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あの夜のこと②

(ああ、、、これは大動脈解離というやつか?!)

エンドユーザー相手の営業職をしている私は、いろんなお話を聞く機会が多い

胸の痛み、背中の痛み、腰の痛み、、、
すぐに大動脈解離の言葉が浮かんだ

わたしはパパを抱えて抱きしめながら
「おい~、おいていくんかい?」と声をかけた
パパは苦しいながらも、そして少し朦朧としながらも
「んん?おいていくとは?」と返してくれた

(コレ、おいて行かれるやつやん。。。)と思いながらも、
もう口に出すことはできなかった

息子たちもそばで見守っているが、そのことが言えない
ふたりともどうして良いかわからず立ちすくんでいるが、
あわてて騒ぎ出すこともなく、わたしにはとてもありがたかった

「救急車が来るから誘導してね」
家がわからず一度通り過ぎた救急車にわかるように、
長男は道路に出て行った
「お母さん、救急車に乗っていくことになるから」と、
次男には私の持ち物をまとめてもらえるように指示を出す

汗びっしょりになって苦しむパパを抱えながら
わたしはこの抱擁が最後になるのか~?と思い、
彼の汗を拭きながら、彼の温かさをかみしめていた

救急車が到着し、ストレッチャーに移される
頭でシミュレーションしていた通りすばやく自分の服を整え、バッグを持つ

救急隊員さんが
「ご主人が帰るときのために上着と靴を持って行ってください」と言う
(靴を履いて帰ってこれる可能性があるのだろうか?)と思いながら
(どうか靴を履いて帰ってこれますように!!)と強く願いを込めて
上着と靴を紙袋に詰めた

その紙袋は持って行ったままそのまま持ち帰られ、
そして4か月たった今も開けることもできず、そのまま廊下に置かれている

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