オタクが初めて同人誌を出した。それだけの話。
2ヶ月。それは何かを成し遂げるにはあまりにも短い期間だと思う。
日々寝て起きて暮らす。大学の課題に追われ期日が迫っているのに「いや、マジでヤバイんだけどさw」とか友人とdiscordで深夜に通話しながらFPSをしたり、本屋に行けば新しい本を買ってしまうことが分かりきっていて(いやいやお前、この前ようやく積み上げた小説読み切ったばかりだろ!)と考えているのに「この本買いました!」とか写真付きでTwitterに投稿してしまう。
なんだかんだ言って、それは幸福だ。平和じゃなきゃそんな事できないし、こんな生活も『今』しかできない。
改めて言うが、2ヶ月なんてそんなものだ。
幸福に、かつ適当に消費されていくものだ。
だけど、俺の2ヶ月は。2022年11月22日から2023年1月21日までの約2ヶ月間は……
俺の人生で、現状最も濃密な2ヶ月だった。
前回と変わらず、これは一般オタクの自分語りnoteです。
創作やら同人誌やらについての『個人的な』意見が沢山書かれていますが、全ては十人十色のものです。
あくまでもレンという一人のオタクの言葉でしかないことを、此処に明記します。
超長激ヤバ痛痛自分語りnote第二弾。
良かったら読んでやってください。
1.始まり。
俺は八月某日からpixivにブルーアーカイブのSSを投稿しているオタクだ。
それまでの人生で『創作』という行為をしてきた訳じゃなかったし、それを自分がするとは全く思っていなかった。
そこらへんの話は前回のnoteで語るだけ語っている。
これ読まれすぎ。ビビったわ!
絶対別ジャンルに生きてらっしゃいますよね?というオタクから「良かったです」なんて感想が来たりして、あざっす!!!!!!という気持ちしかない。
俺はひょろひょろオタクだがこういう時の返答はヤンキーになる。人間としてどうなんだ?
まぁ、このnoteを投稿してから1ヶ月くらい。俺の中でこの熱は変わっちゃいない。
寧ろ、更に熱くなっている。
そして今回は、前回noteで触れていた人生初同人誌の話をしに来たんだ!!!!!
それがこれだ!!
浦和ハナコの事を描いた全年齢小説本。
「花惑いの女の子」
俺はなんとかこの本を形にすることができた。
現在BOOTHにて電子版を委託頒布中である。
浦和ハナコの事が好きなオタクや彼女のことが気になっているオタクに是非手にとって頂きたい。
今回のnoteはこの同人誌を制作すると決めてからの俺の心境と、その二ヶ月を語る内容……になっているはずです。
思いっきり睡眠時間をぶん投げて書いているので、文体はめちゃくちゃだし、内容もおかしなことになっている自覚がある。口調とかですます調なのかである調なのかヤンキー調なのかはっきりしてないし。
痛く長い面白い保証が一切ない。そんなnoteだけど。
俺の二ヶ月を書けるだけ書いたnoteになっているので、読んで頂けると嬉しいです。
新刊も読んで頂けるとめちゃ嬉しいです。
「花惑いの女の子」のネタバレは無いように書いたつもりですが、一応注意していただければなと思います。すみません
人生初同人誌、それは1人のオタクが血迷った事から生まれた。
10月30日。せんアカ一般参加の時に、先生方とお話していた時に「恐らく次のサンアカは倍率が高くなる」みたいな話を聞いてきた。
Sanctum Archive chapter.2
それは俺が人生で初めて同人誌を頒布したイベントだ。
この時の俺は、そんなことになると思っていなくて。(なるほど。まだ俺は本を出してないだろうからなぁ……)とか考えていた。
しかし、しかしだ。サンアカ2(略称)の申し込み開始当日の20時。俺はモニターの前で悩んでいた。
「出したい。俺も本を出してみたい……!」
心の中で燃える熱はもはや抑えきれず、遠征しなくて参加出来るオンリーイベント。参加し得だと思っていた。参加人数も多いだろう、うじうじ悩んでると締め切られるだろうな。でもなぁ……
そう思いながらTwitterを開く。ほぼ逃避だった。
某先生「新刊って申し込むと完成するよ」
俺(マジかよ!やります!!)
