広島お好み焼き屋【皐月】の看板娘のリムは実は竜の姫巫女様でした! 第12話 病院へと着きました! (1)
第12話 病院へと着きました! (1)
「ふぅ、着いた」
「着いたね」と。
広島市の北にある、北の市病院の駐車場の端へと降下したリムと姉上は。
無事着地が終われば。
姉上は安堵した声を漏らす。
そんな姉上の様子をリムは横目で見つつ。
黄金色のドラゴンから人の姿へと変身──。
すると姉上も漆黒色のドラゴンから人の姿へと、リムと同じように変身──。
姉妹仲良く。
リムと姉上は変身が終われば。
今度は透明化を解き。
北の市民病院の入り口──。
大きなガラスの自動扉へと向け、慌てて走るの。
するとガラスの扉の前に。
この場に不釣り合いな黒のタキシード姿の、白髪の老人の姿が目に映るから。
「あ、姉上、爺やの姿が」と。
リムが走りながら姉上へと告げると。
「うん」と頷き。
姉上は更に走る速度をあげるから。
リムも姉上の背を追いかけつつ走ると。
リムが産まれ育った桃源郷にある国の。
宮殿内で長らく執事長を務めてくれているセバスチャンこと。
爺やの目の前にリムと姉上が到着すれば。
「姫様御二人。大旦那様はこちらで御座います」と。
爺やは昔から全然変わらない。
優しく、柔らかい口調で、リムと姉上へと手を差し伸べつつ。
お父さまが緊急入院された病室へと案内をしてくれる。
だから姉上も爺やの背を見て──。
やっと自身の気が落ち着いたのだろうか?
女神の微笑みを浮かべつつ。
「ありがとう、セバス」と。
姉上が爺やにお礼を告げたので。
リムも姉上へと続くように。
「爺や、ありがとうね」と。
リムも姉上の竜の巫女であり。
本物の女神さまだから。
リムも姉上に負けないように満身の笑み……。
祝福と大変に縁起のよい女神の微笑みを。
北の市民病院の一階のホール……。
受け付け、料金所の前を。
間者さん達の間をすり抜けつつ。
家の爺や、へと告げる。
だからリムと姉上の女神の笑みから漏れる。
祝福の粒子を受けた人達や間者さん達は。
「あれ?」
「あれあれ?」
「何か重たかった身体が楽になった気がする?」
「う~ん、何か、頭が痛いのが収まった気がするけれど。可笑しいな?」
「……ん? あれ? 可笑しいな? 腕の傷口が痛くて仕方がなかったのに。何故か痛みが和らいじゃったよ」と。
受付ホールで自分達が、どの病室へといくのかを診察カードを用意しつつ、受付をすますために。
順番待ちをしているお客さま達や。
病院で治療を終え、料金の精算をするために順番待ちをしている患者さん達などが。
自身の首を傾げながら呟く。
だから大変に小さな患者さん達も。
リムや姉上からの女神に祝福を受けるから。
「ママー! 手術なんて痛いから、僕は嫌だ! 嫌だよ! 手術なんかしたくはないよ!」
「お母さん、私入院なんてするのは、やだよ。家に帰りたいよ」と。
自身の両目から涙の雫をポロポロと落としつつ。
寂しいよ。
悲しいよ。
家に帰りたいよ。
両親に我儘を言っては困らせていた。
小さな男の子や女の子達も。
急にピタリと泣き止むのをやめて。
「ママ、パパ。僕早く元気になって幼稚園へと行って、お友達と遊びたいから手術頑張るね」と。
自分は前向きに生き、頑張るからねと。
自分の両親を喜ばす小さな子供達や。
「お母さん、お父さん……。私我儘を言ってごめんなさい……。私病院に入院してちゃんと治療をして早く退院して小学校へと通えるように頑張るからね。お母さん、お父さん。私もう一人で大丈夫だよ」と。
今の今まで、自分は病院へと入院をするのが嫌だ。
帰りたい。
今直ぐ連れて帰ってお母さん、お父さん、お願いだからと。
やはり自身の両親へと我儘を言っては悲しませ、困らせていた小さな子供達も。
リムと姉上の女神の笑み、祝福の粒子を浴びた子供達は。
自身の様子を急変させ、ニコリと満身の笑みを浮かべつつ。
自身の両親達が安堵して、帰宅ができる言葉を次から次へと呟いている様子が。
リムの碧眼の瞳に映るから。
リムの心の中も大変に温かくなり、よかった。
よかったね、と思うから。
リム更にニコニコ女神の微笑みを浮かべては、祝福の粒子を更に大量に蒔き散らしながら。
爺やと姉上の後ろをついて歩く。
「セバスチャン! お父上様は、どんな感じなの?」
リムが相変わらず病院内の様子を窺いながら歩いていると。
姉上が爺やへと、お父さまの容態はどんな感じなのか? と訊ねる。
だからリムも病院内の様子を窺いながら歩く行為をやめ。
姉上と爺やの会話に聞く耳を立てると。
「……ん? あれ? 姫殿下御二人には未だ陛下や太后様、御妃様達からの電話かメールでの連絡通知は届いていないのですか?」と。
爺やは姉上の問いかけに対して首を傾げる。
だから姉上は「えっ!」と驚嘆を漏らし。
「今からスマホを確認してみますね」と。
爺やに告げると。
自身の肩にかけてあるバックを開け──。
スマートフォンを取り出し、電源を入れ始めるから。
リムも自身の履いているパンツのポケットから、スマホを慌てて取り出し、電源を入れてみる。
「あっ! L〇NEにルミエル叔母上さまからメールがきている」と。
リムが呟けば。
「うん、そうね」と、姉上は頷き。
自身のスマートフォンを食い入るように見詰め始めたから。
ルミエル叔母上さまから送られてきたメールの内容文を読んでいるのだろうな? と。
リムは思えば。
リムも自身へと送られているルミエル叔母上さまのメール文へと。
自身の両目をしっかり開け、目を通し始める。
◇◇◇
(カクヨム)
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