向井柳雲の食とワインのマリアージュレポートVol.4~家族経営で醸造する、シャンパンに負けないカヴァ編~
ワイン
ワイン名
パラウ・ロゼ・ブリュット
ワイナリー
モンマルサル ペネデス カタルーニャ スペイン
元音楽家であるオーナーのサンチョが、家族とともに経営しているワイナリー。カヴァを熟成させているカーヴには、クラシック音楽を流している。現地を訪ねた人には限定カヴァのアウレウムを提供している。
品種
ガルナッチャ45%、ピノノワール35%、トレパット20%。
アロマ
完熟ベリー、白い花、蜂蜜、レモン。
価格
1580円(税抜)(1738円税込)。
購入店
マリアージュ
チーズ
トーマ・シラヌカ。
北海道酪恵舎生産のセミハードタイプのチーズ。
料理
ギリシャ風トマト煮込み。
牛肉と野菜をトマトの水煮で煮込んだ、地中海地方の素朴な家庭料理。
レシピはこちら(S&B)。
マリアージュイメージ
ワイン単体
レモンや蜂蜜などのアロマが鼻腔をくすぐり、飲む前からワクワクが止まらない。どこか夕暮れになりかけている空を思わせるようなワインの色とは対照的に、鋭角なミネラルはもはやそれ自体が屹立している存在だ。このカヴァは四方八方から様々な魅力を放ち、飲む者を決して放さない。そう、それはまるで正八面体の水晶に魅入られたかのようだ。
チーズとのマリアージュ
トーマの柔らかい歯ごたえがクッションになり、カヴァの鋭角さを優しく受け止めている。そう、それはまるで駄々っ子を優しく抱擁する母のようだ。
料理とのマリアージュ
ギリシャ風トマト煮込みは、地中海地方でよく食べられる料理である。また、ロゼワインとトマトは非常に相性が良い。また、食材の一つである牛肉はステーキほど分厚くないため、ロゼでもうまく対応できる。トマトやニンジンなどの野菜や、ローレルとカヴァを合わせたときに感じる草いきれや、牛肉とカヴァを合わせたときに感じるしっかりとしたストラクチャー。これらを合わせると、まるで私は新古典主義において草原を題材にした絵画の中に迷い込んだかのような錯覚を覚える。
おすすめのシチュエーション
過ぎ去りし日々に思いを馳せながら、一人バーでグラスを横に置いて料理を食べている。すると、いつの間にか隣にはすっかり音信不通になったはずの友が座りながら、ウィスキーをロックで飲んでいる。友は私に語りかけるでもなく、ゆっくりとグラスを傾けながら物思いに耽っている。やがて、数分経っただろうか。不意に友がこちらをゆっくり見て優しく微笑んだかと思うと、おもむろに消えていった。それはあたかも、線香の煙のように。