はい、バカ。あたしって、ほんとバカ。
申し込んでしまった。
この時点で俺が決めていたことは一つだけだった。
それは浦和ハナコを書くということだけ。
それ以外何もわからない。どう書くか、そもそも本ってどうやって作るのか!?
何も分からなかった。
でもその時、俺の視界に2冊の本が映った。
それは1つの夢と、1つの花火だった。
そういえば、文字を読みたいと思った時も、文字を書きたいと思った時も、俺は何も分からないまま突っ走ったんだ。
じゃあいつも通りじゃねぇか!
そうして俺の同人誌作りが始まった。今思えばヤバいことを始めようとしている。冷静に考えて自分で物語を書いて、一つの結末まで繋げきる。そうしてそれをpixivという沢山の人の目に留まる可能性がある場所に投稿する……
これだけでも十分に凄いのだ。凡そ一般的な行為とは言えない。
それでも俺はそれをやってきたし、日常の一つにこれが組み込まれた。
だから多分、俺は『創作』という脳内麻薬に脳髄を惑わされていたんだと思う。
一応言うが、俺は『創作』を過剰に神格化しているわけではない。ただ『ヤバい行為』と思って生きている。これは褒められる行為というよりは、ドン引きされる行為なのだ。……褒められる行為なら、もっと沢山の人がやっているよね。
だから俺は自分が狂っていることを自覚して、それでもそれを良しとして突っ走っているのだ。それが心地良いと、息切れしながらも感じている時点で、俺はとっくにブッ飛んでいる。
でも、同人誌制作は格が違った。
俺は未知の世界に足を踏み入れたことに、この時は気づいていなかったんだ。
2.君を書くこと。
本を出す。そう呟いて思ったよりも多くのフォロワーに外堀を埋められて、デカいため息を吐いた俺は一つのことを考えていた。
どうして、浦和ハナコで書こうと思ったんだ?と
サンアカ2に申し込むにあたって何となくこのキャラで出します。みたいな記入欄があって、俺はそこに「ハナコ」とだけ書いた覚えがある。
正直申し込んでいた時の俺は完全にキマっていたので記憶があやふやなんだけど、確かそうだった。小説ですとか書いとくべきだったな。
俺はどうして浦和ハナコという少女で、同人誌を書こうと思ったんだ?
確かにハナコの事は好きだ、エデン条約で見事に灼かれた。
でも俺はこの少女のことを、何処まで知っている?
君は何を考えて、俺の脳髄で微笑んだ?
俺はその笑顔を見て、君を書こうと思ったのか。
何も知らないのに。
俺はノアのSSを書いてから、物語を書く時に『キャラと向き合う』事を絶対的な条件として自分の中に置いている。
俺はこの作品を「最低」といつも言っている。
それでも、この作品が大好きだ。
向き合った結果が絶対的な『正解』ではない事は重々承知の上です。
キャラと向き合うという行為が『納得』を生み出すために必要不可欠だと思ったから、そうしています。
俺が人生で最も必要だと思うのが『納得』です。どんな結果になろうとも、何を得ようと失おうと、納得さえしていれば前に進めると考えているんです。
どんな駄作だろうが、傑作だろうが、俺が納得しているなら堂々と世に出せる。好きな作品と言える。
だから納得しないといけない。あの時誰を書こうと考えた時、なぜ彼女が微笑んだのかを俺なりに納得しなきゃ、プロットすら書けやしない
そうして向き合い始めた。エデンを読み直して、絆を読み直して。彼女のことを考えて、浦和ハナコという少女が何を考えているのか。どう振る舞うのか。メモ帳にペンを走らせて「違う」と言って破って、その度に「浦和ハナコという少女は難しすぎる」と何度も呟いて。
そう、難しい。ぶっちゃけた話をするなら俺に教養は無い。シンプルに頭が悪い。何かの分野に精通しているわけでもなくて、好きなことはただ『好き』なだけ。専門性なんてありゃしない。難しい言葉は読み方を調べるところから始めるし、蓄えた知識なんてゲームばっかだ。それも大して強くない。
そんな俺が、浦和ハナコを書こうとしている。ブルーアーカイブというゲーム中でも聡明で、難解さで言えば上位に位置するであろう少女を描こうとしている。
