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ちょうど合わさればひとつの生活が完成するように、冷蔵庫やコーヒーメーカーやらの諸々の品は今や各々の家に存在している。

片割れの物たちに囲まれた家で、私は淡々と、ひとりで暮らしている。

ひとりで暮らす間に、私の隣を通り過ぎていった男は何人かいる。いずれもあっけないものだった。彼らとの別れは心が痛むものであったが、だからといって私の生活に影響を及ぼすものではなかった。誰かとお付き合いをするということは、もっと重たくて、心が引き裂かれるようで、生活の全てを捧げたくなるものだと思っていた。たった1人のLINEをスワイプして非表示をタップするだけで簡単に終わってしまうお付き合いがあるなんて、ましてやそれが世の中にありふれたお付き合いだなんて、実際に自分が体験するまで知らなかった。

彼とのお付き合いはまるで違った。
心が捻じ切れる程さんざん泣いたし、実際捩じ切れて心療内科に通う羽目になった。会社を休職することになり、その後の復職は困難を極めた。医者から「もうこれ以上復職診断書は書けない」と言われる程だった。追い込まれた私は、外の男に頼って一夜を明かし、彼に離婚を突きつけ、力任せに離れた。どう考えてもまともじゃない。

もうあんなことはないのだろう。

粛々と、静かに暮らしていく。

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