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女の性

ラズベリー色の部屋に、同色のカサブランカを飾る。
あの芳醇な香りに包まれていると、どんな素晴らしい香水でも、所詮誰かの思い込みで作られた虚像を纏う気にさせられる。

カサブランカは、女の一生を眺めているようだ。

穢れのない硬く閉ざされた白い蕾から始まり、
咲きかけの頃の、頬を赤らめて先が少し開き始める。

色鮮やかに、眩暈がする程の香りを撒き散らかしながら、ぬらぬらと濡れた雌蕊を惜しげもなく晒して咲き誇り、やがてスコッチが似合う程に花色を深め、愛する男を腕いっぱいに抱きしめるように花びらを広げる。

腕いっぱい広げた花は、やがて一片ずつ散っていく。
抱きしめていた雄蕊と一緒に散っている様は、やはりカサブランカが女王な故か。

でも、
そんな女王でも不憫な事もある。
白い蕾が膨らまず、芳醇な香りも放つことなく、萎びて茶色く変色していく事もある。

未来を約束されたからと言って、現実になるとは限らない。
今がなければ、未来も存在しない。

愛する男を命尽きるまで抱きしめることが出来なかった女王の最後は、残酷な程にその哀れな姿で立ち尽くすしかない。

その萎れた女王を横目に、私は身支度をする。
私の指先には、枯れ落ちた花弁がある。

枯れた花の香りを嗅ぎ分けることができる王は、どれくらい居るのであろうか?

手持ちの香水の瓶とカサブランカを眺めながら、私は強めにアイラインを引いた。
精一杯の悪あがきだとしても、これが女のプライドなのだ。

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