でも見れば見るほど理解していく。俺は浦和ハナコが好きだと、どうしようもなく理解していってしまう。
あの時微笑みを幻視して、それに魅了されて。なるほど、それでも彼女を書くのは無謀だと思ってしまう。
それでもやりたいと思った。
それは答えを出したかったからだ。
浦和ハナコという少女の抱えるものに、一つの答えを出したかったからだ。
「何調子乗ったこと考えてんだろーな」そう呟いたのを覚えている。
ハナコの心象を俺如きが理解できるかよ。そう思ったけど、まぁこの時点で決まってましたね。
思えばずっと逃げていた。
初めて創作をした作品。ヒフミの恋を描いた作品。
補習授業部のみんなを登場させて、その中にもハナコは居た。
コハルとアズサの二人とは違う役割をもたせたので、登場は少しだけ、たった一言だけ。
それはそういう立ち位置で動かすべきという納得があったものだったけれど、同時に「これ以上を描けない」というギブアップ宣言でもあったのだ。
でも、でもですよ。そんなハナコの描写を「良い」と言ってくれた人がいたんです。俺のファンクラブ(あるの?)の会員1号のたんじぇんと先生が「あのハナコの言葉は凄く良かった」と言ってくれて、多分あの言葉がなかったらこの本は生まれてません。
本当にありがとうございます。
あとnoteという場所でお名前出してマジでごめんなさい。なにかあれば修正しますので……。
浦和ハナコという少女を描きたい気持ちと、それは無理だろうという気持ち。両方抱え込みながらもその全てに納得して、プロットを練り始めた。それだけのことに、時間がかかった。
それでも浦和ハナコでぶち抜くと決めたから、俺は駆け出したわけだ。
彼女のことがどうしようもなく好きだから、そのデカい感情を叩きつけたくて、キーボードを叩き始めたんだ。
3.創るということ。
そうしてプロットを練り、表紙絵を書いてくださる先生を見つかって。
俺の同人誌制作は軌道に乗ったように思えた。
実際、物書きが同人誌を制作する際に大きな壁として立ちはだかるのは「表紙絵どうしよう」だと思うし、それを解決できたことは本当に良かった。それが自分の好きな絵師なら尚更である。
しかし、そう簡単じゃなかった。
そもそも大きい壁がいくつあるかを、俺はきちんと把握していなかった。
その大きさも、何も見えてなかった。
俺は納得して生きる人間とさっき言った。書くという行為に関してもそうだ、どんな評価が来ようとも俺が納得してるから良い。もちろん良い評価が来れば嬉しくて狂喜乱舞する。
実際、素敵な感想があったからこそ浦和ハナコで本を書こうと思ったわけだし。
だから「難しい」とか「納得できない」という理由でキーボードを叩く手が止まることはあっても、きちんと向き合えば書き上げられる。
時間は多くないけど、俺が納得できるものを作れば良い。
けど違った。
俺は創作に触れるようになって初めて、「怖い」と思って書けなくなった。
怖かった。初めての感情だった。それで書けなくなって、家を飛び出して、近所にあるお気に入りの場所に一人座って考えた。
「俺は何が怖いんだ?」
理由は沢山見つかった。目を逸らしたいくらいに。
1つ。金銭のやり取りが発生すること。
2つ。間違いは修正できないこと。
3つ。既に俺だけの作品ではないこと。
4つ。形に残ってしまうこと。
5つ。やはり、ハナコとの向き合いが足りないこと。
6つ。俺がこの作品を、成功させたいと強く願っていること。
……他にもまだまだあるがキリがないので、このあたりにとどめておく。
1つ目は単純だ。お金は大切である。誰しもが苦労して金銭を得て、手持ちの中で生活していく。俺も学生という身分ではあるが、それは理解しているつもりだ。
その前提の中で、俺の作品を見て「こいつの作品には金を支払って良いだろう」と考えて、俺に金銭を渡して俺はそれに自らの作品で返す。
故に、作品の出来が全てなんだ。その人の努力の結果に、俺は自分の努力の結果で返すんだから。
その人の努力を裏切るような内容にしたくなかった。
金銭のやり取りという事実は、俺に責任感を齎した。
