持ちでオセロをするこどもたち。
「宿題やっているの?」「先生がね、結構な量を出すんだよね」

こうやって、大人の皆さんは、危なくないかな?安心できているかな?ということを気にして見守っているらしい。「私たちは、このエネルギーについていけないから、(遊びに)入りきらんよ。でも元気をもらうよね。」とボランティアの方はニコニコしながら、こどもたちを目の前にポツリと話す。ボランティアを始めて4年になるのだとか。時には、「これは、危ないから気をつけようね!」と声をかけている様子もあった。

そして、大人側の皆さんの中には、ここの居場所の卒業生もいた。昨年まで小学生として、この居場所に来ていたこどもが現在は中学生。そんなこどもたちが「遊びに来ているんです。」と言って下級生を見守っていた。例えば、ひとりで、どこのグループに入って遊ぼうかな?と迷っている子に「何して遊びたい?」と声をかけたり、一緒に遊んだり。そんな中学生にとっても、ここはちょっと、お兄さんお姉さんを感じられる居心地良い場所になっているのかもしれない。

1時間ほど経つと、代表の池田さんがマイクを持って「皆さんにおやつを配りますよ」とアナウンスをし始めた。

この日はボランティアの方がイチゴを配っていく
もらったお菓子を喜んで食べるこどもたち

お菓子を食べ終わった後は、速攻で各々が遊ぶために散っていく。この日は雨模様だったのだが丁度、外が晴れてきたタイミングで、一斉に外にも駆け出していく。あちこちで「私も外で走ってこようかな」とか「ねえ、鬼ごっこしない?」など、こどもたちの声が聞こえてきた。

幾度も鬼が変わっていく鬼ごっこ
すぐ近くを流れている川に容赦なく入っていくこどもたち。「何しているの?」「貝があると思うんだよね…」「集めてるの?」「そうそう!集めたいの!」

こんな様子を目の当たりにすると、大人のスキマは本当にないように思えるけれど、おとなりさんたちはこっそり声をかけていくのだ。「何か釣れた?」「鬼から逃げているんだね!」と”みんなのことを気にしている”ことが伝わっってくる。そうすると、次第にこどもたちの方も、こちらにやってきて、「こんなのが取れた」とか「写真撮って」と声をかけてくれることもあった。自由なこどもの世界に大人がお邪魔をすることによって、おとなりさんが徐々に安心した存在として、こどもたちの目に写っているのかもしれない。

帰り際には、まるで友だちと同じように「またね」と声かけするこどもたち。そんな様子に、おとなりさんたちも「また遊ぼうね〜」と思わずハイタッチ。みんなが、”ごきげん”の渦に包まれていた。

ハイタッチして挨拶をする「おとなりさん」の皆さん

おそらく、こどもたち自身、自分たちの世界を尊重してもらえている感覚があるのだと思う。だから、卒業生でさえも遊びに来て、一緒に「おとなりさん」になったりする。こどもも、おとなりさんも、それぞれの関係が影響をしあって居心地の良い空間が成り立っているのだと確信する。きっと、こうやって、これからも思いが人から人へと広がっていくのでしょう。

代表の池田さんは「地元愛とか郷土愛みたいなものを持って、元気に活躍してほしいな」と願いを込めて、こどもたちへのメッセージを送る。

目の前にいるこどもたちの「おとなりさん」になることは、思いのバトンを渡していることにもなるのかもしれません。

代表の池田さん(中央)と高木瀬地域の皆さん、ボランティアして参加していた中学生・大学生

ーーーーーーーーーーーー
高木瀬子どもの居場所
おとなりさん:池田さん、地域のみなさん
おとなりさんち:佐賀市高木瀬東5丁目1-12 上高木公民館
毎月1回(第4水曜日)放課後~17:30 (冬季は17:00)

Instagramでは写真を、noteでは文字を中心とした読みもので「こどもたちのおとなりさん」を発信していきます。
▶︎アカウントはこちら https://www.instagram.com/kodomo.otonarisan/
こどもをまんなかに、ほっとできる瞬間がそばにある社会を皆んなで緩やかにつくっていきませんか。
編集・書き手・写真 : 草田彩夏(佐賀県こども家庭課 地域おこし協力隊)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?