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新刊『舞台には誰もいない』発売日です

本日、9月12日は新刊『舞台には誰もいない』(祥伝社)の公式発売日です。

例によって、いつ書店店頭に並ぶかは地域によってまちまちなんですけれども、一応、公式の発売日として発表されているのは今日の日付です。もしかしたらもう少し日数がかかる地域もあるかもしれませんが、ご容赦いただければと思います。

この小説は、舞台女優の遠野茉莉子がすでに亡くなっているところから始まります。遠野はある舞台の当日に行われたゲネプロ(リハーサル)の最中に 命を落としてしまい、後日、その舞台の関係者たちが同じ劇場に集められます。そこに登場するのが演出家の名倉という男で、彼は関係者たちを前に「遠野茉莉子を殺したのは、ぼくです」と告白します。果たしてその言葉の意味は何なのか、遠野茉莉子という女優はどのようにして生まれたのか……を探っていく物語になっています。

前にもこの「活字ラジオ」では話したかもしれないんですけれど、本作の着想はインベカヲリ★さんの『私の顔は誰も知らない』(人々舎)という本から得ています。この本を読んで、女性の「演技性」ということにすごく衝撃を受けまして、それをテーマにした本を書けないかということで、『舞台には誰もいない』が生まれました。

本作は『文身』(祥伝社文庫)に続いて祥伝社から出す2作目の小説になんですけれど、実は『文身』と似通ったテーマを扱っているんです。というのも、『文身』も現実と虚構を入れ子構造にしたような小説でして、虚実皮膜のあわいを崩すような試みをしているんですが、『舞台には誰もいない』も「演じること」を通じて自分という人間の境界が溶けていく様を描いているので、非常に近接した小説になっているんじゃないかと思います。

とはいえ、読み心地は全く違うものになっていると思います。小説としての構造も全然違いますし、本作では遠野茉莉子がなぜ死を選んだのかというのが大きな謎になっています。

前回単行本を出したのが6月の『科捜研の砦』(KADOKAWA)なんで、まだ3ヶ月しか空いてないということで、お財布事情的に厳しい方もいらっしゃるかもしれません。作家がこういうことを言うのもおかしな話なんですが、もし躊躇されている方がいたら、遠慮なく図書館なり新古書店なりを活用していただければと思います。その上で、もしも「新刊で買ってもいい」という方がいらっしゃれば、手に取っていただけたらとても嬉しいです。

僕は職業作家なので、新刊の売上のおかげで生活ができていると言っても過言ではありません。一方で、僕は本を読むことは「生活を豊かにする行為」だと思っているので、そのために苦しい思いをするのは少し違うかなと思ってます。なので、無理のない範囲で楽しんでいただきつつ、可能な時に新刊で買ってもらえれば、書き手としてこんなに嬉しいことはありません。電子書籍も発売していますので、お好きな方法でお楽しみいただければと思います。

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