2つ目も単純。俺はこれまでpixivに作品を投稿してきた。インターネットというものは便利だ。間違いがあればすぐに修正できる。誤字も「この表現気に食わない」も何なら物語の結末をまるっと変えることすらできる。
それに比べて同人誌はどうだ。出来上がりを見て「すみません。ここ誤字ってたんで変えてもらえますか」なんてことがまかり通るだろうか。そんなわけない。誤字ってたらそれは自分のミスとして受け入れるしかない。
結末が気に食わなくなったって変えられない。例えば一度刷って、二回目を刷る際に結末を変える本なんてあり得るだろうか?それはもう別物だろう。
ミスは発生するものだ。「誤字は自然発生するもの」なんてよく聞くし、何度推敲しても添削しても見る度にミスは見つかって、頭を抱えて悶える。
そういうものと理解しているけど、そういった「よくあること」すら同人誌においては重くのしかかる事を理解した。
3つ目は俺の考えだ。
……そもそも、このnoteに書かれていること全てが頭の悪いオタクの一意見でしか無いことをもう一度伝えておくべきかもしれないが。
この作品の表紙デザインは普段より仲良くしていただいているヒジカタ先生に依頼した。彼は無名の俺の依頼を快諾してくれたし、イラスト周りや同人誌の仕様について明るくない俺が何度不手際を起こそうと、「初めてのことだから」と優しく受け入れてくれた。
俺はいつも彼のイラストに相応しいを書こうと思っていた。
そう、俺だけの作品じゃない。ヒジカタ先生だって貴重な時間と労力を割いて俺の同人誌の表紙を飾ろうとしてくれている。
俺が背負っているのは、俺の作品だけじゃない。
勝手かもしれないけれど、そう考えていた。
それに普段から仲良くしていただいている先生方。中でも大木星先生とミナミ先生には添削を手伝っていただいていた、二人だって忙しい身なのに関わらずだ。二人の添削は的確で素晴らしいもので、本当にこの作品は俺一人の力では完成できないものだった。
それらを全部まとめて、「レンの作品」として世に出すのだから。
適当なものは許されない。許さない。
4つ目も単純。というか俺が怖がっていることは、少し考えればすぐにたどり着けるような当たり前の事実にすぎない。それにその時まで気づいていなかったのだから、己の思慮の浅さにため息が出る。
これは2つ目と似ているかもしれない。当たり前だが今回の作品は同人誌として形に残る。
……これを書いている段階では本として形なっているものの在庫は殆ど尽きていて、電子版での頒布が主になっているのだが。
閑話休題。これが不思議なものでpixivなどに投稿するほうが作品というものは不特定多数の人に見られ、また書き手から離れていくものなのだが、本として現実世界に形になることの『重さ』は尋常ではなかった。
物質として世に残り、手に取られる。人生で自分がそのようなことをするなんて思いもしなかったから、その実感が追いついた瞬間は何も言えないような何もできないような、そんな感覚に陥った。
この事実を受け入れるのに、一晩を要した覚えがある。
5つ目はまぁ、まだ悩むのかというか。それはそうだろうな。というところでもあるのだが。
プロットの段階で何度書き直したか覚えていない。
初稿という形で先生方に見てもらう段階に辿り着くまで、何度原稿が白紙に戻ったか覚えていない。
何度書いても納得できなくて、浦和ハナコという少女像は遠くなっていく。
君を言葉にするのは難解で、苦しい。
冗談抜きに四六時中、浦和ハナコと向き合っていた。
二次元のキャラずっと向き合っていましたと言えば、人は笑うかもしれない。好きに笑えというのが俺の意見だが、これ以上に重要なことなんてあの時の俺にはなかった。
ツイッターやpixivで彼女への言及やイラストを見る度に胸が痛い。まだ俺は答えが出ていないんだぞという苦痛が叫ぶ。
彼女のことだけを考えた。そうして日々が過ぎていった。
6つ目。これはしみったれた意地だった。
完璧な成功なんてありえない。それに今まで納得していたはずの俺が、初めて納得できなかった。どうしても成功させたかった。それくらいの労力を費やしたから。
