見出し画像

あの夜のこと⑤

救急車を呼んだのがちょうど12時ころ
そして先生の「終わり」のお話が終わって時計を見ると、3時前だったかと思う

死亡宣告は息子たちを呼び寄せてからとお願いし、彼らのタクシーの手配をする
今できることをしなければ、と、上司にメッセージの続き
イベントの日だったので、その日に来てくれる予定のお客様の引継ぎ
すぐに発注しなければならない物件の事務処理のお願い
今動いてる物件に顔を出せない旨を業者さんに連絡
夜中だけれど、メールやメッセージでできることを進める
ホント、、、めっちゃ冷静に仕事をさばいていた

しばらくすると、また看護師さんが部屋に来て
「会われますか?」とのこと

ホントに変わらない姿でパパが横たわっている
看護師さんが椅子を用意してくれ、私はパパの横に腰かけて彼の体に手を当て、彼のぬくもりを自分の手のひらに移しとる
彼の胸にほほを当て、全身全霊で彼のぬくもりを感じる

機械の整理をしながら、看護師さんが私にぽつりぽつりと話しかけてくれる
「すごく力の強い方でした。苦しいから起き上がろうとするのを止めるのが大変でした」
「でもすごく丁寧な方で、わたしたちが「動いちゃダメです!」っていうと「はい、すみません。でも痛いんです」って」
「この病気で運ばれてくる方はやはり皆さん苦しかったり痛かったりで、多くの方が乱暴に暴れたり叫んだりされるのに、ご主人は終始丁寧語だったんですよ(笑)」と

らしいね。ホントパパらしい( ´∀` )
パパが最後までパパらしくて泣けてくる
「んふふ、そうですか( ´∀` )そうなんですよ、バカほどやさしい人なんです」
「やさしいのに、わたしのことが好きなくせに、おいていくとはねぇ」
(ほんと、わたしを置いていくなんてとんでもないことやん)

それからしばらくして、息子たちが到着した
夜中なのでタクシーが手間取り、少し時間はかかったが家族4人がそろった
息子たちもしばらくパパの体に触れる
「お父さんのぬくもりを覚えておいてね、、、」
ふたりともジッと、静かに涙を流しながら、わたしと同じようにパパのぬくもりを感じていた

やがて先生が来て、静かに死亡宣告
わずかに音のしていた機器類の音が止まる
2024年3月9日 午前5時6分
パパのいない夜が明ける

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?