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文庫『完全なる白銀』公式発売日です

本日は文庫新刊『完全なる白銀』(小学館文庫)の公式発売日です。2025年1発目の刊行となります。

『完全なる白銀』は2023年2月に単行本として刊行され、その年の山本周五郎賞候補に選ばれた作品です。今まで刊行してきた小説の中でも、唯一の山岳小説と言っていいと思います。あらすじは出版社の公式サイトから引用させてもらいます。

 緑里はアラスカに向かっていた。旧友シーラと北米最高峰デナリに登るためだ。
 シーラの幼馴染、リタ・ウルラクは新鋭の女性登山家として名を馳せていた。二人の故郷、サウニケは北極海の小さな島だが、地球温暖化の影響で海に浸食されている。このままでは島は海に沈む――故郷の危機を世界に知らしめるため、リタは登山家として有名になるべく冬季デナリ単独行を計画した。写真家としての先行きに悩んでいた緑里はリタの果敢な言葉や行動に励まされ、彼女がそれを成しえたら真っ先にポートレートを撮ることを約束した。だがデナリの下山中、リタは消息を絶ってしまう。山頂から“完全なる白銀”を見た――という言葉を残して。
 リタの登頂を疑うマスコミは彼女を〈冬の女王〉ではなく〈詐称の女王〉と書き立てた。緑里とシーラは、デナリに挑み、リタの登頂を証明することを決意。しかし、世界最難関への登攀は一筋縄にはいかない。ブリザード、霧、荷物の遺失、高度障害……二人の信頼関係も揺らぐ。困難を乗り越え北米大陸で最も高い地へ手を伸ばす緑里。その先に見えたものとは。
 極限の地だけでなく、社会でも闘う女性たちを描きだす、気鋭の著者の新境地。

https://www.shogakukan.co.jp/books/09407422

単行本から2年で文庫化ということで、装いも新たになりました。文庫版のカバーイラストはさとざき幸さんです。デザインは単行本から引き続き、鈴木成一デザイン室に担当していただきました。

また、文庫化にあたって解説を書いていただきました。執筆をお願いしたのは登山家の栗秋正寿さんです。実は栗秋さんは、冬季デナリ(旧名マッキンリー)単独登頂に成功した数少ない登山家の一人なんです。歴代でもたぶん6名しかいなくて、そのうち2人は日本人なんですけれども、1人はあの植村直己、もう1人が栗秋さんです。

栗秋さんとは単行本刊行時にオンライン対談をさせていただいたのが最初でした。後日、福岡でお会いして食事もご一緒しまして、すごく楽しい時間を過ごさせてもらいました。『完全なる白銀』が文庫化される時、解説の執筆をどなたにお願いしましょうか、という話をした時に真っ先に思いついたのが栗秋さんでした。

僕は登山の経験がなく、当然冬のデナリにも登ったことがないんですけれど、日本人の中でおそらく誰よりも冬季デナリを知っているであろう栗秋さんからこの小説を評価していただいたことが、すごく励みになっていました。是非栗秋さんの言葉で、正面からこの小説を論評してほしいとかねがね思っていたので、引き受けていただけた時は本当に嬉しかったです。

出来上がった解説の文章はやはり素晴らしくて、実際の冬のデナリを知っている方でないと書けない解説になっています。単行本で読んだという方も、もしよければ、解説だけでもいいので文庫版『完全なる白銀』読んでいただけると嬉しいです。

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