そう願えば願うほど、失敗した時の事を考えた。
自分の文章が、酷くつまらないものに思えた。
初めてのことだった。
成功させたいのに怖くて書けないなんてお笑い草だ。成功させたいなら書くしかない、それしかない。
わかっているのに、BackSpaceを押す回数だけが増えていく。
日に日に焦燥感は強くなっていた。
そうして、俺は初めて怖くなった。
創作に自身が持てなくなって、それは初稿を作り上げても変わらなかった。
実際のところ、初稿から大きく物語の展開は変わっていない。
そこからは細かい表現を変えたり文体を整えたりして、予告画像を作ったのもこのタイミングだった。
俺に編集スキルはなかった。何もなかった。
趣味で撮っていた写真を引っ張り出して、それを背景にして、後は作中の『強い』文章を入れる。
これくらいしかできなかった。
本当にしんどかった。
この時の俺は自分の書く言葉の全てがつまらなく見えていたから。
それを表で言うことはしなかったつもりだけど、親しい先生方にはバレていたよなって思う。……ちなみに今は「俺の文章超強いな!!!!」とか考えている。調子のいいやつだな。
俺の文章の何が良いんだよ。あの時はそう思っていた。
それでも予告は大切だし、成功させたいから。できることは全部やるつもりだった。
初稿を読み直す。何度やっても辛かった。BackSpaceを押したくなる気持ちを堪えて、「これだ」と思う箇所をメモする。あの時の俺でも感じ取れる熱量がある文章に縋り付く。
そうしてあの画像が出来上がった。
ネガティブを押し殺して投稿する。
2022年12月28日。コミケも近づいていて、弱音は吐きたくなかった。
折角の祭りを楽しまないなんて損だし、切り替えよう!
マ ジ で 楽 し ん で ま し た 。 イ ベ ン ト 最 高 。
いやもうね、ここまで悩み苦しみをつらつら書いておいてアレですけど、イベント参加すれば一発です。飛ぶんだわ、楽しすぎて。
へきさ先生の売り子として参加したけど、机の『向こう側』ヤバかった。
サークルスペースって凄い楽しいの、一般参加と全然景色が違ってさ。
もちろん一般参加も滅茶苦茶楽しい。両方違う楽しさがある。
売り子として参加する中で『サークル参加者はこういう事をします』みたいなのを体験できたのはかなり大きくて、サンアカの準備をしている時にコミケでの経験はかなり役立った。
自分で言うのもアレだけど、サンアカ2で初参加にしちゃスムーズに設営とかできたと考えている。それはこのコミケでの経験があってこそだった。
それともう一つ。
買い物をして、同人誌を手にとる度に思うのだ。
「この人はこの作品を創り上げるのに、どれだけの苦労があったんだろう」と。
もちろん人それぞれなのは理解している。俺みたいなタイプもいれば、そこまで考えていない人まで様々だ。
それでも、『この一冊』を創る労力を知ってしまったから。適当には扱えなかった。元々そうだったけど、改めてそう強く思うようになった。
そしてそんな最高の1日の帰り道。コミケというデカいイベントが終わって、後はサンアカ2の準備をするだけ。少しだけ憂鬱と不安が戻ってきた時、桜木ネル先生が声をかけてくださった。
「あの予告画像。凄く良かった」と。
あの時の俺は、驚きでまともな反応ができていたか怪しい。
けど、その言葉が嬉しくて。他にも素敵な言葉をかけていただいて。
そうだ。俺はやっぱりやるしかない。書くしかないと思った。
俺は単純だ。本当に単純だ。でもあの画像は人の心に届いたらしかった。
苦しみながら疑問に思いながらも書いた俺の言葉は、どうやら捨てたもんじゃないらしい。
まだやれる。ああ、もう。書きたいな。この感情を書きたい。作品にしてもいいけどもっと早く、誰かに届けたい。
そう考えて、あのnoteを書いた。挫折に似た何かと、それでも俺は『創作』がしたい。そんな気持ちをただ書いた。それが俺の予想を遥かに超える人数に届いて、驚いたけど嬉しかった。
そのテンションのまま、俺は新年を迎える。
三が日中に本文を仕上げる。とかふざけたことを酔った勢いでツイートしたことを呪いながらも、俺の心は晴れやかだった。
相変わらず自分の原稿に自身は持ちきれないけど、前よりは向き合えていた。先程挙げた恐怖の原因たちも、それなりに納得できて。
結局俺にできることは『書く』ことだけだった。
それだけが、俺が背負った責任を果たす唯一の手段だったから。
なんとか三が日中に原稿は仕上がった。
後は仕様を再確認しながら入稿作業を進めていくだけ……。
勿論ここにも大きな壁があった。
無事に入稿できるまで紆余曲折。
もう何度俺がミスしたか覚えていない。数えられないやらかしの果て、なんとか入稿が完了した。
直接搬入にしたので、サンアカ2当日まで作品の出来栄えは確認できない。
これが滅茶苦茶心臓に悪い。本当に悪い。
当日会場に行って、箱を開けて、中身を見るまでどうなっているのかわからないのだから。
(まぁ一回印刷所から不備の電話が講義中にかかってきて、俺は世界の終わりみたいな表情で講義を抜けて電話したのだが。ちなみにその不備はほぼ杞憂で実害はなかった。ラッキー過ぎる)
不安だったけど、作品に関してできることは殆ど何もなかった。
できることがあるとすれば……
宣伝だ。
ここまで来たんだ。沢山の人に読んで欲しい。そういう欲が出てくる。
ごめんなフォロワー、また宣伝するわ。そう思いながらRTする。
あとは当日まで健康を維持するだけ……。
それと追加で、サンアカ2は21日だったけど。
17、18、19、20と思いっきり大学の期末試験とレポート期日がブチ込まれていたので純粋にヤバかった。スケジュールがギリギリ過ぎる。
「新刊は落としませんでしたが単位は落としました!」とかツイートするのも面白いかなと思ったけど、冷静に考えたら全然面白くないしただ不真面目な奴になるのできちんと試験を受けレポートを提出した。単位は落としてない。多分。
……まぁ、ここまで色々と脱線しながら書いてきたけど。
俺はこの本を執筆する過程で、また新たなことを知れた。
創ることの「責任」「恐怖」「願望」……他にも、沢山。
初めて怖くなって筆が止まって、逃げたくなって。
意地だけで続けて、それが報われて。やっぱり楽しいんだよなって再確認した。苦しいことすら楽しいと思った。変かもしれない。けどこの言葉に、このnoteに書いてる事に嘘偽りは一つも無い。
全部俺の本心だ。
俺は結局これが『好き』なんだ。
このゲームが好きで、ハナコが好きで、創作が好きだ。
その『好き』が俺を動かしているんだ。
だから向き合って、これを創ったんだ。
俺なりに、『創る』ことを知った。そんな期間でした。
そうして、俺がこれまでの人生で一番重く見ている日がやってくる。
4.全てを出し切る日。
2023年1月21日(土)
Sanctum Archive chapter.2
それが俺の待ち望んだ日だった。
幸い、俺は元気に当日を迎えた。
コンディションは最高。テンションも最高潮。
元気が有り余っていた。この日のために、俺の体も全てを整えてきたらしい。やってやろうぜ。
そうしてずっと気がかりだった新刊は……。
ある!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
無事に印刷されている!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
俺は会場で安堵した。
本当に安堵した。
机がずらりと並んだだけの会場は、コミケの時と同じようで。
「俺は本当にサークル参加するのだ」
という実感を与えてくるのである。
その会場を見た瞬間に緊張は何処かへ消え失せていた。
だって、緊張してる暇なんてどこにも無いんだから。
祭りはあっという間に終わる。
楽しまなきゃ損だぜ。
そしてここで先にお断りを入れておく。
サンアカ2。マジで楽しみすぎて記憶が曖昧なのだ。
楽しかったです。というだけ!?お前それだけかよ!?みたいな感想がこれからつらつらと流れてくる。
本当にごめんなさい。
設営はコミケの時の経験が活きた。スムーズに進んだのだ。
普段からミスを連発する俺が、です。(ツイッターのフォロワーさんはよくご存知のはず)
おかげで挨拶回りする時間を確保できた。
夢の『新刊交換』をたくさんした。したかった人、沢山いたから。
これまでのイベントで出会った人、初めて会う人。沢山居たけど、皆さん良い人だった。俺の何とも礼儀のなっていない挨拶に丁寧に反応していただけたこと、ここでもう一度感謝したいと思います。本当にありがとうございました。
……しかし。あいさつ回り、完璧だったぜ。とか当日思っていたけど、抜けがあったのも事実で、それは本当に申し訳ないです。ごめんなさい。
ちなみに設営完了ツイートは思いっきり忘れていて、サンアカ2開始して直ぐ売り子の友人に慌てて撮らせた写真をツイートした。思いっきり俺が写っている。俺いらないだろ。
サンアカ2が開始されるアナウンスがあって。みんなで拍手して。
「始まった」と思った。
全く手に取ってもらえないかもしれない。それでもその結果を受け入れよう。
これが今の俺の全力だから。それを叩きつけてやろう。
そうしてサンアカ2開始して直ぐ。
?
??
!!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!!!??!?!
滅茶苦茶捌ける。
なんかよくわからんけど手にとってもらえる。
俺の手元に500円玉が増えていく。
殆ど黄金郷だろってくらい金ピカになっていくコインケースがそこにはあった。
そして開始20分で浦和ハナコさんのコスプレをしたレイヤーさんが唐突に目の前に現れ、作品を手に取っていった。
俺は「本物……ッ!?」とかガチで言ってた。今思えばヤバい奴だろ。
でも冷静に考えて欲しい。
俺はこの本を創る為に、四六時中浦和ハナコさんの事を考えていたのだ。
マジの四六時中だ。
そんな男の目の前に、ご本人様が降臨なされちゃったのである。
……正気を保てという方が無理だろう。無理ってことにしてくれ。マジで無理だったから。
並べた本は減っていく。俺の作品が、オタク達の手にわたっていく。
嬉しかった。いや、そんな言葉で言い表せない。それでも。
本当に、嬉しかった。
もうこの男は限界である。明らかにキャパが壊れていた。
新刊が受け入れられること、祭りの楽しさ。なんかもうよくわからん全て。
ヤバすぎたので一旦売り子に任せて会場を亡霊のように歩いていた。
そうして他の先生のサークルにお邪魔した時、こう言われる。
「向こうにゲヘナギャル二人組が居ます」
「え?ゲヘナギャルってエリカとキララっすか?」
「そうです」
「マジで!?」
「マジです。レンさんも写真撮ってもらいましょ」
「いやいやいやいやいやいや。俺なんかがギャルと一緒に写真撮っていいわけないじゃん!」
「いいからお願いしてこい!後悔するぞ!!」
「……ッ!」
……ここまでの会話は割と適当である。まぁ実際にこんな感じの会話をしていたが。
でもそうだ。俺はこの日のために全力で準備してきた。後悔なんてしたくない。
新刊が成功だったのに、ゲヘナギャルと一緒に写真撮れなくて後悔するなんて、そんなことあっていいわけない!!!!!!!
やったわ。
さらに先程俺の作品を手に取ってくれたハナコさんともツーショが撮れました。マジで良かったのか?俺もしかして前世で世界救ってた?
マジでありがとうございました。
……もしかしてレン君。サンアカ2のデカい思い出。それ?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そうだが?
悪いか!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?
いやいや、勿論それ以外もある。
お会いしたいなって思っていた先生に出会えてたくさん話したこと。レンというオタクが実在していることがバレてしまったことが恥ずかしかったけど嬉しかった。やっぱり面と向かって感謝を伝えたかったから。
俺はオタクにデカいLOVEを向けているオタクである。
普通に泣きそうだった。
差し入れも頂いた。(なんか同人作家っぽい!!!!!!!)
あげ潮というクッキーである。
因みにこれはめちゃ美味い。
実は頂く前からよく食べていて、お気に入りのお菓子である。
ドライフルーツ入りのクッキーで、オレンジピールが好きならガチでオススメできる。是非お手にとって頂きたい。
そして俺が創ったものを人が手に取ってくれること。
あれほど幸福な瞬間を、俺は今までの人生で体験したことはなかった。
あれ以上の幸せを達成感を、俺はこれからの人生で知れるんだろうか。
あの時の俺は「ありえない」とはっきり言っただろう。
しかし今の俺は、「あるかもしれない」と答える。
だって、俺の人生は八月某日に創作と出会ってから最大瞬間風速を更新し続けているから!
何度だって思った。「これ以上の幸せはない」と。
その言葉は何度だって覆されて、その上を行って。
そうして本ができた。あの作品を届けることができた。
きっと、これからも迷う。
そうだろう。
だけど、俺は創作を続けたいと思う。
まだ俺は書きたい話があるんだ。
まだ俺は『好き』を叫び足りない。
まだ俺は満足していない。
まだ俺は駆け抜けていたい!
一つ、ここで曲を紹介させて欲しい。
俺の言う、『駆け抜ける』の原点だ。
歌詞の引用については、今回は控えておきます。
ということで時間があれば聴いて欲しい。
「あ、アイツの言ってた事ってこういう事」ってなると思うから。
そう。俺はまだ駆け抜けたい。呼吸は相変わらず荒くて、キツい。
けど、好きを叫ぶことでしか見えない景色を知ったから。
俺は結局、不器用なオタクだ。器用に柔軟に、深い考察ツイートとか面白いツイートができるタイプでは今のところ無い。
それでも、好きを叫び続けてきた。
そんな俺の姿に「好き」って言ってくれる人もいて、こんな幸福なことがあるかよって話で……。
俺のサンアカ2はそんな万感の思いの中、終わりを告げた。
結局、刷った大半が手にとってもらえて、殆ど実本は残らなかった。
(新しく刷りたいんだけど、ちょっと資金がエグいので落ち着いたら直ぐに刷ります。ごめんなさい)
ちなみに。
ばっちり打ち上げでやらかしたので、やっぱり俺は俺でした。
5.空っぽになろうと。
今の俺は、空っぽだ。
サンアカ2が終わって、ブルアカは最終編が始まって、何がなんだかって感じだ。
……じゃあ、もう書かないの?って聞かれれば。
まさか!まだ書き足りないが!?
空っぽだけど、なんか熱がある。不思議な感覚になっている。
今は休息しながら、また別のものと向き合う期間かなとか、漠然と考えたりしている。
今のところ、月雪ミヤコで本を出したいとか考えているので、表紙絵書いていただける人を探したり、プロットを練り始めたり、他の人の作品を読んだり……そういうことをしようかなと考えながら、今は最終編を満喫している。
本当に全てを出し切った。あの本はそういう本だ。
大きな達成感があって、ハナコを見る度に俺の中でデカい感情が騒ぎまくる。
改めて、俺はこの二ヶ月を駆け抜けた。
多くの事と向き合って、悩んで、答えを出して。走りきった。
肺の中の酸素は全部なくなって、俺は立ち止まった。
そうして後ろを振り返る。
そこにあったのが、このnoteに書かれている全てだ。
「ああ、良かったな。走って、本当に良かったな」
そう思えた。俺の拙い表現力じゃ全部は書けなかったけど、この景色はとても美しかった。
これが俺の『青春』の景色なんだ。そう言いたい。
走りきって、俺はこの景色にたどり着いて。
まだ、走りたいって思ってる。
俺はこの『同人』の世界に足を踏み入れたばっかりだ。
俺はこれからも悩み続ける。それが何よりも───
楽しみで、仕方がない。
それでは皆様。こんな痛くて格好つけていて、長ったらしいnoteを最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
俺の未熟さをくらえ!という気持ちで書ききったので、「コイツ若いな」と思っていただけたのなら大成功です。
またどこかでお会いしましょう。
レン
追伸
これが俺の世界でいちばん価値のある500円玉です。